見出し画像

ゲームで考える野球采配論①ー投手編ー

始めに

 『プロ野球スピリッツ2014』を味わい尽くしていた話はこのnoteを遡って頂ければわかるのだが、PSPにも寿命というのがあって物理的にプレーが不可能な状態になってしまった。そこでどうしているかというと『プロ野球スピリッツ2015』をPS-Vitaでプレーしている。私は阪神ファンでありながら2014とは違う球団を、と千葉ロッテマリーンズのチーム運営を行っている。
 『プロ野球スピリッツ』シリーズは今やソシャゲ全盛時代でプロスピAばかり聞くが、本来は様々なモードが体験できる家庭用ゲームである。私は数あるモードの中でもペナントモードを好き好んでいる。
 現在PS4などでプレーが出来る2019や2021では選手の年俸が決められたり、シーズンデータが積み重ねられたりするのだが、そのひとつ前のシリーズなのでシーズンデータの一覧表は存在しないし、オフシーズンも最低限の要素しかない。ただそれでもしゃぶりつくせるゲームなのだ。というわけで『プロ野球スピリッツ2015』を用いて野球理論を語っていく。

2019ロッテは辛くも優勝できた

2019福浦ロッテ・投手シーズンデータ

先発投手

鶴井秀人(28)
27試合 3.69 11勝7敗 166回 123奪三振
野村祐輔(30)
24試合 3.69 10勝6敗 158.1回 168奪三振
藤岡貴裕(30)
23試合 3.47 8勝7敗 153回 151奪三振
大谷智久(34)
18試合 3.71 6勝8敗 114回 122奪三振
石川歩(31)
14試合 4.55 3勝6敗 85回 80奪三振
大嶺祐太(31)
9試合 3.47 1勝2敗 46.2回 51奪三振
由規(30)
3試合 2.51 0勝0敗 14.1回 9奪三振
田口麗斗(24)
2試合 12.46 0勝2敗 8.2回 7奪三振
寺原隼人(36)
2試合 7.71 1勝1敗 7回 5奪三振

スウィングマン

涌井秀章(33)
31試合 4.40 6勝7敗9HP0S 94回 76奪三振
田中英祐(27)
20試合 4.91 1勝4敗 66回 68奪三振

リリーフ

野元政隆(26)
56試合 2.09 8勝0敗18HP0S 69回 72奪三振
オスーナ(24)
67試合 0.70 4勝2敗46HP6S  64.2回 78奪三振
益田直也(30)
54試合 2.18 1勝3敗5HP40S 53.2回 44奪三振
南昌輝(30)
37試合 2.56 4勝0敗 7HP0S 37.1回 48奪三振
西野勇士(28)
46試合 2.65 7勝1敗 31HP1S 37.1回 48奪三振
中後悠平(30)
39試合 3.00 0勝1敗10HP0S 36回 25奪三振 
内竜也(34)
29試合 2.45 4勝0敗15HP0S 25.2回 31奪三振
フェリペ・リベロ(28)
24試合 6.85 2勝2敗10HP0S 23.2回 30奪三振
石川直也(23)
6試合 8.22 0勝0敗 7.2回 6奪三振
久古健太郎(33)
6試合 5.06 0勝0敗 5.1回 6奪三振
加賀繁(34)
9試合 3.60 0勝0敗3HP0S 5回 4奪三振
公文克彦(27)
8試合 8.31 0勝0敗4HP0S 4.1回 7奪三振
松永昂大(31)
8試合 2.25 1勝1敗3HP0S 4回 3奪三振
山本哲哉(34)
2試合 0.00 1勝1敗 2回1奪三振
()内は年齢

 以上が2019年に一軍で登板した投手の一覧。
 先発のみで一年間回った投手と、中継ぎとしてもシーズンを過ごした選手で便宜上分けてみた。要は涌井と田中にはロングやビハインドでの回繋ぎも役割として担ってもらっていた。

いびつな六角形だ。ブルペンで支えた勝利。

先発に関する理論

エース論

 「エース」とは、そのチームで一番良い投手のことを指す。高校野球でいえば背番号1をつけ、地方大会から甲子園まで投げぬく、といった存在だ。投手の分業制が進む昨今だが「エース」の存在意義は変わらないのではないだろうか。各球団にエースはいるし、日本のエースという言い方もする。左右のエースといって右投手と左投手で一人ずつ設定したりもする。

