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「アバター近藤が解説する業界史~逆タイムマシン経営論733」

皆さん こんにちは アバター近藤です。
「逆タイムマシン経営論」として、業界唯一の経営情報誌であるフィットネスビジネス誌のバックナンバーを引用しながら、それぞれの年のトピックスや記事について、示唆することは何かをアバター近藤なりに解説していきます。
「歴史に学ぶ」とは良く使われる言葉ではありますが、フィットネス業界史について、詳細に検証した文献は恐らくないと思いますので、これから良い歴史を作るために何かしらのお役立てになれば大変うれしく思います。

~Fitness Business通巻第29号(2007.3.25発行)「世界の動きーAVACスイミングスクールの成功に学ぶ」1~※名称等は当時、一部文章省略

米国で最も成功し、かつ元気のいいスイミングスクールの一つであるアルマデン・ヴァレー・アスレチック・クラブ(以下AVAC、カルフォルニア州サンノゼ市)。
本稿では、同スクールがどのように発展を遂げてきたのかを紹介する。
複合型のファミリー向けフィットネスクラブであるAVACは今年30周年を迎えたが、付帯するスイミングスクールの歴史は、それよりもさらに11年前に遡る。
このスクールの設立準備が開始されたのは実に44年前のことであった。

優れたビジネスの多くがそうであるように、このスクールも一つのシンプルなビジョンのもとに生まれ、一途な情熱によって育てられてきた。
1963年、学校教師であったジム・シアリングとリンダ・シアリング夫妻は、現在のAVACの敷地から約1.6㎞離れた屋外プールで夏季のスイムレッスンを開始した。
しかし彼らの最終的な目標は、年間を通して子供達に生きていくうえでの財産となる水泳のスキルと水の安全に関する知識を教えることであった。

夫妻は1974年に最初の大きな一歩を踏み出した。
自らの貯金をはたいて、スクールの敷地を購入したのである。
同時に、夫ジムの高校時代の友人ジョー・シャンクに協力を呼びかけた。
シャンク氏は当時、オハイオ州のスタンダード・オイルの一般消費者向け製品ラインのセールスマネジャーであった。
ジャンク氏は夫妻のビジョンに共感したばかりでなく、それをさらに発展させて、夫妻と共に事業の基本デザインを細部に至るまで練り上げた。
熱心なテニスプレーヤーであったシャンク氏は、夫妻が購入した土地に隣接するブドウ畑も購入してテニスコートにするべきだと提案するなど、様々な新しいアイデアを出した。
当時は複合型フィットネスクラブはまだまだ珍しかったが、3人は5.5エーカー(約2.2ヘクタール)の敷地に、テニス、スイミング、ラケットボール、その他のフィットネスプログラムを提供する複合型クラブを建設する構想を固めていった。
「家族全員で楽しめるよう、多様なフィットネスメニューを提供したいと考えていました。私達は米国におけるファミリー向け複合型クラブの先駆けだったのです。」とシャンク氏は振り返る。
基本構想が固まると、あとは実行するのみとなった。
シャンク氏はパートナー方式で経営することを決め、パートナー経営の基本契約書と目論見書を作成し、35名の出資者(有限責任パートナー)を集めた。
これにより、1年半で180万ドル(約2.2億円)を調達するとともに、1976年のオープン前夜までに500名の会員を確保した。

オープン時点のAVACの施設は、屋外プール、テニスコート9面、プラットフォームテニスのコート3面、パドルテニスのコート2面、ラケットボールのコート6面と小さなフィットネスエリアから成っていた。
その後、AVACの経営陣は施設への再投資を続け、現在のクラブは2800㎡のメインの建物に、560㎡のフィットネスセンター、240㎡のグループエクササイズ用スタジオ、110㎡のピラティスルーム、90㎡のストレッチ専用エリア、大人用および子供用のロッカールーム、子供用水遊びプール、レストランとプロショップを擁し、そこに110㎡の託児施設が隣接している。
さらに2002年に総工費170万ドル(約2.1億円)をかけて完成した2300㎡の屋内プールがある。
このプールこそがAVACスイミングスクール成功の原点である。
現在AVACは11000~12000名の会員を擁している。
シアリング夫妻は2004年にクラブの経営から退き、シャンク氏がオーナー兼CEOを務めている。

~ここまで~

日本のフィットネスクラブは、1980年代前半に少しずつ増え始めたということで、その10年前に、しかも超大型の複合型クラブを創出したという事実にまずは驚かされます。

当社のスクール制小型クラブも、同業態の先駆けであると自負しておりますが、投資額のスケールが桁違いであり、その開拓精神は凄いの一言です。
これだけの思い切った投資をするには、記事にもある通り、シンプルかつ一途なビジョンが支えになったことは言を俟ちません。

もし金銭的な成功を目標に置いたならば、当時、流行していたであろう事業に目移りしてしまう恐れもあったはずです。
数十年に渡って経営をしていく中で、いくつもの危機が内外問わず訪れることを考えると、やはりビジネスを始める際の原点が最終的に問われるように思えます。

お読みいただきありがとうございました。

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