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養殖のパラダイム・シフト。未来の養殖業はエンタメ系SaaSビジネスになる

養殖の課題あるある

まだまだ解像度が低くて勉強中だけど、養殖業の課題っていろいろある。

電話・FAXでの受発注(労働生産性が低い)、生産できる条件の制約(漁場・水温など)、水温調節のための電気代、餌のやりすぎ→水質悪化、不安定な種苗の質・量、・病気発生による歩留まり悪化、向上しない魚価と販路開拓、需給ギャップ…etc

僕たちが目先でまず向き合おうとしているのは「電話・FAXでの受発注が多く労働生産性が低くなっている」こと。おいしい魚を生産できる人は限られている。生産者の人が美味しい魚を生産することに集中できる環境を作りたい。

非線形な未来は「課題」の先にあるか

課題を解決すること、「不」を解消することで対価をいただく。それはビジネスの基本形ではある。だからここは忠実に役に立つものを作っていきたい。現場の人に寄り添って役に立つものを作る。

けれど、マイナスをゼロにするだけではリニアな未来しか描けない。未来の変化を非線形に描く。そのことで逆算的に課題を定義する。良い課題を定義できれば、自然と解決策は導き出せる。

生産者もそうだけど、そもそももっと水産業を元気にしたい。水産業をかっこいい仕事にしたい。魚好きだし。ということで、未来の養殖業について思いを馳せてみる。

未来の養殖業の鍵はオーナーシップ

養殖業のビジネスモデルは単純だ。魚を育て、出荷することで対価を得る。実にシンプルだ。わかりやすい。生産する者から消費する者に商品を渡し、その対価が金銭として授受される。小売や宿泊施設、商社などは両者をつないでいるにすぎない。基本的な主役はやはり生産者と消費者だ。なんてことはない当たり前の話。

最近の潮流はD2Cだ。浜チョクや魚ポチなど、生産者と消費者がダイレクトに繋がれるようになってきている。物流の効率・質に問題があったり、クレーム処理を生産者がやらないといけなかったり、魚価が不安定になったりと課題はあるが、この流れは基本的には不可逆だと思う。

そうなると次の変化は何になるか。その答えがオーナーシップなんじゃないかなと。生産者vs消費者という構造が将来的には変わっていくんじゃないか、ないし、変えていけると面白いんじゃないかと思っている。両者の垣根がなくなり、消費者が生産者として溶けていく。生産者が消費者になる。

養殖そのものにエンタメ要素がある

モノからコトへ。買い切りからシェアリングエコノミーへ。製造業の世界ではここ数年で当たり前となっている時代の変化がある。機能を買う時代から物語を買い、消費する時代になった。

水産業はどうか。寿司作り体験を組み込んだツアーやマグロの解体ショーで集客する寿司屋など、観光業の一部では確かにコト消費へ梶を切っている事例もある。だが、基本的なビジネスモデルは数百年前から変わっていない。生産or漁獲し、販売する。そして対価を得る。魚価は市場で決められた一定の価格。サケはサケなんだから同じ値段。時期によって変動するだけだ。

養殖も体験・ストーリーを売る時代が来たっていいんじゃないか。養殖事業を営んでいる事業者は稚魚が魚卵からかえる瞬間を見ているし、その稚魚が大きくなっていく様子も日々見ている。時には病気になる。様子を伺う鳥たちを追い払う。立派な魚が獲れたら嬉しい。そうやって毎日魚と向き合っている。

それって結構面白いエンターテインメントじゃないだろうか。この時間自体に実は結構価値があるんじゃないか。

コミュニティで魚のオーナーになる

今まで養殖業者は魚を育てて売る人だった。これからは違う。養殖業者はコミュニティーをマネジメントし、食卓の笑顔を作る人になる。

誕生、いけすオーナー

ビジネスモデルはこうだ。まずいけす単位でいけすの所有権を販売する。1人オーナーだと投資金額が大きすぎてペイしないので、コミュニティ単位でいけすの権利を売る。投資金額が大きい人がより多くのインセンティブが得られるように設計しつつ、少額でもコミュニティに参加できるようにする。クラウドファンディングみたいなイメージ。

その上でコミュニティメンバーで魚の飼育コンセプトと魚種を決める。ワクチンゼロで作るとか、ゲノム編集の威力を発揮しまくるとか。養殖業者はそのコミュニティ方針の決定をサポートをする。自分の過去の経験や他社の事例などを踏まえてアドバイスする。

商品は魚を飼育する日々の時間

方針が定まったら養殖が始まる。卵の孵化から始まり、稚魚になり、魚はどんどん成長していく。水質や水温はIOT機器によりリアルタイムでいつでも確認でき、毎日養殖業者が魚の様子をレポートしてくれる。

気になる人はいけすに魚を愛でにいくことも可能だ。巨大なガラス張りのいけすを作って水族館みたいに水中から覗けたりしたら、もう最高だ笑

もちろん時にはトラブルもある。自然を相手にするのだから仕方ない。そんなときも養殖業者は謝罪もしないし、意思決定もしない。魚の持ち主はコミュニティメンバーだから決めるのは彼らで、養殖業者はそのサポートをするだけだ。株主総会ならぬ魚主総会?で方針を決める。生産量が増えても減ってもそれはコミュニティーメンバーの責任だ。大丈夫、トラブルだって楽しめる。自由と責任が養殖体験をエンターテインメントに変える。