 さて、エースとは何を基準に選ばれるのだろうか?一般的にはその投手が残してきた成績に基づいているだろう。私は阪神ファンなので阪神の選手で例えるが、2022シーズンでは青柳晃洋だろう。ただ、それはシーズン終盤に差し掛かっての話。矢野監督は西勇輝をエースとして推していたし、開幕投手は藤浪晋太郎だった。青柳の開幕直前での離脱も原因だったが、チームが主力としての活躍を複数の投手に求めていたのは事実だ。

 エース不在の期間中、阪神タイガースは負け続けていたわけだがこれは特殊な例だ。青柳がいなくとも勝たなければならなかったし、代役かもしれないが誰かにチームを託していたはず。
 それがゲームメイクに長けて実績もある西勇輝だったのか、復活への願望を込みにしての藤浪晋太郎だったのか。ルーキーイヤーで10勝した左のエース候補伊藤将司だったのかもしれない。
 ただ、結果として阪神は負けまくったのだ。連敗を止めたのは西勇輝だったが、青柳が帰ってくるまで負け続けたと言って差し支えない。
 だから阪神ファンは青柳をエースだと言った。チームも青柳で勝とうという雰囲気を作っていった。そう、青柳がエースなのだ・・・チャンチャン。で終わってはこのnoteを書き始めた意味が無い。先述したゲームの成績をもとにここから考えていきたい。

 まず、シーズン終了後の成績からエースを探してみよう。勝ち星信仰からいけば11勝を上げた鶴井か。2016年ドラフトで一巡目指名を受けたプロ3年目は、2017年3勝、2018年9勝と着実にステップアップし2019年、念願の二桁勝利を上げチームの優勝に貢献した。大卒社会人として申し分ない働きといっていいだろう

三年目にしてチェンジアップを覚えたが空振りが取りにくい。

 だが、鶴井秀人はエースなのか?実は2019シーズン開幕投手は石川歩だ。石川は前年度16勝を上げる活躍を見せチームの日本一に貢献。年単位で選手を判断したときに、まだプロで二年間しか実働していない鶴井と比べ石川や涌井といった存在の方がエースに近い。
 ここでやはり何をもってエースに指名するのか?という問いにたどり着く。勿論選手全員にドラマや人生があり「選手個人皆エースなのだ!」としてしまえば簡単なのだが、野球もスポーツだ。シビアな目も時には必要。ここでいうシビアというのは指標に限らない。いわゆる「精神的支柱」のようなチームスポーツならではの要素も含まれる。
 年齢による経験値という点では石川、涌井、大谷に野村や藤岡が追随する形。決して鶴井をエースだと言いたくないわけではなく、チームにおける信頼感は誰が一番か?ということだ。エースというのはクライマックスシリーズ第一戦に送り出したい投手だと私は思う。
 「エースはやっぱりセベリーノじゃなくて田中!」という知る人ぞ知る文言が示すように、球速があるとか若いとかでは測れない要素も野球というスポーツには不思議な事に残っている。

whipが高いのはゲームが下手だからです。

 さて、判断が難しくなるデータを持ってきた。上の表を見る限りローテーションピッチャーとしての安定感であれば、間違いなく石川歩だ。野村や涌井も安定して活躍している。2016オフに横浜に移籍した唐川のポジションをしっかり野村が埋めた格好だ。近年QS率も注目され始めているので載せてみたが、これを切り取ると野村か大谷がエースにふさわしい。ゲームメイクに定評があると言えるだろう。(計算してないが野村はたぶんFIPというかBABIPが悪い)

中継ぎで20試合に登板。中継ぎならスロースターターも軽減。

 つまり「エースを決める」のは想像以上に難しいということだ。現実世界に目を向けても今年の読売ジャイアンツで見れば、戸郷翔征をエースにしたいチーム状況をひしひしと感じるけれども、菅野智之が結局はエースなのだろう。自他共に認めるエースに、辿り着くための道のりは険しい。

