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参加リポート「VUCA時代の意思決定力」村上臣さん×村上由美子さん対談 Report by Mai Todagishi

LinkedIn News編集部LIVE!として9月16日に開催された、リンクトイン日本代表の村上臣さんと、OECD東京センター所長 村上由美子さんの対談からの自主リポートします。

VUCAとも呼ばれる先行きが見通せない時代、今回の対談では、日本における労働市場の在り方、女性活躍、ダイバーシティとイノベーションの関わりなど、幅広い内容ながら最新情報から思考が深まる機会でした。そのポイント部分をまとめてみます。

●OECD(経済協力開発機構)とは?

Organisation for Economic Co-operation and Development の略称。「世界最大のシンクタンク」と呼ばれ、国際経済全般について協議することを目的とした国際機関です。
日々のニュースで多くの人が「OECDの統計によると・・・」と耳にしますが具体的には、
加盟各国のデータを比較可能な形で収集分析し、政策ディスカッションの場を提供しており、世界中の論点・課題・問題から、各国に与える影響を考えるために、情報共有や学べるものを作っていく機関、と説明されました。
そのOECDで数少ない民間企業の出身者として、東京センター長を務めておられるのが、今回ゲストの村上由美子さんです。

OECD村上さん

●男性的な考え方をする女性が増えても意味がない

これは冒頭に話題となった「日本の女性活躍は、どのくらいの水準まで来ているか?」という質問からの、村上由美子さんのトーク内で印象的だった一言です。
今までの組織内と同じ、似た考え方のメンバーが勢ぞろいするのではなく、違う価値観やアイデアが生まれる環境づくりを重視することが大切である。1+1=2ではなく、3や10にすることで、企業にとっての果実となるイノベーションにつながる、というメッセージでした。

また、女性活躍の現状について、日本と他国と比べる際に、見落とされがちな下記についても、再認識したい点です。

・インターナショナルなビジネスの場では、実は日本人女性も多い
・女性の就業率は近年急速にアップしている
意思決定する場に女性が圧倒的に少ない
・数を揃えるではなく、具体的に何をもたらすのかへの認識・腹落ちが必須

具体例にもたらされるものとして、経済合理性がある(実際に企業の売り上げや価値の上昇)という点も、近年ニュースで目にする機会が増えたと感じます。

●ImmigrantとNativeという視点

LinkedIn村上さんから投げかけられた、直近の新政権の発足にあたっての話題では、閣僚の顔ぶれ・年齢という点に限らず、政策アドバイザーとなる面々に多様性があれば、閣僚のインプットや判断に問題はないはずだ、という点は普段のニュースでは見られない貴重なポイントです。

それを受けて、LinkedIn村上さんが最近知った、台湾での政策の1つが紹介されました。
「リバースメンターシップ」という、35歳以上のソーシャルイノベーターを大臣のメンターに任命するという制度があるとのこと。
更にLinkedIn村上さんの納得ポイントは、「ImmigrantとNative」という視点だったそうです。上記の台湾の政策が、なぜ35歳以下なのか、それはデジタルネイティブ世代だから、というシンプルな答えがあり、それ以前の世代もImmigrant(移民・移住者)として学ばなくてはならないという気付きに、村上由美子さんも「考えるべきことの本質を誰が分かっているのか?という視点の大切さ」に共感されていました。
今後、Immigrantという認識で物事に関心を持ち、Native(元々いた人)から学ぶ姿勢を持つことが、各分野において、時代の変化と共存する1つの術だと言えそうです。

村上さん1

●日本に必要なハイブリッドと付加価値

働き方や人材施策に関するテーマでは、日本に合った形で各国との競争に優位性を見出せるのでは、という前向きなディスカッションも展開されました。
よく話題や比較となるアメリカのシリコンバレーでも働いた経験のある村上由美子さんは、シリコンバレーの人材流動は行き過ぎているという印象も持っているとのこと。
長年の文化的背景も違い、長く企業に勤めている人が多い日本だからこその、下記の提案も印象的でした。

長期的視点での人材への投資やコミットの可能性を探る
・ジョブ型にシフトしてハイブリッド人材を目指す
・短期的な人材の使い捨てを加速しない
・米国だけでなく、欧州(ドイツ・フランス)の施策から学ぶのも現実的

この例に上がった国、フランスについては更に詳細な事例が話題に上りました。
エンジェル税制という、ベンチャー企業への投資を促進するためにベンチャー企業へ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う施策により、個人が250ユーロ(約3万円ほど)前後から投資できる制度が普及しているそうです。
コロナ禍でクラウドファンディングも加速している今、日本でもこの施策への柔軟化が期待されます。
▼日本でのエンジェル税制の詳細は、下記にてご確認ください。
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/angel/index2.html

また、日本の生産性の課題にも、興味深い内容がありました
それは、日本の平均労働時間は短くなっているということ。
しかし生産性が向上していない理由には、アウトプットの付加価値が上がっていないから。その改善には今ある価値に新しさを加えられることが、やはり求められるとされました。ではその具体策には何が必要なのか…

●VUCA時代の意思決定力に必要なものは?

ここまでの話を通して考えると、この問いの答えは自然と出てくることに気付きました。
このVUCA時代は不確実性が特徴です。
だからこそ、自分の視野や価値観以外を取り入れられること、その為のアイデアを出してもらう場を作ることが、具体的なアドバイスとして示され、それが実現できるかどうかで、将来に差が出るとのこと。
終盤の参加者からの「決断の時の重要な基準は?」という質問にも、いかに多様な意見が取り入れられる仕組みがあるか、をしっかり確認すること、との答えがありました。

これからは考え方の理解だけではなく、具体的な仕組みづくりを必須と出来るか、それが企業・個人を問わず意思決定に大きな影響を与えそうです。

皆さんの周りには、「多様なアイデアを出してもらう場」があるでしょうか?

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