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First Step #3 専業主婦後、あなたはどう生きる、シンシアのグッドモーニング with Yoko Chosa(Robert Walters Japan, Manager) 「9回転職。50代になったある日、20代で経験したリクルーターの仕事に再チャレンジ! 」 Report by Yoko Ukai

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第3回のゲストは、Yoko Chosaさん。留学でイギリスに渡り、現地で就職、帰国後も含めて外資系企業を9回転職した経歴を持つ。現在、イギリスの人材紹介企業 Robert Walters Japan の東京支社で、マネジャーとして活躍している。
今回は、彼女の転職ストーリーもさることながら、リクルーターとして数多くの面接・採用を手がけてきたYokoさんならではの、専業主婦の採用最前線&アドバイスにもスポットを当てて紹介したい。
いま、企業ではどんな人材が求められるのか?専業主婦から復職するための秘訣は何か? お見逃しなく!

●イギリス留学後、現地で結婚出産。転職4回

短大卒業後、英語を学びたくてイギリスに留学。22歳で結婚し、ビザを取得したのを契機に住友海上火災の現地法人に就職した。まだワープロすら普及していないこの時代、セクレタリー採用での仕事をこなしながら、先端のOA機器のスキルを習得した。

1年が過ぎ、一人前の自覚が出始めた頃、マーケットの給料に疑問を感じ、人材会社の JAC Recruitment の扉を叩いた。と、こういう点が彼女の言う「運のよさ」なのだろうが、担当者が奇遇にも同じ高校出身だった。すぐに気に入られ、そのまま同社に転職。ここでの経験が、のちに50歳で思い定めた天職、リクルーターの原点となったのである。

しかし、その1年後に妊娠。離職した。理由は「よい母親になりたかったから」。その一方で仕事への思いも捨てられず、結局、1年ほどで復職を果たす。
新しい職場は、長期信用銀行の証券会社 LTCB インターナショナル。子育てを考え、残業がないことを条件に、社長秘書として雇用された。だが、この会社環境は、彼女曰く〝ザ・日本〝。身につけた英語を使うチャンスも少なく、再び転職。ゴールドマンサックスで、債券部のアシスタントとして働き始めた。
この間、子育てはチャイルドマインダーの力を借りた。「近所には、自宅で預かっている人もいて、おかげで帰宅が遅れても安心して頼むことができました。幸運だったと思います」

30歳で2人目の子どもが生まれてからは、さすがに身動きが取れなくなり、専業主婦に。ほどなく3人目が生まれ、その後4年間、彼女のキャリアはいったん途絶えることになった。

●日本に帰国。子どもを養うために仕事再開

Yokoさんが帰国を決めたのは、34歳のときだ。このままイギリスで暮らすのか? 長いレンジで考えると、迷いが生じた。できれば、両親の近くにいたい。日本で死にたい。夫婦で話し合いを重ねた結果、暮らしたい場所を優先することを決めた。

幸い、夫が日本での就職先を見つけてきた。しかし、夫の給料だけで、子ども3人を養うことは不可能だった。彼女に、専業主婦を続ける選択肢はなかったのだ。「派遣」を条件に仕事を探し、採用されたのがシティバンク。「単調な仕事で、9時~17時勤務jがよかった。自分で考えたり相談を受けるような仕事では、責任が生じます。派遣にはその負荷がない。割り切りました。せめて一番下の子が小学校高学年になるまでは、と」。

とはいえ、派遣という立場は不安定だ。「派遣3年の壁」と言われるように、3年たつと同じ職場にい続けることができない。不安が頭をもたげてきた。上司に尋ねた。「頑張れば、この先、正社員になる道はありますか?」。無理だと即答された。理由は、35歳を過ぎていること。そして、こうも言われた。「お子さんがいるのに、なぜ?」と。悔しかった。

3年が過ぎて異動が決まったのを節目に、再び転職を決意。「同じ派遣であれば、家に近いところで働きたい」というのが動機だった。

新しい職場は、アメリカのラッセルインベストメント。
すこぶる居心地がよかった。逆に、ここにいると、伸びないのでは?と思うほど。だが、彼女は気を緩めることなく、与えられた仕事は、スピーディーに丁寧に、そして気配りを心がけて自分の仕事に励み、信頼を獲得して、とうとう正社員に登用された。ところが、その一年後。リーマンショックで職を失う。42歳だった。

失職中、彼女は悶々としながら考えた。アシスタントや秘書のままでいいの? 私の長所は何なの? 自信を持って得意と言えるものはないの? 考え抜いて、自分に出した答えは、「今までで一番楽しかった仕事をしよう」。目標は定まった。絶対、リクルーターになるのだ。私には、それができる。自分を信じた。

リスタートの第一歩は、UBS NA。人事の仕事に派遣で就いた。数ヶ月後には、直接契約のオファーをもらったが、アシスタントの仕事に飽き足らなかった。そして、この頃、彼女は離婚という大きな決断もしていた。

