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小学校で授業をしてみた

授業をしてください!

事業をされている方や広報担当の方にはよく共感していただけるのですが、ホームページからの問い合わせというと人材採用・動画編集・補助金支援・営業代行などの会社からの営業がほとんどです。

そんな中、普段、見慣れない問い合わせがきました。学校の授業で魚をテーマに扱っており、子どもたちに話をしてほしいという内容でした。それも会社(というか自宅)のある東京都東大和市の第八小学校からの依頼でした。選挙にいくときはもはや投票場所がその小学校の体育館だったりします。

内陸で海とも距離のある場所なので「珍しいな」と思ったのですが、とりあえず話を聞いてみることにしました。

子どもたちにとことん探求させたい

依頼してくださったのは6年1組の担任の先生でした。背景をお伺いすると「総合的な学習の時間」の時間を使って、魚をテーマに子どもたちが各々好きなことに取り組んでいるということでした。

子どもによって興味があることは違います。「総合的な学習の時間」のテーマをクラスみんなで考えていたときも、クリエイト系(新しくものをつくったり、生み出したりする創作活動)とサイエンス系(科学的に色々なものを調べて試す実験活動)に割れたらしく、それを両立できるテーマとして「魚」が選ばれたようです。最終的には5つのグループに分かれて、それぞれのチームが思い思いに活動しているとのことでした。

●「子供たちが輝く」「子供たちの興味のあることをとことんやる」ことを大事にしたい
●「興味をもっていることに自ら突き進み、失敗や工夫を重ねながら、他に人に働きかけ、巻き込む力を高め、探求していく面白さを味わってほしい」という先生の話を伺って、こういう時間って大事だよなと思い、依頼を受けることにしました。

真剣な眼差しと素直な反応が嬉しい

授業は以下の2部構成にしました。

前編:魚の養殖編
後編:将来の夢編

授業の構成

オーダーされていたのは前編の内容だけですが、小学6年生の11月といえば、これから中学生になるとても多感で大切な時期です。その時期の子どもたちに自分が仕事で考えてきたことや背景にある想い・哲学を直接伝えられたら探求に深みも出せるかなと思って、勝手に後編をねじ込みました笑

ちょっと小難しくて退屈かなと思って心配していたのですが、みんなとても前のめりに話を聞いてくれたのが何よりも嬉しかったです。若干1コマ目の時間ではプレゼンが収まりきらなかったのですが、チャイムがなってもみんな真剣な表情で聞いてくれました。

授業の様子。みんな真剣です。

養殖現場の様子を動画で見てもらったり、クイズを入れたりしてみたのですが、問いかけてみると毎回とても素直で元気のいい反応が返ってくるのがたまらなく最高でした。

積極的に参加してくれる子どもたち。素敵。

「この魚は何でしょう?」といってカンパチの絵を見せたのですが、タイとかサンマとかイワシとかいろいろ出てきて面白かったです。

なかなか養殖現場を見ることもないだろうと思い、現場の話もいろいろしたのですが、エサの量ややり方は想像していたものとはかなり違ったらしく、「うぉおおー」「すげーーー!」と驚きの声があがり、盛り上がりました。

養殖現場の動画を見てもらいながら解説

ちなみに将来の夢編の話は子どもたちにもですが、校長先生に一番刺さっていたような気がします。笑

創意工夫のレベルの高さに驚く

2コマ目は5つのグループがこれまでやってきた内容の発表を逆に僕が聞かせてもらって、個別に質問に答える形で進行させてもらいました。チームは以下の5つでしたが、「小学生ってこんなことまでできるの!?」と驚かされるばかりでした。子供たちが一生懸命考えていることがわかり、どの発表も大変興味深かったです。

さばくチーム

みんなに魚を捌くところを見せるチーム。アジを捌く様子を見せてくれました。1匹のアジを捌くところをチームのみんなが見て色々なことを口々に言うものだから、捌く子はちょっと緊張していそうでした。無事三枚おろしになりました。僕も家でちょこちょこ魚は捌きますが、丸で魚を買って自分で捌くというのは機会が減っている気がします。魚食文化を守る上でも大事な体験ですね。

ドローンチーム

「ドローンを使って養殖場にエサをまきたい!」ということで、エサをまく箱をつくったりプログラミングをしたりと、いろいろ挑戦しているチーム。小さなドローンでは魚の餌を持ち上げることができず、ドローンを2台使ってみたり、ドローンの風でエサを飛ばそうとしてみたりとアイディアがどんどん出てくるところが素晴らしかったです。ちょっと現場の運用には乗りづらいかもねという大人げない正直なアドバイスもしましたが、前向きに捉えてくれてよかったです。仮説を立てて検証し、うまくいかなかったら次のアイディアを試すという粘り強い姿勢やそのプロセスを経験できたことがきっと彼らの人生を豊かにしてくれるだろうなと思います。

