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5月15日(日):デジタル化と身体感覚

先般の日経MJには「お茶の品質、スマホ画像で判定」と題した記事がありました。

こちらで取り上げていたのは伊藤園などが開発した技術で、AIを使って画像から荒茶の品質推定を行うものです。

通常は茶葉を摘み取って一次加工を経た荒茶と呼ばれる状態で品質検査を行い、それは長年の経験を積んだ専門担当者の茶師が担ったり、専用の分析機器が必要なのだといいます。

ただ専用機器の価格は数百万円もするため、それを導入しているのは伊藤園に関わる個人農家や事業者のわずか15%ほどに留まり、多くの農家は荒茶を伊藤園に送って品質を分析するケースが多いそうです。

そうした手間や時間を削減するものが今回の品質推定技術でスマホのカメラで荒茶を取るだけで成分の可視化ができ、導入コストも専用機器を購入した場合のおよそ半分、検査時間も1分未満になるようです。

伊藤園がこうした開発に乗り出した背景にはお茶農家の高齢化が進んでいるほか、栽培面積も減少しており、品質の良いお茶や産地の確保には既存農家の負担を減らして新規参入者のハードルを下げることが課題にあるとのことでした。

そのような見地に立つと今回のようなテクノロジーの活用は負担軽減、効率化に寄与するところが大きいでしょうね。

一方で品質判定、成分の可視化といったことが撮影ひとつで簡単にできるようになると別な面で個人的に気をつけなきゃなと感じることも出てきます。

先の内容はあくまでも生産者側のなかでの技術活用でしたが、いずれは同様な要素を含んだアプリなどがエンドユーザー向けにも広がっていくことはあるだろうと思います。

というのも用途は異なりますが、つい先日にもドットサイエンスという企業が担う成分分析によるリブランディングの記事も目にしていたからです。

食品が持つ成分を数値化して分析し、強みなる要素からエンドユーザーにとっての魅力を再定義して、高付加価値食品としてプロデュースをするアプローチですね。

こちらも顧客創造をするマーケティングの観点でいえば素晴らしいことですが、このようにDXや効率化の文脈でなんでも簡単にデータ化、可視化できる良さがある反面、そればかりに傾倒していくと全てが機械頼みになっていく危うさも感じます。

自分の目で見て判断する、自分で食べて味わうということよりも、評価が良いから買う、評価が高いから食べる、そんな記号的な消費になっていくかもしれない懸念ですね。

動物である人間が本来持っているはずの感覚・感度、そうしたものも使わなくなると、どんどん鈍くなっていくから、そこは気をつけたいところです。

デジタル化が進めば進むほど、改めて自分の身体性に目を向けて身体感覚や感性は大切にしたいと思います。



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