その最中、モルガン・スタンレーの派遣デスクを委託されているパソナから、テンプデスクをやらないかと声がかかった。契約社員から嘱託へと徐々にステップアップするうちに、モルガン・スタンレーから直接、正社員のオファーをもらった。4年間頑張った。しかし、それは希望した人事の仕事ではなかった。
「大きい会社ですし、私はソーシングチームのジャパンヘッドという役職にも就いていました。でも、仕事内容は、ひとことで言うと経費削減。私がやりたかったのは、人事の仕事、リクルーター。20代の頃に経験した、仕事を提供して感謝してもらえるという、あの喜びが欲しかった

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●51歳、自分に選択権を持つと決めた

この宿望を果たしたのは、51歳。大手外資系のリクルート企業、ロバートウォルターズにたどり着く。現在のチームで上司である女性が声をかけてくれたのだ。ディレクターの面接を受け、その人柄にも惹かれた。「一人の人間として、あなたがやりたいことは何ですか?と、率直に聞いてくれました。この人と仕事をしたいと思いました」。

実は、この時、Yokoさんには数社からオファーが来ていた。条件はいろいろだったが、ただ一つ決めていたことがある。「この年になって転職するのなら、自分が選ばれるのではなく、自分が選んでボスを決めよう」と。
自分に選択権があるというわけだ。それが可能になるくらい、Yokoさんは実績を積み、その中で確かな自信を育んでいたのである。

シンシアさんが尋ねた。「派遣や契約を繰り返して、自分のキャリアはそのまま終わっちゃうんじゃないかって思ったことはない?」
「もちろん、あります。正社員と同じ仕事を、それ以上に頑張ってやってもお給料は少ないし、正社員になるチャンスさえ与えられないのかと悲しい気持ちになったことはあります。だから、リーマンショックで失職したとき、必死で考えました。私は将来どうなりたいのだろう。どんなライフスタイルを望んでいるのだろう。そのために、どんなステップを踏めば良いのだろう、と。
再就職をしようとするなら、このビジョンが一番大切だと伝えたいですね」。Yokoさん自身の体験だけでなく、百戦錬磨のリクルーターとして何万人もの人と接して来た経験に基づく、まさに実践的アドバイスである。
 

【番外1 シンシアさんからYokoさんへの質問】
<なぜ、正社員のオファーをもらえたか?>

シンシア : 派遣、契約社員から正社員へのオファーが結構あるけれど、その理由は何かしら?
ヨーコ : いい会社に恵まれたこと。上の人とも下とも仲良くしていたこと。私、八方美人のようなところがあるんです(笑)。派遣の間は、5時で仕事を終わらないといけないので、その範囲内で頑張りました。それを、見ている人は見ててくれた。短時間でよくやってくれると感謝してもらって。ラッセルの時は、正社員に転換してもらいましたが、私からすると、会社のことが大好きで片思いのような感じだったんです。だから、自分ですごくアピールしたんです。こんなこともできますよって。それで、何回かのプロポーズの末に両思いになったという感じ。
シンシア : アピールって具体的にはどんなこと?
ヨーコ : 例えば、集計してくださいと言われたら、その数字だけを追うのではなく、グラフにしてみたとか地域別にしてみたりとか、何かの付加価値を加えるんです。最終的にそれが使われなかったとしても、私はここまでできるんだとアピールする。毎回やってるとイヤミなので、小出しにちょこちょこやってみる(笑)。上司のタイプを見極めながら、ですけど。
シンシア : なるほどね! 私のアピールは、人が手を挙げない時にこそ手を挙げる。みんながやりたくない仕事に手を挙げるってことね(笑)。

<派遣社員としての悩みは?>
シンシア : 自分だけでなく採用場面での経験から、派遣に対する理解は他の人よりもあるわね?
ヨーコ : もちろん。私も正社員と同じ仕事をしてるのに、なぜ給料が少ない? とか、ボーナスも何もないのにと思ったこともあります。社員より目立ってしまってはいけないんじゃないかとか。女性が多いと、お互いのマウンティングがあったりもするので、自分の立ち位置を気にしながらやっていました。問題が出るのは、上司とうまくいかない、他の女性がいじめる、仕事を教えてくれないなど。そこは共感できるので、アドバイスできますよ。