 ちなみに私は、クライマックスシリーズファイナル第一戦のマウンドには大谷智久を上げた。シーズンでは6勝だがQS率を見てもらえればわかるように、試合は作ってきた。実は大谷、開幕ローテに入っていたものの春先に失敗が続き二軍落ちしていた。オールスター明け一軍に帰ってきて自力を発揮しローテーションに戻ってきたのだ。

中継ぎ適正があり便利な投手。2シーム、カット、フォークが良好。

 結論としては前半戦のエースは鶴井で後半戦のエースは大谷だったと言える。前半と後半で成績が異なる選手も、珍しくない。次の項では前半戦に失敗した先発投手をどう起用していくのが良いか、考えていきたい。

後半戦を見据えた戦力

    先ほどの表を見ていただければわかるが、大谷や石川には実績がある。勝負所に力を持っていく、という流れがゲームにおいて関係があるとは思えないものの、実際のスポーツでは考えられる要素だ。
 一軍→二軍→一軍というサイクルを一年というスパンで考えたとき、ミニキャンプや休養を長くとるスケジュールを組むことが出来て、若手の育成やベテラン陣のコンディション、パフォーマンスには影響しそう。ゲームでよくある【絶好調】の真っ赤な調子君が出てきた時だけ起用することで選手にもチームにもプラスの結果がもたらされそうだ。
 「最終的にはお前の力が必要だ」というメッセージの元モチベーションを維持したまま二軍で調整が出来るのでは、と素人ながら思う。NPBにはセプテンバーコールアップはないけれども、どういう陣容で最終盤を戦うかは不調の選手も含めて総合的に考えていくのがよいだろう。
 結果好投していた大嶺を一時的に外し、大谷をローテーションに戻す選択となったが、ローテーションは五人、六人に限らないという例だ。

先発投手は何枚必要なのか?

 先述した成績データの中で先発起用された投手は11人。現実世界と比べるとセリーグだと中日は14人、阪神は13人、巨人と横浜、ヤクルトは12人、広島は10人なので、平均よりは少なめか。ただ誤差の範囲だろう。多くのチームが十数人に一軍での先発登板機会を与えている。

 ローテーションが基本六人だとして(私は五人で回したが)その倍の数が起用されていると考えれば多いか。多くのチームは一人か二人柱となる先発投手がいて、カード頭に登板させる。
 現実世界に例えるとするなら西武ライオンズがわかりやすく、松本航と高橋光成をカード頭に持ってくるわけで、表ローテと裏ローテはそこを中心に回すだろう。
 そう考えたときに、三連戦のうちの二日目か三日目、一週間の中で一試合か二試合お試し枠を作る事が出来る。プロ野球は三連戦が40回以上ある計算なので、つまりは40回のお試し枠が出来上がるというわけ。ローテPが六人揃っているチームなど稀なので、間違いでもないだろう。
 そんな単純計算でうまくいくわけでもないが、ローテーションピッチャーとしてギリギリのラインにいる投手と二軍から上を目指す投手には40回から50回のチャンスがある、むしろそれくらいしかチャンスがない。
 2試合、3試合先発としてのチャンスをもらった投手が出れば、それだけ二軍の投手のチャンスは減る。一軍出場資格がある選手がロースターに最大70名というNPBだからこその考え方かもしれないが、境界線の投手というのはそれだけ競争も激しく大変そうだ。もし一軍レベルの先発投手が5人いるチームならこのお試し枠は20回に減るわけだ。

 さてそんなこんなで、2019ロッテを見ていこう。開幕当初【石川、涌井、鶴井、藤岡、大谷】で始まったローテーション。お試し枠は20回あるかどうかだった。しかし、ここから石川、涌井、大谷がそれぞれ崩れ、開幕を一軍で迎えた投手の中で規定投球回にたどり着いた先発は鶴井と藤岡のみ。色々な事があるので机上で語るだけでは難しい。それぞれ穴を埋めた野村、大嶺、田中といった所がイニングを稼ぎ、野村に至ってはそれから一年完走。大嶺田中も合わせて90イニングほどを消化し、チームの戦力になった。よってこれではお試し枠扱いではない。【お試し枠】はそれ以外の投手だろう。