つりチーム

「釣り体験教室をやりたい」ということで、釣り具をつくったり魚を実際に釣ってみたりすることにチャレンジしているチーム。身近な園芸ポールやたこ糸などを使って釣竿を自作していて、サバイバル力が高かったです。学校のプールに魚を放って釣り堀にする計画らしく、スケールも壮大でした。しかも結構釣竿の作りが凝っているんですよね。モノづくりが好きなんだろうなと。これからも好きなことをとことんやってほしいなと思いました。

エサチーム

魚のえさを作って食べてもらうべく、エサ作りに挑戦しているチーム。担任の先生が掛け合って近大からナマズの種苗を一部分けてもらったそうです。行動力すごい。「小麦粉や魚を混ぜて乾燥させようとしたらカビが生えた」とか「釣った魚を餌に加工すべく冷凍したまま学校に持ってきて先生が驚く」とかエピソードの数々が面白かったです。発表ではオーブントースターで焼いた餌を見せてくれました。あられみたいな感じの見た目で小さい魚は食べやすいかも。何事もやってみて初めて気づくことがあるし、そこから得られる学びは大きいと思うので、いろいろ試行錯誤するプロセスを楽しんでもらえたらいいなと思いました。

マンガ・音楽チーム

魚に関する現状を調べてマンガや曲を作りみんなに知ってもらうチーム。知的な質問をたくさんしてくれたのが印象的でした。作っているマンガや曲を見せてもらったのですが、どれも完成度が高かったです。音楽の子は音楽用ソフトを作って自分で作曲したらしく「え、こんなことできるの!?」と驚きました。きっと彼らは素晴らしい作品と感動を生み出すクリエイターになるでしょう。

子どもたちの感想

後日、子どもたちが感想を伝える手紙を書いてくれて僕の自宅に届けてくれました。自分たちのチームに活かせそう、●●が印象に残っている、将来の夢を考えるきっかけになったなどと書いてくれていて、伝えたかったことが伝わっていたのだと感じ、嬉しかったです。恐縮なことに僕みたいになりたいと書いてくれている子もいました。背筋の伸びる思いです。

子どもたちの感想文集。パンフレットや授業計画、先生のレポートも

以下は子どもたちが実際に書いてくれた感想の抜粋のほんの一部です。養殖の話を理解してもらえたのもそうですが、中学生になる前の子どもたちの多くが「夢や将来について考えるきっかけをくれてありがとう」と書いてくれていたのが個人的にはとても嬉しかったですね。やってよかったなと思いました。

養殖編

魚を養殖している人のおかげで食卓に魚が並ぶのだと実感しました。
●魚を管理するのに大変な努力が必要であると学んだので、自分が魚を食べるときにも今まで以上に感謝したいと思いました。
●エサを作っている様子やエサをまいて魚を食べているところを動画で見ながら説明してくれたのでわかりやすかったです。
エサの量やお金がたくさんかかることにびっくりしました。

将来の夢編

人々を幸せにして平和な世界をつくることを夢に今を突き進みます
職業について何がしたいのかを考えるきっかけになりました
●共感してくれる仲間や協力してくれる人間もつくることができるので、「夢を語ろう」という言葉が特に印象に残りました。
●仕事をすることが夢を叶える第一歩だと思いました。夢を作ることが仕事を決めると思いました。
仕事とは人の心を動かすこと、人の役に立つこと、喜んでもらうことということを初めて知りました。
●将来の夢は変わるかもしれないけど、好きなことや得意なことを大切にしていきたいなと思いました。
●先生が話してくれたことを頭に入れ、将来について考えながら中学校に進んでいけたらなと思います。
●登るカベを決めて、あとは登るだけというところが胸に刺さりました。壁を登るのは行動を起こすだけなので、今後この考え方を参考にいろいろなことに挑戦しようと思いました

チーム別発表編

●金魚やドジョウなどが好きなエサや大きくなるエサを調べて作れるようになりたいです。
●魚のどの部位をエサに使うと一番食べるのか実験してみていいエサ作りをしてみたいです。
●エサをまくためにドローンを使うのは効率的だと思っていましたが、現場で使われていないとは思いませんでした。
●ドローンは空を飛ぶものとばかり思っていましたが、水の中でも使える物があると知って驚きました
●ドローンの改善点も見つかったので、もう少し試行錯誤を繰り返していいものを作りたいと思います。
●水温上昇が魚にとってストレスになること・魚がとれる場所がこんなにも北上していることを知ってびっくりしました。