<現在派遣でキャリアアップしたければ、何をする?>
シンシア : 資格を取っておくと、有利なのかな?
ヨーコ : 資格取ることはいいですね、向上心がある人はやっています。しかし、同時に私の経験で言うと、大切なのはコミュニケーション能力ですね。どんなに仕事が早くて正確にできても、黙って仕事する人はアピールできる場所がない。仕事だけじゃなく、一緒にランチをしたり、普通のミーティングでも意見を言える人の方がいいです。徐々にアピールして、みんなにファンになってもらうことが大事。
シンシア : あっ、またアピールですね(笑)?
ヨーコ : そうですよ。自分の仕事が終わりました、でも、終業まであと30分あるというときに、何かお手伝いすることはありませんか?と。そういう気配りこそ大事なんです。
シンシア : 派遣で3年ごとに変わる場合、キャリアを作るコツはあるの? 仕事の選び方とか、業界は同じとか? あなたはずっと金融ですね?
ヨーコ : 金融の中でも、秘書をやったりセールスアシスタント、ソーシングをやったり。業界は同じで職種を変えていくというパターンと、職種は同じで業界は変わる。どっちでも道はあります。ただ、何かのスペシャリストになろうとするのであれば、子供が生まれる前にある程度のイメージは作っておく。毎日の忙しさ、経済的理由で、揺らいでくるので、まずは自分の軸を持つのが大切です。

<面接で採用されない人って?>
シンシア : 多くの経験から言って、採用されない人の特徴ってありますか?
ヨーコ : 独りよがりな人ですね。自分には10年のマーケティングディレクターの経験があるから、どうしてもその仕事をしたいとか。それを全面的に出しすぎて、スタート地点のレベルを変えることができない人は難しいです。金銭面も仕事内容も、レンジとかレベルとかも、一度リセットできる人が強いです。そしてまず、あなたは、会社のベネフィットになれるかどうかを自問してみないと。会社が欲しいという人材は面接の時に言われているし、会社に入って2か月もしてくると、分かってくるはず。どんな人が好かれて、どんな人がプロモーションされているか? そこに自分を持っていかないと。ペイペイの派遣で、いきなり思うようにはならないです。
シンシア : 要するに、下積みが必要ということね?
ヨーコ : 派遣のくせにとかいうつもりはないですけど、上の先輩たちを立てながら仕事しないと。特に、日本社会では色々言われます。その的にならないようにして、一生懸命なところを徐々に見せていくしかない。

<仕事と家庭の両立は?>
シンシア : 専業主婦をしていた3〜4年以外は、両立してきたという感じなの?
ヨーコ : 両立したとは思っていません。キャリアでは、確かに苦労はしたけど現在はマネジャーとしてのステイタスもあるので、成功したと言えるのでしょう。でも、子育てに関しては、毎日ちゃんと料理したり掃除したりとか、まったくできなかった。子ども3人に、あまりあてにならない夫(笑)。犬もいた。家の中はごちゃごちゃで、食器は重なり、土日までは何もできない。ただ、子どもが騒いで毎日がカーニバルのような中、ともかく今は食器洗い、今は掃除、と無心になってこなしたことで、忍耐力と集中力はつきましたね。

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【番外2 参加者からYokoさんへの質問】
Q : 転職の壁について。年齢、ブランクについてどう考えればいいですか?
A : 日系と外資の違いはありますが、外資の立場でいうと、まず40歳が採用するかしないかの壁。次が50歳です。経理や翻訳などのスペシャリストなら、年齢の壁はそれほどきつくはないけど、アシスタント、秘書などで入る場合は、「そこの上司よりも若い人をお願いします」と言われます。ブランクは、5年。それ以上だと難しくなります。もっとも、ブランクはあるけれど、話してみて、この人は!という人間力を感じたら、売り込むことはできます。
シンシア : そこは、意見あり! 私は、自分はワケあり商品だと思っていました。ワケありは、通常ルートで仕事を探せないの。だから、こういうコミュニティー(「グッドモーニング、シンシア!」)に入って、仕事のきっかけを作るしかないのね。私は常に動いていて、私のところに入ってくる情報をコミュニティーに発信しようと思っています。ぜひ、メンバーになって、ここからのメールをチェックしてください。ワケあり、と自覚していれば、ワケありなりの探し方があるんだから。

Q : 派遣時代はどう乗り切ったのですか? メンタル的に弱ってしまうことはなかったですか?
A : これ、ちょっとお見せします。私の5か条を書いた紙を、鏡にずっと貼ってたんです。1 私は運がいい。2 私は実力がある。3 私はいい人たちと出会う。4 私は痩せられる 5 私は幸せになる。今、4だけができていません(笑)。私は離婚もしましたし(44歳)、失業も経験もしましたし、どん底にいたんですが、とにかくこの5つを自分に対して言い切って信じるようにしていました。とにかく、いい気を自分に入れて、何事もめげずに頑張る気力を保ち続ける工夫は必要ですね。

Q : これから再就職したいので、専業主婦の間にやるべきことを教えてください。
A : ボランティア活動はいいですね。資格も、取得するに越したことはないですが、勉強したという事実が大切。あと、PCスキル。昔できても、今はできなかったりしますので。
シンシア : またまた意見あり! 確かに、Yokoさんのところに行く人は,
PCスキルがないとやっていけないんです。でも、私みたいに現場から入ったら、現場では現場が使うシステムがある。そこで大切なのは、学ぶ意欲。それさえあれば、やっていけます。

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