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実はお友達?カクレガニ

今回は晩ごはんを食べている時に見つけた生き物です。表紙の写真は、実は私が噛み潰してしまった今日の主役です。次から、貝を食べる時には気をつけようと思います。

和名:オオシロピンノ
学名:Arcotheres sinensis Shen, 1932
分類:節足動物門、甲殻亜綱、十脚(エビ)目、カクレガニ科
生息アサリの体内。他にもハマグリやカキの体内に寄生することもある。カクレガニ科でみると、ナマコ類の体内に寄生する種もいる。

解説
食用として有名な魚介類に寄生している生物の話をする時はいつもデリケートになります。食材を買った場所や料理を提供された場所は伏せます(論文や学会発表時にはしっかりかきますが…)。今回のオオシロピンノについても、寄生虫となれば、“害”があるのかどうかが気になると思います。結論から言うと、ヒトには全く害はありません。では、アサリなどには害はないのかと言えば、わかりません。日本ではほとんど調査が行われていないそうです。一方、中国では養殖のムラサキイガイに寄生するオオシロピンノの調査が過去に行われたそうですが、季節により寄生率が変化(1.9〜62.1%)しており、寄生された場合、メスの身の量が減っていたそうです。ちなみに、アメリカではかなり価値の高い食材となっているようです。

寄生虫と言えば、大体嫌われて、悪い例として出されることもおおいのですが、このカクレガニは異なるようです。というのも、このカクレガニは古代エジプト古代ローマの文献に登場しており、よい意味で使われています。これらの地域では、カクレガニと貝の関係を「人生における友情の喩え」「貝の代わりに魚をとるカニ」という人生の相棒のように考えていたようです。日本や中国などの東洋では、いろいろな生物を扱う学問を“本草学”と言っておりますが、ここでもカクレガニが登場しています。やはり、中国では「貝の代わりに魚をとるカニ」と考えられていたようです。

このカクレガニ類が貝やナマコに寄生する過程を調べるのは観察するしかないようです。つまり、プランクトン状態のカクレガニの幼生が貝に入るのを観察するのですが、今回のオオシロピンノの貝の体内の侵入は確認されていません。ナマコのように動きの遅い動物に寄生する場合は肛門から入る。また、幼生の体の小さい間に貝類の呼吸器官に潜り込む例があるようです。加えて、アサリの体内に2個体以上のカニが寄生している話はききません。どうやら、貝の体外にでてきて交尾や産卵を行います。

参考文献
小西光一「カクレガニ類の話題―その後の状況」『Cancer』第19巻、2010年、 31-38頁

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