月額費用で生産コストを回収

とはいえ魚を維持し育てるのは現場の養殖業者の人たちだ。コミュニティメンバーは魚の飼育を彼らに代理委託している。ゆえにコミュニティのメンバーからは月額費用を徴収し、エサ代や電気代、ワクチンや薬代に充てる。

月額費用を請求することにためらう必要はない。それはコミュニティのメンバーはもはや「魚そのもの」にお金を払っているわけではないからだ。彼らがお金を払っているのは自分の魚の成長を見守って楽しむ「時間」であるので、そこにお金を払うことにはとても自然なことだ。

水揚げする前に利益回収。販路開拓も売掛回収も不要

従来の養殖業では水揚げした瞬間の市場価格×数量で売上が決まっていた。天然モノが大漁の年は魚価が下がるし、逆なら上がる。自分では決定しようがない。販路がなければ売上すら立たない。コロナで観光業がダメージを受けた時同じように養殖業もダメージを受けた。

そんな時代が変わる。いや、変えていく。売上を立てるために販売先を探す必要はもはやどこにもない。だって所有者が決まっているんだから。トレーサビリティー?そんな言葉ももはや必要ない。決まった所有者に冷凍なり冷蔵なりで出荷するだけでいい。出資比率によって受け取れる量が変わるだけのことだ。

魚が大きくなった時点でプロジェクトは完結するが、その時点で従来の売上分のお金の回収はすでに終わっている。さらば、得意先に督促する日々。

養殖魚が食卓に並ぶ喜び、食の豊かさを実感

コミュニティメンバー(消費者)の体験はまだ終わりじゃない。むしろここからが一番大切だ。ペットカメラよろしく毎日魚の様子を観察し、日々のレポートを読み、水温や水質の数値に気を配り大切に育ててきた魚がいよいよ自宅に届くのだ。そりゃ大事に決まっている。

まず外装。立派なトロ箱が届く。チャチな使い古しの発泡スチロールなんか使ったら絶対にダメだ。

箱を開けると丁寧に真空パックされた魚のフィレと養殖業者からのメッセージ、小さなアルバムが入っている。アルバムにはこれまでの魚の成長の歩みが写真やコメント付きで載っている。コンセプトは何で、何日に稚魚が生まれて、水温はどう変化したのか。メンバーとどんなコミュニケーションをしたのか。トラブルをどう乗り越えたのか。

生産者からのメッセージにはこれまでを振り返る温かいメッセージと生産者の顔が載っている。それを読み返しながら魚を口に運ぶ。コミュニティメンバーや家族と喜びを共有する。マズいはずがない。

養殖体験により魚価を引き上げる

魚を機能で差別化するのは限界がある。市場に並んでしまえば目の前のブリも箱の下で潰れかけているブリも同じ値段がつく。でも体験に、時間に、お金を払うなら話は別だ。

魚が急に唯一無二のものになり、心理的価値がひき上がる。心理学でいうところのコンコルド効果やサンクコスト効果にわかるように、人間は自分が手間をかけたモノに対しては愛着が強まる傾向がある。

そこには種苗から育ててきた時間と思い出がある。届くブリは唯一無二の自分のブリだ。全然価値が違う。人は機能ではなく、体験にお金を払う。

養殖業の未来は人のライフスタイルを変える

馬に投資する人間がいるなら、投資対象がマグロでもいいはずだ。今でも野菜は自家栽培する人がいるし、鶏を飼う人だっている。

食は地産地消どころか自産自消になっていく。人々は自分で食べるものを自分で選び、自分で育てるようになり、そしてその過程を楽しめるようになる。自分が食べるものは自分で作り、自分で選ぶ時代がくる。養殖業者という最強のパートナーがいるからこそできる新しいライフスタイル。それが未来の養殖業の姿だ(と思っている)

未来の養殖業はエンタメ系SaaSビジネスになる。

一緒に養殖業の未来を切り拓きませんか?

僕が自分のプロジェクト?(会社にはまだしてないのでプロジェクト)で目指しているのはおいしい魚が食卓に並ぶ「当たり前」の日々を次の世代につなぐことです。

そのビジョンの裏にはもちろん「未来の養殖業の姿を自らの手で作り上げていきたい」という想いがあります。ただいきなりこのビジネスモデルから参入するのはコストもかかるし、何よりもっと手前のところに働く人たちの課題があるので、まずはここを解決しにいって信頼を積み重ねることから始めなくてはなりません。

水産業独特の「めんどくさい」を解消し、魚を届けるために働く人々を裏方として支えること。それが今の我々のミッションです。ひとつひとつ積み重ねながら歩みを進めます。

ただ我々には今圧倒的に足りていないものがあります。人的リソースです。
特に下記のような方の助けが必要です…!知見をお持ちの方、我々が目指す未来に共感してくださる方、ぜひ助けてください!力を貸してください。
・エンジニア
・B2B営業
・養殖事業に今携わっている方(ヒアリングさせてください)

ぜひ気軽に声を掛けていただけると嬉しいです!Twitterもやってますー!フォローいただけると喜びます。


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