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「アバター近藤が解説する業界史~逆タイムマシン経営論747」

皆さん こんにちは アバター近藤です。
「逆タイムマシン経営論」として、業界唯一の経営情報誌であるフィットネスビジネス誌のバックナンバーを引用しながら、それぞれの年のトピックスや記事について、示唆することは何かをアバター近藤なりに解説していきます。
「歴史に学ぶ」とは良く使われる言葉ではありますが、フィットネス業界史について、詳細に検証した文献は恐らくないと思いますので、これから良い歴史を作るために何かしらのお役立てになれば大変うれしく思います。

~Fitness Business通巻第30号(2007.5.25発行)「米国クラブ業界の最新トレンド」4~※名称等は当時、一部文章省略

トレンド2「家族・子供重視」

米国でベビーブーマー層のクラブ参加が注目されている一方で、現在クラブが注目し始めているもう一つの層がファミリーと子供のマーケットである。
これは短期的には定着率の向上と、客単価アップを企図した施策の一環として、また長期的には米国の人口構造の変化を見据えたマーケティングの一環としての意味合いがある。
総合クラブが総じてファミリー・子供志向にシフトして、子供向けのエリアを拡充させてきている一方で、ティーンエイジャーのみをターゲットしたクラブなども登場してきている。

家族会員は定着率が高い

定着率の向上に関しては、米国クラブの多くがIHRSAが2005年に出版した「定着率改善のためにすべきこととすべきでないこと」を参考に、定着策を打ち出してきている。
ファミリーと子供をターゲットすることは、同冊子に書かれている定着率の高いクラブの特徴に沿うものである。
同冊子には、下記のような項目が挙げられている。
「家族会員は、個人会員よりも、夫婦会員よりも定着率が高い」「クラブで多くのお金を使う人ほど、在籍期間が長い」「クラブの近くに住んでいる会員のほうが遠くから通う会員より定着率が高い」「複数アイテムを使う会員は、一つのアイテムしか利用しない会員よりも定着率が高い」「定期的に再投資をしているクラブは、していないクラブより定着率が高い」等。

ジェネレーションX世代とY世代の出産重なり今後子供人口が拡大

人口構造としては、現在ジェネレーションX世代(1960年代~80年代生まれ)の出産が高齢化しているところにY世代(1980年代~1990年代生まれ)とエコブーマー層(1982~1995年生まれ)の出産時期が重なり、今後子供世代の人口が膨れ上がることが予測されている。
このことから、子供にターゲットしてクラブをリマーケティングすることは、これから広がりを見せるマーケットにいち早く対応することにも繋がることになる。

ボストン郊外に立地するデダム・アスレチッククラブでは、現在クラブに参加していない85%の人々にターゲットしたマーケティングと定着志向の運営を続けてきているが、数年前からクラブのマーケティングを子供とその家族に向けて大きくシフトさせている。
同クラブは1972年に成人向けラケットクラブとして設立されたが、時代の変化とともに総合フィットネスクラブ化を進め、5年前に子供にターゲットした屋外プールを設置した。
その後もスイミングスクールの充実や、バースデーパーティーのホストサービス、ムービーナイトなどのイベント実施などソフトを拡充してきたことに加えて、現在館内に6ヶ月~16歳までそれぞれの年齢層に合わせたプログラムが提供できるスペースを準備中である。
このエリアはディズニーランドを思わせるペインティングやライティングで、子供たちが毎日ワクワクしてクラブに通えるよう様々な配慮がなされている。
今後は、このエリアをファミリー向けの強力なセリングポイントにすることを企図している。
同クラブではシングルメンバーの会費が94ドルに対して、ファミリーメンバーは280ドル。
今後、既存会員のアップグレードを促すことで、新規顧客ターゲットの販促よりも低コストで、定着率の高い会員層をマーケティングすることに繋げようともしている。

サンノゼのデカスロンクラブでも、これまで法人メンバーにターゲットしていたところ、シリコンバレーの経済環境の影響をダイレクトに受けて会員数が大きく変動していたことから、経済状況の影響を受けにくいファミリーメンバーターゲットに大きく戦略を変換している。
今後5年間で4億円をかけて、屋外プールの増設を含む家族向けのクラブにシフトさせていく。

~ここまで~

日本国内でファミリーメンバーの会員種別を導入するクラブは、記事当時から現在まで徐々に減っている流れだと思います。
それは、日本のファミリーメンバーの場合、同時刻にそれぞれの年齢層に合ったプログラムの受講や施設アイテムを開放する環境が乏しかった為、利用するにしても別の時間になり(例えば子供向けスクールは平日夕方のみなど)、よほど家族で趣味嗜好が一致しないと同時利用が難しいという問題があったからだとアバター近藤は分析しております。

その結果、現在も子供向けスクール自体は堅調に運営しているクラブが多いものの、ファミリーターゲットのマーケティングとしては、米国と違い、洗練化できなかったと歴史的に評価されるでしょう。

お読みいただきありがとうございました。

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