 ロッテにおいて不確定だった先発の枠には由規3試合、田口2試合、寺原2試合の7試合が充てられたと言える。たまに野球を見ていて夏場ローテーションの谷間を埋める投手が出てきたりするが、この7試合はそのポジションに該当する。高水準の先発投手層において隙は7試合だったという話にもなるのだが、おそらく一般的に見ればこの7試合というのは少なかったに違いない。

ロッテの先発投手陣が育っていない証拠

 よく「二軍における投球回の割り当て」のような記事を目にする。そのチームの育成方針がわかるデータだが、その点でいくと上記は寂しいデータ(2年分)だ。36歳の寺原はスライダーが平均以上の球威を持つので機会を与える流れにはなるが、今年で引退するかもしれない選手にお試し枠を使ってしまったことになる。
 角中勝也FA移籍の人的保障として田口麗斗を指名したフロントの意向はよくわかるというもの。ただもう少し田口に登板機会を与えてもよかったか。現実世界の田口とは少しミスマッチしてはいるものの、能力はそれなりに整ってきていた田口を一軍で試す価値はあった。左の先発が藤岡しかいない中、田口の扱いを来年以降考えた方がよさそうだ。

CPUはスタミナを上げる癖がある。ロッテに来てから「奪三振」を習得し、ローテ入りを目指す。

先発育成論、中10日ローテなど

 ヤクルトの奥川恭伸、千葉ロッテの佐々木朗希といった高卒の有望株達はしばしば中10日のローテでイニングや球数を目安とした起用法をされる。
 まだ身体が出来上がっていない状態で無理をさせることは勿論できないので、これはいい方法だろう。これも先発の人数が一般的なローテーションよりも数名多くなるやり方。それだけの価値があると思わせる素材も凄いし、ある程度余裕をもってローテを回せるチーム力の高さともいえよう。ロッテの佐々木朗希が楽天生命パークでボコボコにされ、本拠地では抑えている点も、その原因などは置いておいて「本拠地でのみ投げる」のような采配も今後悪くはないかもしれない。

 さて前欄で私が運用してきたロッテの育成力の無さが露呈したわけだが、一時このような中10日ローテを考えたりもしたのだ。それは佐藤由規を調子のいい時だけ先発させるというもの。結果3試合のみに終わったが律儀に毎度登録を抹消する丁寧具合だった。ただやはり、いつ調子がいいか図るのも難しいし、ローテの谷間とタイミングが合うかもわからない。ゲームで中10をきっかりやるというのもめんどくさい(そこはやれ)。思うようにはいかなかった。

岩下、宮崎とのトレードで獲得。横の変化を生かす配球を考えたい

 【育成】の点では登板間隔だけではなく、選手の特徴を知ることも大事。由規の場合球速はあるものの球威がなく、空振りを取れる変化量の球種も少ない。縦割れのスライダーというよりは、カットボールやチェンジアップを持つ。要はスピードのあるゴロピッチャー、ということになる。つまりは彼の登板試合では内野の守備力を高めるなど、サポートする事は多岐に渡っただろう。これを全ての投手に毎試合やるとなればやはり大変。今のNPBがどれほどやっているか不明だが、大変な仕事だとは感じる。

中継ぎに関する理論

クローザー論

ゲームでは圧倒的な守護神である益田直也さん

 毎年クローザーとして君臨するKing of Closerの益田。それなりの能力な上に覚醒したので、手を付けられないレベルにはなった。2019年彼は3敗したが、クローザーの「負け」について少し考えてみよう。

 まず、クローザーは負けるものだ。滅茶苦茶なことを言っているようだが、どんな凄いクローザーであっても一年間無失点で乗り切れるわけではない。セーブ失敗の一回や二回は許容範囲だ。ではこの失敗が何回になれば、クローザーを考え直すのがいいだろうか。
 一般的にセーブ成功率が八割以上あれば合格点な気もするが、二割負けたり追いつかれたりするのはキツすぎる。ハードルを上げて「成功率九割」としても数字は素晴らしいものの、50試合に投げて5回失敗する計算だからこれも辛い。
 クローザーはかなり損なポジションだとわかる。
 さてそんなクローザーの適正は何か。よく聞くところでいけば

