「サッカーを好きになる」の先。1つの試合を大切に


サッカーを上達させるには、まずサッカーを好きにさせる

サッカーの指導にかかわる記事を読んでいて、見つけた言葉です。

息子に、毎日10分でもいいから、自主練をしてもらいたいと思っても、なかなかそうはならない。

その理由が、サッカーが好きだという気持ちなんでしょう。

息子は、学校の休み時間にサッカーをしているそうですが、読書が好きなので、わりあいとしては読書がおおいようです。

サッカーをもっと好きになれば、おのずとサッカーの自主練もおおくなる。


サッカーを好きになってもらいたいが、なぜ好きにさせるの?

いきなりこんな疑問がわいてきたのは、息子のサッカーチームの練習試合で審判をやったとき。

高学年が試合をやっているよこで、低学年の半分遊びのような試合です。

相手は3年生であろう子がおおく、こちらは1年生、2年生が主体。

キックオフと同時に、相手の3年生がドリブルで突進して、1点を決めます。

3年生の子たちは、簡単だと分かると、キックオフの笛と同時に、我さきにとボールをうばい、ゴールをきめます。

3年生チームのディフェンスとキーパーの子はやることがなく、パスしろよと声をかけますが、目を輝かせて、得点を量産するフォワードの子の耳には入りません。

あっという間に、10点以上の差がつきました。

息子のチームメイトの1、2年生は、普段は無邪気に、楽しそうにサッカーをしています。でも、その試合の、悲しそうに、助けてほしそうに私を見る顔が忘れられません。


ちょうどその後、この記事を読みました。

何が問題かというと、僅差の試合に出て、勝ったり負けたりを経験することがスポーツ本来の在り方であり、大味な試合ばかりでは子どもたちの能力は上がらないということです。(記事抜粋)

この記事を要約すると、トーナメント形式の公式戦が負けることを許さず、その結果として、試合に出られない補欠をうみ、選手たちの成長をさまたげている。レベルにあったカテゴリー分けをして、リーグ戦を行うべき、という内容です。

10点差のつく試合は、チーム間の差が大きすぎます。

私が審判をした試合は、公式戦でもない、低学年の練習試合でした。

あの試合では、息子のチームメイトは、くやしさよりも、何をやっても勝てないというあきらめの気持ちを感じたでしょう。


サッカーを好きになった先に、10点差で打ちのめされる試合がある?

その試合を見ている親もいます。2、3試合のために早朝から準備して、お昼過ぎまでつきそって。

子供と親の、貴重な時間をつかって、得られたものは?

それも経験。仕方がないのか。

サッカーを好きにさせた後なら、あってもいい経験なのか。


なんでサッカーで1日もつかうの?

これは、私の妻の言葉です。スポーツをやっていない、家族と一緒にいる時間をとても大切にする母親です。

うちは3兄弟ですが、上の子がサッカーの試合の時は、私が上の子につきそいます。彼女にしたら、家族がばらばらな状態です。

家族が一緒にいられる時間は限られていて、それを知っている妻にとっては、貴重な休日が一つ減った感覚なのです。


Twitterでこう書きました。なぜ、10点差がつくような練習試合を、途中でやめさせたり、メンバーを変えたり、人数を調整したりできなかったのでしょう。

たぶん、両指導者ともに、そんな問題意識はなかったのでしょう。

指導する立場にはない審判である私は、あの試合をとめるべきだったのか。指導者のかたたちと話し合うべきだったのか。


サッカーを好きにさせて、サッカーを上手くさせて、その先には何があるのか。

プロになれる人は一握りです。それはみんなが知っています。

では、その競技を好きにさせ、続けさせる先に何があるのでしょう。

競技人口を増やすこと?

サポーターやスポンサーになってもらうこと?


上に載せたのアイスホッケーの記事は、子供の育成と、その競技を続けてもらうための施策についても書かれていました。

でも、その競技をとおして、子供たちに何を学んでほしいについては書かれていませんでした。


サッカーを好きになってくれた子に、何をかえすのか。大切な1日をつかって、何を学んでほしいのか。

子供がサッカーが好きで、友達がいて、1日一緒にいられたら、その子は楽しいかもしれません。

でも、指導者は、それに甘えていていいとは思えません。

10点以上の差がつく試合が、子供たちの有意義な体験だとは思えません。


サッカーの試合は、1日で3試合くらいでしょう。控えの子なら、出場時間は、1日で1試合分。

たった、その少ない時間で、親子の大切な1日をつかうのであれば、その時間に見合うような経験をさせてほしいと思います。

今よりも、1試合でもっと得るものがあるやり方が、絶対にある。

指導者の方たちには、チームを勝たせる、サッカーを上達させる、サッカーを好きにさせる、それ以上に、サッカーをとおして学ばせたい何かを大切にしてほしい。

ベンチにいる子も含めた、子供たちの大切な時間をつかって、この試合で何を体験させられるのかを考えてほしい。

チームの子、全員が、将来サッカーをやめることを前提にして、この試合で何を残せるのか。

そんなふうに、1つの試合を、大切に考えてほしいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?