「アバター近藤が解説する業界史~逆タイムマシン経営論671」
皆さん こんにちは アバター近藤です。
「逆タイムマシン経営論」として、業界唯一の経営情報誌であるフィットネスビジネス誌のバックナンバーを引用しながら、それぞれの年のトピックスや記事について、示唆することは何かをアバター近藤なりに解説していきます。
「歴史に学ぶ」とは良く使われる言葉ではありますが、フィットネス業界史について、詳細に検証した文献は恐らくないと思いますので、これから良い歴史を作るために何かしらのお役立てになれば大変うれしく思います。
~Fitness Business通巻第22号(2006.1.25発行)「欧州クラブのトレンドとクア施設最前線」5~※名称等は当時、一部文章省略
クアディレクターの仕事は街全体を売る仕事(オリバー・ハインツ氏)
我々は先ほどのような社会の変化に合わせて自分たちがターゲットする層を明確にしたうえで商品をパッケージし、広告宣伝活動をしています。
1つ目のパッケージプログラムはよりアクティブな層に向けて、ゴルフをするとか山歩きをするとかといった活動に温泉浴やマッサージを組み合わせたものです。
2つ目はクアと予防治療を目的としたパッケージです。
個人個人が抱えていそうな病気、例えば腰痛や骨粗しょう症などに合うようにそれぞれパッケージして商品化しています。
以前は保険でカバーされていた治療の内容も含んでウェルネスプログラムとして提供しています。
3つ目は、ビューティーや快適さを目的としたパッケージです。
ここではアーユルヴェーダやサウナ、エステなどを組み合わせます。
今後どういう施設が生き残るかというと、それは「品質」ということに尽きると思います。
自己負担でプログラムに参加する時代においては、各個人に対して高い満足感が提供できるかどうかが勝負になります。
マーケットには色々な要素がありますが、それに全てに応えようとは思っていません。
全ての人を対象にするというのは間違いだと思います。
私たちが持っている資源や諸条件が、どういう方に合っているかを見つけ、それに整合させた運営をしていくことが大切だと思います。
例えば、当施設はフランスの国境まで10分ということもあり、利用者の40%がフランス人です。
ですので、マーケティングの部長や広告宣伝部、受付にもフランス人を採用しています。
また全職員にフランス語の研修も受けさせています。
その他、主要顧客層が、ドイツ人とスイス人なので、スイスについてはスイスのマーケティング会社を使うなどして、各国の方からのフィードバックや要望の回答もしてきています。
プログラムの開発は私が中心になってマーケティングの担当部長とそのスタッフで原案を作り、それをテナントの方々とも話し合って最終的に決めるという形で行っています。
その時々のトレンドと我々がターゲットすべき顧客層を見極めながら、毎年微調整を繰り返します。
施設のテナントの方々には、プログラムや商品を勝手に提供しないようにして貰っています。
同じ施設内で運営している以上、「統一性」が大事だからです。
私自身は、もともと理学療法士でしたが、最近は「健康ツーリズム」の勉強もしています。
健康について深く理解するとともに、その分野のトレンドを広く捉えられる環境に身を置いておくことは重要だと思います。
最後に当施設の営業形態と利用動向ですが、営業日は1年365日年中無休で営業しています。
エステや美容院などテナントも同じです。
滞在時間の制限はありません。
館内の補修をする場合も入場料を若干下げるなどしますが、年中無休というのが原則です。
平均滞在時間は約2時間半です。
週末は4~5時間と長くなります。
平日午前中は1時間半程度です。
ターゲットに合わせてプログラムもそのように設定しているので、このような滞在時間になります。
入場料は1日券、ナイト利用券、週末のファミリー料金なども設定しています。
30分に一度提供している水中運動と、サウナでのアウスグースなどは入場料に含まれています。
アーユルヴェーダやマッサージなどは有料です。
様々な価格設定のプログラムを用意して、各人の予算に合わせて参加できるようにしてあります。
利用料金は1日券(サウナ付)が14.8ユーロです。
株式会社として運営しており、現在、年間総売上高は約400万ユーロです。
売上構成比は入場料がそのほとんどを占め、入場料以外の収入は基本的にはテナント料として得ています。
昨年来、水道光熱費が上がってきていることから、来年、値上げをする予定です。
ただ40㎞圏内に4つも同じような施設がありますから、他の施設の料金設定の動向やお客様の利用動向を見ながら慎重に行いたいと考えています。
~ここまで~
この記事で参考になることは、基本的なことですが、主要な顧客層を設定し、それに見合った商品・サービスを提供すること、そして、その「品質」こそが生き残りの源泉であるという指摘だと思います。
日本のフィットネス施設は、〇〇の運動をすることができるとか〇〇のプログラムを用意しているといった形で広告宣伝をする企業があまりに多く、〇〇の目的を達成するための商品・サービスの提供という観点が弱い気がします。
確かに〇〇が使える、受けられるという使用権についての表現は、品質に対するエクスキューズとなり、例え、結果として目的を果たせなくても問題は生じません。
ただ、そのようなことを続けた場合のマイナスインパクトは、今回のパンデミックで多くの企業が痛感したと思いますので、いい加減、「品質」に拘った経営をしていく必要が業界全体の流れとして求められていると考えます。
お読みいただきありがとうございました。
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