  1. 球速がある、空振りが取れる

  2. ウイニングショットがある

  3. コントロールがボチボチ、四球を出さない

 この三要素があげられるか。阪神が藤川退団後、久保康友をクローザーにした理由に「クイックが早い」というのがあったが、これは付加価値ではあるが必要要素ではない。まずランナーを出さないことの方が先決だ。
 何度も言われていると思うので申し訳ないが、2022シーズンの阪神タイガースは岩崎優をクローザーにしている。元々九回という特殊なイニングに向いていないと思うが、残念ながら上記の三要素を全て外していたと思う。
 慣れない仕事場やイレギュラーなチーム状況も影響し①球速が無い(145がやっと)、②ウイニングショットがない(スライダーが甘い日が多かった)、③四球を出す(低めの伸びある直球の出し入れが不出来)という有様だったと思う。ボールが高めに集まり、スライダーのキレもいまいちだったので、馬鹿みたいに四球は出さなかったがその分打たれた。被打率は三割をしばらく超えていたと思われる。whipも1.30を超え不安定な登板が続いた。
 やはりクローザーとして苦しいとセーブ失敗は増えてしまう。岩崎は9月17日時点で五敗を喫している。

 さて、福浦ロッテの益田直也はシーズンで3敗だ。現実世界と違ってオスーナのセーブ(6)は益田の怪我によるものだったが、私は中盤から終盤にかけて何度も抑えを変えようか考えてしまった。
 益田のwhipは1.19と優秀でコントロールも良好。スライダーとシンカーの2球種がウイニングショットで質が良い。おそらく今年ロッテファンが見ている益田の1.5倍くらいは良い。

覚醒の結果変化量や球威が増し、ストレートとスライダーで勝負が可能に

 ただ益田の3敗が命取りになる可能性は否定できなかった。これは指標で測れない「勝負所」というやつだ。ライバルとの一戦だったり、逆転した末の抑えだったり。クローザーに求められるのは勝負所でのセーブ成功だと思う。一年通して成功し続ける事が難しいからこそ、負けられない一戦を必ず凌げるかどうか。幸い、シーズンの最終盤益田の調子は落ちなかった。 選手のスペックとして「奪三振率が高く圧倒できるピッチングが出来る」というのは抑えの要素だけれども、あくまでもセーブの可能性を上げるだけ。人間がやる以上、勝負所を見定められるような経験値もある程度クローザーには大切だろう。

ゲームでも無双したロベルト・オスーナ
78奪三振は主にチェンジアップ。現実同様カットでもカウントが取れるし、連打を許さない。

勝ちパターン、6回~8回という考え方

 抑えを代えたくなる、という話をした。しかし抑えはチームの顔。そうそう簡単には代えられない。ということで、それ以外の勝ちパならどうだろう?一般的に勝利の方程式とは7回、8回、9回を担う投手を指す。右投手三人の勝ちパターンもあれば、左右揃う勝ちパターンもある。それぞれチーム状況によるが、ブルペンの柱になる選手たちだ。
 左と右がいるのなら、相手打線との兼ね合いを見て試合ごとに流動的に使うことも出来るし、いつもは八回を担当していた投手が調子を崩していた場合、下位打線にあたるであろう七回に繰り上げて登板させたりも出来る。セットアップはクローザーと比べて、流動性があると言えるだろう。

 さあでは、2019ロッテに目を向ける。以下は主な勝ちパターン。

主な勝ちパターンは西野、オスーナ、益田の三名だった

 西野31ホールドポイント、オスーナ46ホールドポイント(最優秀中継ぎ)という所で、数字を見ればこの二人が勝ちパターンだった。
 ただ御覧のとおり、数字だけ見れば皆優秀だ。南も内も投球回以上の三振を奪い、コントロールが改善した中後(天然記念物か?)もいた。
 益田が離脱した二週間は、内竜也がセットアッパーとなったし、流動的だからこそブルペンスタッフ全員で勝ちを目指せた。31HPをあげた西野勇士は球自体に威力があり、スライダー、カーブ、フォーク全ての球種がハイレベル。奪三振能力にも優れ、ピンチの際の火消しも担当してもらった。

Max154という球速に縦のスライダーが魅力。カットボールでカウントも稼げる。
4年間で122試合に投げ47HPを記録
2015プロスピロッテでは最強クラスの中継ぎ
5年間194試合に登板し106HP

