「アバター近藤が解説する業界史~逆タイムマシン経営論734」
皆さん こんにちは アバター近藤です。
「逆タイムマシン経営論」として、業界唯一の経営情報誌であるフィットネスビジネス誌のバックナンバーを引用しながら、それぞれの年のトピックスや記事について、示唆することは何かをアバター近藤なりに解説していきます。
「歴史に学ぶ」とは良く使われる言葉ではありますが、フィットネス業界史について、詳細に検証した文献は恐らくないと思いますので、これから良い歴史を作るために何かしらのお役立てになれば大変うれしく思います。
~Fitness Business通巻第29号(2007.3.25発行)「世界の動きーAVACスイミングスクールの成功に学ぶ」2~※名称等は当時、一部文章省略
AVACスイミングスクール
2002年の屋内プール建設は、夏季のみであったスイミングスクールの事業を通年の営業としたことで、AVACにとっては大きな転換点であった。
しかしながら構想段階では、この投資に疑念を抱く経営陣もいた。
AVACのオペレーション担当GMであったスー・デイビス氏もその一人であった。
「私自身、子供時代は屋内プールに通っていましたが、どのプールも暗くジメジメしていて、いい思い出がありませんでした。」と彼女は語る。
しかし、シアリング氏の描いたプランを見て彼女の考えは変わった。
シアリング氏が構想していた屋内プールは、ガラス張りの天井がテラスを思わせる、開放感に溢れるものであった。
この天井は可動式であり、晴れている日は、ほぼ毎日開放され、気温の低い冬季にも新鮮な空気を採り入れるために換気が出来るようにデザインされている。
「こんなプールで働けるとしたらどんなに楽しいことか。光に溢れて、まるでリゾート、常夏のプールになる、と感じました。」とデイビス氏は語る。
20mのプールは、スイミングスクール専用となっており、長さ9m、幅11mの小さなセクションがいくつも設けられている。
このプールでは、一度に11もの小グループレッスンを平行して進めることが可能であり、1クラスの生徒数は最大でも4人となっている。
生徒が気持ちよく安心して指導を受けられるように配慮されている。
シアリング夫妻が考案した、20段階から成る水泳指導カリキュラムは現在でもAVACのレッスンプログラムの基礎となっている。
生後6ヶ月から両親と共に参加出来るベビークラスは水に慣れ親しむことを目標にしている。
一番上級のクラスは、小中学生が他のクラブの水泳チームとの競技会に備えてストロークの技術を磨くための内容となっている。
「私達のレッスンの目標は、単に水泳のスキルを教えることではなく、生徒達が水泳を楽しみ愛するようになることです。」とデイビス氏は言う。
彼女によれば、スイミングスクールの営業が通年になったことで、生徒のレベルがぐんと上がったという。
年間を通じてレッスンに参加できるようになったことで、冬場の空白期間がなくなり、それにより生徒の成長が速くなったのだ。
一方、AVACのオープン当時からあった屋外プールでも、毎週16のアクアプログラムが実施されている。
プログラムの内容は、アクティブシニア向け、産前・産後の女性向け、障害者向け、マスタースイマー向け、シンクロナイズドスイミング、ウォーターポロ、ジュニアライフガード育成など多岐に渡る。
もちろん自由遊泳も終日可能となっている。
AVACは現在毎週965ものスイミングレッスンを4000名の生徒に提供している。
「一つの拠点でこれだけのレッスン数を提供しているところは他にはないでしょう。私達以上に多くの生徒を抱えるスクールは他にもあるでしょうが、そうしたスクールでは5~7のプールを使ってレッスンを提供しています。」とデイビス氏は誇らしげに語る。
AVACのレッスン料は、AVAC会員の場合は1回30分あたり17ドル(約2040円)で、非会員の場合は18ドル(約2160円)である。
シャンク氏によれば、スイミングスクール事業の売上はAVACトータルの売上高の35%を占め、その額は2005年には約300万ドル(3.6億円)であった。(同年のAVACトータルの売上は820万ドル、約9.8億円)。
スイミングスクールからの売上は、業界でも最高水準を誇るAVACのEBITDA率(金利・税金・償却前利益率)に大きく貢献しているという。
また屋内プールの建設により、クラブ全体の売上が35~45%も上昇した言う。
それだけではない。
スイミングスクールの成功はクラブの会員数増加にも繋がっている。
現在スイミングスクールの生徒のうち60%は非会員であるが、毎年スクールの生徒や生徒の家族の多くがクラブに入会しており、2005年にはスイミングスクール経由で100~200名が入会したという。
「スイミングスクールに通った生徒や家族の多くがAVACを気に入り、入会してくださいます。またAVACの既存会員の多くも、スクールのレッスンに参加しています。スクールとクラブの間には大きなシナジー効果が生まれているのです。」とデイビス氏は語る。
~ここまで~
1980年を挟む数年間、日本のスイミングスクールは造れば当たると言われた時代がありました。
それは、アバター近藤のような団塊ジュニア世代前後の人口ボリュームが非常に多かったからです。
実際に経験した身として、当時はそれこそ1コースに20~30人いて、泳げば、他の人の手が当たり、足で蹴られること日常茶飯事でした。
それと比較して、1クラスの生徒数を最大でも4人としたAVACの経営方針は、当時を知るからこそ、なおさら凄いと思え、だからこそベビークラスから大人になるまで、長期に渡って親しみ、またフィットネスクラブとの相互連携も深いものになったのではと推測できます。
水泳が得意種目の一つとなった現在は、当時通ったスイミングスクールにとても感謝しておりますが、長期間続けたいとは正直、思えなかったことを考えると、効率一辺倒の経営は中長期的にはマイナスに作用するように思います。
お読みいただきありがとうございました。
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