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7月19日(火):トカイナカでの市民を観光資源にしたインバウント

このところは「トカイナカ(都心から1時間~1時間半のエリア)」に関連したことを記していましたが、本日もその続きをもう少しばかり。

書籍「トカイナカに生きる」では様々なトカイナカでの移住や起業、そして観光誘致など地域の活性化をした事例が多数掲載されています。

そのなかで非常に面白い事例だなと思ったのが、千葉県いすみ市でのインバウンドでの取り組みです。

同書で取り上げれられていたのは地域おこし協力隊員である70代のとある男性についてです。

男性は同隊員になる前に観光でいすみ市を盛り上げるための企画書をつくり、市長にあって次のような話をしたといいます。

「私はコロナがやってくる前に市長に言ったんです。これからはこの町を活性化するのは外国人です、と。しかも彼らを引きつける商品は『市民』。人間と人間を出会わせて関係をつくらせるとリピート客がくる。それで街を活性化させましょうと訴えました。」

これに対して市長は半信半疑でその根拠を問いかけたところの返答は「そんなの簡単です。絶対に来ます。外国人が目指すのでは海でもお寺でもない。いすみの市民だからです」と答えたのだそうです。

実際に隊員になった男性が何をやったかというと、市内の公民館で活動する「和系」の市民サークル(和太鼓、日本舞踊、お茶、将棋など)を訪ねてネットワーク化し、そのサークルに外国人を紹介してコミュニケーションに慣れることから始めます。

そして海外からの教育旅行を積極的に誘致し、ホームステイができるように約50世帯の受け入れ家庭も組織化していきます。

すぐに台湾やマレーシア、フィリピン等から若者がやってきて、たった1泊なのにホームステイや色濃い人間的な交わりをすることで、翌朝の旅立ちの時には涙の別れになるということでした。

それらを積み重ねていく先で、中にはホストファミリーが受け入れた子に会いに台湾旅行をしたり、反対にもう一度ホストファミリーに会いたくなって再訪する人も出てくる流れが生まれます。

その結果としてプロモーション費用は5分の1でインバウンドを呼ぶことに成功するなど、コロナでこの流れは途切れてしまうものの、そこまでの3年間で目に見える成果につながったと記されています。

この隊員の男性はなぜ、そのようなことができたのか?です。

こちらの男性はかつて会社員として仕事をしていた1980年代半ばに、所属をしていた企業の社長命令でチームを組み、アメリカの大学を日本に誘致をするなどしていたそうです。

秋田や新潟にアメリカの大学を誘致すると、そこにアメリカから先生が約100人、そして日本全国から若者が450人やってきて、それにより町が活気づき若者と地元高齢者との交流も盛んに生まれたと言い、その光景を目の当たりにしていたからこそ、いすみ市でも成功への道筋が見えていたのだと思います。

観光資源というと一般的には歴史歴な建造物や文化的な有形・無形のもの、風光明媚なスポットや食、何らかのアクティビティなどを中心に考えてしまいがちです。

いすみ市自体は「住みたい田舎ランキング」で1位になる人気エリアで、住環境の良さや子育て環境の良さ、そして美食の街としてブランディングを図っているように新鮮な食材も豊富な地域です。

人を呼び込めるツールがありながらも、あえて「市民」を観光資源にという着眼点とそれを実現できる推進力はスゴイの一言です。

特に知名度がある特定の誰かにフォーカスをするのではなく、そこに居る地域の市民が人を呼ぶ資源になる、との見方・考え方は大変参考になりましたね。

誰にでもできる簡単なことではありませんが、磨けば光る原石は私たちの日常のなかにもあるのだと気づかせてもらいました。


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