 ただ問題なのはブルペンスタッフにおいて敗戦が濃厚な試合に投げる投手がいないことだ。スタッフは八名程随時確保していたが、そのうちの七名が勝ちパターンレベルということになる。選手によっては、5点ビハインドの展開でも、2点リードの展開でも投げる起用方法になってしまうし、先発が早い段階で降りた時から延長戦まで様々な場面を見据える必要がある。 野元、南あたりがそのロングリリーフなどの役割を担ったわけだが少々勿体なかった。彼らはストレートに力があり方程式入りも考えられた投手だ。「なんぼあってもいい」中継ぎ投手が、本当にいた時困るという奇妙な例。 南はストレートに球威があったため「右打者へのワンポイント」という起用も後半戦はあった。中後と二人で1イニングといった具合だ。豪華な投手リレーが出来るのはブルペンスタッフ充実の証。完投数がチームで10回のみだったのも継投に自信があったからだ。 これはゲームだからいいのだが、もし現実世界であれば野元や南といった選手の調整は極めて難しい。いつ出番が来るかわからない中で肩を作るというのは大きな負担。ブルペンでの投球練習も一年間の球数に含み、管理することが浸透してきている野球界で、選手の役割分担というのは複雑化していっているのだろう。

第二球種のストレートとフォークのコンビネーションが手厚い。
右の主軸に当てられる投手。
139試合に登板し33HP、奪三振率は驚異の10.54

中継ぎ投手のお試し枠

 先発ローテにおける「お試し枠」の話はした。ここでは中継ぎにおけるお試し枠の話をしよう。今回のようにブルペンが充実していると難しいが、実際このように粒ぞろいな事は稀。基本は二、三枠の空きがある事が予想される。それを埋める作業がシーズンの前半戦にはある。
 今回ロッテで中継ぎのお試し枠で登録された投手は6名。石川、久古、加賀、公文、松永、山本だ。ただそれぞれ、10試合も登板しなかった。ようは定着しなかったのだ。石川直也はまだ23歳とプロスペクトの立場でもあるから別にして、他の5選手は結果を求められる存在。そう、ここに現場担当者としての苦悩があるのだ。
 普通二軍で好調な選手は一軍で起用したい。先発かリリーフかようわからん起用(NPBではよく見るけど)はしたくないので、彼らの場所は中継ぎに限定される。しかし、起用するタイミングが少ないし起用したい選手は多い。
 この流れになってしまうと一度の失敗がその選手の命取りになってしまう。何せ代わりはいるというポジションだからだ。私はそれではちょっと面白くないような気がしたので頑張って変則的な投手の起用を増やしていた。
 フェリペ・リベロの不調も要因だが、左のサイドスローを三人起用。右のサイド加賀繫も起用した。実力、実績共にある彼らになんとか機会を、ということだ。これはもはや私のGMとしての好みなのかもしれないが。

他球団からGM権限で好みの選手を引き抜いている

 年単位で並べてみると、屋台骨として支えてきた左のリリーフエース松永の存在も見えてくる。2017シーズンはそれぞれが真価を発揮しているよう。松永は対左打者、加賀は対右打者の役割分担が出来ていた。
 しかし中継ぎは一度入れ替えると戻しにくいポジション。2019シーズンなどは南や野元の調子が落ちなかったこともあって、これらの投手の出場機会は減少してしまった。
 入れ替えが減るというのは、二軍で頑張っている選手のチャンスも減るということ。結果ストレート球威Cのクローザー候補星野大地の登板機会は0に終わった。2017シーズン15試合、2018シーズン10試合に投げステップアップをしたかに思えたが巡りあわせが悪かった。これは育成という点では整合性の取れていない、悪循環を生むモノとなってしまっている。

Max152の球威Cは魅力。元々抑え適正があるのもポイントで有望株

中継ぎ左腕の枚数・先発との兼ね合い

 変則左腕を誰かひとり定着させようという動きに出たロッテだったが、うまくいかず。結果中後が一人でワンポイントから1イニングまでやることになった。「スリーバッターミニマム」とかいう愚のルールから守られているゲームだからこそ、左投手は複数いると便利。現実世界のNPBもまだ汚染されていないので、いわゆる「マシンガン継投」は見られる。

