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9月15日(金):仕掛けの構成要素

このところは食品スーパー大手のサミットが開催している「サミットカップ2023」に端を発して楽しさを盛り込んで多くの人を巻き込む「EX(エンターテイメントトランスフォーメーション)」、さらには大阪大学大学院教授である松村さんの「仕掛学」に派生しています。

仕掛学はスタンフォード大学の講義でも取り扱われているそうですが、これまでは良い仕掛けの条件となる「FAD要件」である「公平性」「誘因性」「目的の二重性」や、ナッジとの違いなどを説明してきました。

本日はこの続きとして仕掛けの構成要素についての話をもう少しばかり。

書籍「仕掛学」によれば、これまでに様々な仕掛けの120事例を調べたところ、大分類2種類、中分類4種類、小分類16種類の原理の組み合わせで全ての仕掛けを説明できると記載をされています。

以下がそれにあたります。

●大分類
「物理的トリガ」/「心理的トリガ」

物理的トリガは知覚される物理的な特徴、心理的トリガは人の内面に通じる心理的な働きかけとして作用するもの。心理的トリガは物理的トリガによって引き起こされ、互いが自然に結びつく関係にあるとき、その仕掛けはうまく機能する。

●中分類
「物理的トリガ」ー「フィードバック」/「フィードフォワード」

物理的な特徴を介して人に影響を及ぼす物理的トリガは「フィードバック」と「フィードフォワード」に分類される。フィードバックは人の行動に応じて仕掛けが変化する仕組み、対してフィードフォワードは人が行動を起こす前に仕掛けから人に伝わる情報で、仕掛けを見た時に何に使うものなのか予想がつくと、それに導かれるように行動が変わる。

「心理的トリガ」ー「個人的文脈」/「社会的文脈」

心理的トリガは前述の通り物理的トリガによって人の内面に生まれる心理的な働きで、それは「個人的文脈」と「社会的文脈」から構成される。個人的文脈は自分自身の事情により個人の内面に生まれる心理的な働きで、社会的文脈は社会的な制約がもたらす心理的な働きのこと。

●小分類
「物理的トリガ」ー「フィードバック」ー「聴覚」/「触覚」/「嗅覚」/「味覚」/「視覚」

物理的な特徴を介して人に影響を及ぼす物理的トリガのフィードバックは人の行動に応じて仕掛けが変化する仕組みで、その変化は人の五感を通じて知覚されるので、「聴覚」「触覚」「嗅覚」「味覚」「視覚」がフィードバックを構成する小分類になっている。

「物理的トリガ」ー「フィードフォワード」ー「アナロジー」/「アフォーダンス」

物理的トリガのフィードフォワードは人が行動を起こす前に仕掛けから人に伝わる情報で、これは「アナロジー」と「アフォーダンス」に分類される。アナロジーは物事の類似性で、知識や経験から類推できる事柄を利用して行動に変化は促すもの。アフォーダンスは見ただけで使い方がわかる物の特徴を指し、何が「できるか」という可能性を暗に伝えることで行動を促すこと。

「心理的トリガ」ー「個人的文脈」ー「挑戦」/「不協和」/「ネガティブな期待」/「ポジティブな期待」/「報酬」/「自己承認」

心理的トリガの個人的文脈は個人の内面に生まれる心理的働きであり、そこから行動につながる要因として「挑戦」「不協和」「ネガティブな期待」「ポジティブな期待」「報酬」「自己承認」に分類される。挑戦やポジティブな期待、報酬、自己承認の欲求は様々な場面やフレームでも用いられるからストレートに理解が及ぶと思う。不協和は自分が望ましい、好ましいと思う状態と現実との不一致で、それを自覚するとそれを解消したくなる心理的な働きと、それによる行動の誘因を指す。ネガティブな期待は危険を回避する心理で、そのことによる行動の誘因を利用する意図になる。

「心理的トリガ」ー「社会的文脈」ー「被視感」/「社会的規範」/「社会的証明」

心理的トリガの社会的文脈は社会的な制約がもたらす心理的な働きで「被視感」「社会的規範」「社会的証明」に分類される。被視感は他者からの視線があることで恥ずかしいことはできないとが他律的に行動が促されるもの。社会的規範は文字通り社会的に合意された基準や判断のモノサシで、それが行動を左右する。社会的証明は他の人々の行動、状況によって生み出される暗黙の状態や規範を指し、具体例は地域のローカルルールや組織のカルチャーなど。

様々な仕掛けは前述した大分類、中分類、小分類に分解して整理をすることができるから、これらのフレームを理解しておくことで、仕掛けを設計する際に寄与する面はあるはずです。

人の行動変容を促したいとき、現状に楽しさを盛り込みながら行動に選択肢を増やしたい場合には、先のような「仕掛学」をベースにしてみるのも面白いと思います。

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