ルールを変えるために

最後にちょっと余談です。

僕が授業の依頼を受けることにしたり、将来の夢編を勝手に入れたりしたのには、実はちょっと個人的な背景や想いがあり、最後にその話を。

遡ること約13年前。僕にとって高校時代の受験勉強は非常に苦しいものでした。とにかく英語が苦手で、やってもやっても結果が出ませんでした。先生に「お前はなんか京大にいかなさそうな顔をしとる」と言われたこともしばしば。バカっぽいということですね。ひどい笑

結果が出なかったせいなのか、受験勉強、もっというと学歴でモノが決まる社会のルールに強い違和感がありました。こんな詰め込み式の教育に何の意味があるのだろうかと。たくさん覚えてたくさん点を取るだけなら、Googleでいいじゃん(今ならchatgpt)と。

他方で、1人の高校生が「受験勉強なんて無駄だ!」と言ったところで世間のルールは何も変わりません。このくだらないルールを変えるためには、このルールの中で勝って、ルールを作る側になるべしというのが当時の僕の仮説でした。もちろん、学習指導要領を決定するのは文科省なわけですが、どうすれば自分の意見をそこに反映しやすいのかみたいな話ですね。

勝っても、ルールは変えられなかった

結果的には僕は京都大学に現役で合格し、勉強のHow toの本を出版し(読み返すのも恥ずかしい)、教育大手のベネッセに中途入社したわけですが、結果としてはルールを変えるというよりも、ルールを強化する立ち回りしかできませんでした。

大手なので大きなお金は使えました。ただ、文科省の方針には前ならえですし、社内のしがらみも多くありました。「受験で勝つのが子どもの将来のため」と考える親と「勉強なんてしたくない」と嘆く子どもにサービスを売るという構造も変えようがありませんでした。

だから手を変え品を変え、ゲームだのポイントだのキャラクターだのでなんとかやらせて、ゲームっぽいから楽しいよとかいって商品を売る。それが僕の仕事の中心になりました。新規事業を立ち上げようが既存事業の営業・販売をやろうが、結局はくだらないルールを子どもに押し付けて勉強をやらせるだけ。

語弊しかなさそうで乱暴な言い方ですが、めちゃくちゃ優秀な人を育てたり、人生を楽しく生きている人を増やしたりするよりも、頭の悪い人の不安をあおって薬を売りつける方がお金になるんですよね…悲

僕は「学ぶことは楽しいことだ」と思っていたし、純粋に学ぶことの楽しみに触れられる機会や仕組み、文化を創りたかったわけですが、どうやらその哲学とビジネスはあまり相性がよくないようでした。

この活動に自分の人生を賭する価値があるかと真剣に考えたとき答えは「NO」だったので、僕はベネッセをやめて今の会社を立ち上げました。ルールを変えるためにやるべきことは、ルールの中で戦うことではなかったのかもしれないとその時悟りました。

未来ある子どもたちに何を語るか

そんな背景や経緯もあり、今回の機会はとてもありがたい機会でした。

いただいたテーマもかなり自由度が高く「魚とか養殖とかの話をしてもらえると嬉しいです。2コマ(40分/コマ)お渡しするので、時間の使い方もお任せします!」くらいの感じでした。

授業の内容にはかなり悩みましたが、考え甲斐がありました。極端な話ではありますが、もし何かひとつでもふたつでも僕の話が子どもたちの心に刺さり、残るものがあれば、子どもたちが選ぶ選択肢や将来がひょっとしたら変わるかもしれないと思ったからです。

想像していた形とは全然違いますが、でもこれはまさに13年前の自分がやりたかったことそのものでした。文科省に入省するわけでもなく、学校の先生になるわけでもなく、通信教育の教材やスマホアプリを作るわけでもなく、全く違う形で突然、僕は教育でやりたいことをやらせてもらえることになりました(皮肉にも教育の会社を辞めた後で…)。

子どもたちに学ぶって楽しいよ、好きなことを突き詰めてやってねと伝えて、そういう子どもたちを鼓舞するということが僕のやりたいことのひとつでした。だから実は将来の夢について子どもたちに語り掛け、そしてその結果、子どもたちから「ありがとう」と言ってもらえたことで僕はまたひとつ夢を叶えることができました。第八小学校の皆さま、貴重な機会をいただき、ありがとうございました。

記事はここで終わりです。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。もし記事が面白かったら「スキ」をぽちっとしていただけると嬉しいです笑

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最後に

今回の授業で子どもたちにお話した授業スライドを公開します。授業内容のスライド部分だけ有償にさせてください。今回実は授業は完全に無償でやっているので、応援したい・面白かった・興味があるという方はぜひ記事の方をご購入いただけると嬉しいです…!

あ、「スキ」をぽちっとしていただくのは皆さまお願いします!笑

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