コントロールがD,Eになれば使えるレベル。かなり重宝する。

 試合を見ていると一人から三人ほどが中継ぎには入っているか。時世柄ベンチ入り人数が特例で増えているので、今は中継ぎを手厚くできてもいる。 藤岡を5年間で2度中継ぎ起用しているのも、中継ぎ左腕の重要度によるもの。藤岡の使い勝手の良さに甘えて毎年色々な起用法を取ってしまった。 先発が充実していれば中継ぎに回すことが出来る。適応出来れば、という条件付きではあるもののLAD前田健太のセットアップぶりなんかを見れば、先発と中継ぎを行ったり来たりするような采配も一つではある。元々先発で回れる投手が1イニングを抑えることが出来ないはずがない。(結果LADがポストシーズンで勝てなくなるのはご愛敬)

中継ぎ育成論

 高卒でプロ入りした選手は、身体づくりのために実戦登板を遅らせたり、二軍で管理される。一方で大学や社会人からプロ入りした選手は一年目から即戦力として期待される。
 ドラフト順位関係なく、一年目から一軍で投げることが求められる大卒社会人組は結構シビアだ。投げなければ確実に年俸は下がるし、成績が出なければ三年持たない。裏を返せば高卒の投手はそれなりに猶予があるという事だが。
 アマチュアの頃から中継ぎ一本でやってきた投手は少ないが、プロ入りすれば自分の生きる道を見つけなければいけない。ブルペンという仕事場は結構良いと思うのだが、難しいところはあるか。
 調整法も先発とは大きく違い、球種なども変わってくるだろう。負けた時の方がニュースになる。実際WARも稼げないし、年俸も抑えられている印象がある。高給取りは実績を残したクローザーくらいだ。中継ぎ使い捨ての文化はMLBもNPBも変わらない。

 中継ぎは数をこなすしかない。経験値を積むためにも、実績にするためにもだ。数字という意味では一度悪化した防御率は、数を投げないと下げられない。
 先発投手以上に失点するダメージが大きい割には、抑えと同じで、年間通せば仕方がない事に何度か失敗してしまう。調子が悪い日も連投しろと言われれば、投げるしかない。悲壮感を持ちながら投げる中継ぎ投手も私は好きだけれども、本人からすればたまったものではない。なんせ戦犯扱いを受けてしまう。

 さて、そこで野元政隆の話。

新人王を獲れなかったのは痛い。
2017年秋のドラフトで外れ一位で獲得。即戦力精鋭ドラフトだ

 なぜ野元に思い入れがあるのか。こういうシミュレーションRPGをやっていると、「新人王を獲らせたい!」「引退セレモニーをしたい!」と踏み込んでチームの運営をするようになる。私たちは(私たち?)惰性でペナントを回しているのではなく、現実世界も含めて複数の野球世界を見ている。
 というわけで、野元は新人王を狙わせたし(結果は「該当者無し」)イニングを食わせまくった一年目だった。若干の暴挙だが何度か先発をやらせての成績だし、平井正史か久保田智之かみたいな成績になった。
 ただ、それだけの価値がある選手、能力のある選手だったことに疑いの余地はない。

入団当初から150キロを超えるストレートが球威B。
堂々のドラフト一位

 スライダーのコマンドが少々悪いものの、シュートが一定レベル。ストレートとフォーク、縦スラの三球種のコンビネーションが基本配球で、相手打者によってスライダーとシュートをコースで出し入れした。
 能力上、先発向きにも見えるが私はこの球種構成は中継ぎ向きだと判断したのだ。残念ながら年齢と☆の数が進んでいるために、能力の上昇が見込めないのだが、緩急ではなく球威で押せるところに魅力があった。

プロ初登板が抑えのシチュエーション。
これがとにかくやりたかった物と思われる。

終わりに

 プロ野球スピリッツの楽しさがこの記事で伝われば嬉しい。
 プロスピは育成ゲームだ。「Aランクの選手をコインで育成する」エセの育成ではなく、地道に能力を1ずつあげて、チームの優勝を目指すのが真のプロ野球スピリッツというもの。
 記事を書きながら、育成についてだったり起用法の問題点に少し気づく事が出来、大変有意義であった。また野手編も細々とやっていくが、この時間のかかる自己満足にお付き合いしていただいてありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?