ゲームで見る野球シーズン2020③ー野手編ー
①投手編
②捕手編
以上の通り2020シーズンもnoteを書いてきた。本稿は一番ボリュームがありそうな野手編である。
2020福浦ロッテ・内野手シーズンデータ
中村 奨吾(28)
130試合 .273(523-143)23本68点10盗
.292 .484 .776(出塁率、長打率、OPS)
草野 孝典(29)
123試合 .264(470-124)22本63点1盗
.295 .466 .761
川崎 宗則(28)
122試合 .310(364-113)3本23点21盗
.317 .453 .770
鈴木 大地(30)
85試合 .251(247-62)1本17点0盗
.280 .279 .559
今江 敏晃(37)
73試合 .267(217-58)6本29点0盗
.275 .410 .685
田中 広輔(31)
67試合 .263(175-46)2本17点6盗
.271 .406 .677
島井 秀浩(24)
91試合 .281(146-41)0本3点3盗
.281 .342 .623
吉村 裕基(36)
33試合 .240(96-23)5本16点0盗
.282 .479 .761
高濱 卓也(31)
11試合 .216(37-8)0本2点0盗
.216 .297 .513
ビヤー(26)
15試合 .167(30-5)0本3点3盗
.194 .267 .461
丸山 和史(20)
7試合 .200(20-4)0本0点0盗
.200 .300 .500
白川 浩也(19)
9試合 .176(17-3)0本0点0盗
.176 .235 .411
北條 史也(26)
2試合 .333(6-2)0本0点0盗
.333 .500 .833
石川 雄洋(34)
7試合 .273(11-3)0本2点0盗
.273 .364 .637
出場が無かった選手は、内野手に関してはいなかった。
開幕スタメンについて
2019の開幕スタメンはその時に記したが、2020もさほど変わり映えのないメンバーでスタートした。昨年ブレイクした淺間から始まり、草野デスパイネの主軸に繋がるオーダーだ。
横田慎太郎を四番に据えてチームの一つの指針にしたことも新しい起用だが、捕手は小湊、ショートは川崎とこれまでと大きな変化はない。
唯一大きく変えたと言ってよいのは中村奨吾を二番に入れたことで、チームで一番良い打者を二番に入れてより多くの打席数を確保した(昨季は5番起用が多かった)。
レギュラー事情
一塁手
開幕スタメンは今江。毎年200打席前後しか与えられないものの、大事な局面では頼りになる存在。今期は終盤代打での起用も増えて2017シーズン以来の70試合出場をクリア。
以下の表は前年の物だが、今江、鈴木、吉村、田中の競争の構図は変わらず。今期の成績でも一塁手の中ではベテランの今江が一番結果を残し、レギュラーは決まらなかった。
そういう中でサードのレギュラーだった草野がファーストで30試合に出場。去年頑張っていた三塁の守備で今年は綻びが見えたことも理由としてはあるが、来年38歳になる今江をこのままレギュラーとして使うわけにもいかず、チームとしてどうするべきか考えた結果でもある。
二塁手
前年136試合に出場した中村奨吾は今年も129試合に出場。ホームラン23本はキャリアハイで、前半戦は30本にも到達しそうなペースで打っていた。中盤失速したタイミングでスタメンを外れる機会も出てきたのだが、概ねレギュラーとして問題ない成績を残しただろう。
ゴールデングラブを今年も獲得し、不動の二塁手としてロッテのチームリーダーであり続けている。
三塁手
大きな変化があったのがこの三塁手。草野が二年目から守ってきたサードというポジションだが、明け渡すことも増えてきた。彼は来年30歳を迎えるシーズンだが、一塁コンバートというのも現実味を帯びている。
圧倒的な守備力を持つ島井が71試合、シュアな打撃を見せる田中広輔も39試合に出場。島井は打率を.281、田中は守備でも安定感を見せ、この二人の競争も激しかった。島井ほどでなくとも田中が守れたのは大きい。
実際草野の状態がなかなか上がらなかった前半戦、田中がスタメンで出場するケースが増えている。
遊撃手
川崎の118試合、島井の28試合くらいが使えるデータというところ。ソフトバンクからトレードで獲得したグリエルJRも10試合に出ているが、ショートという大事なポジションでは、川崎や島井の守備力は欠かせないだろうと判断。グリエルにも悪い事をしたと思う。
高卒一年目の白川を5試合起用するなど、色々な取り組みは行っている。白川に関しては当然まだまだな段階なのだが、ショート川崎宗則を脅かす存在は当分現れそうにない。
若手の育成
毎シーズン付きまとう若手の育成。
去年書いた若手の話は、以下の文章。
丸山和史をレギュラーとして育成するとして、一年目は次第点だという話である。中村奨吾の後釜になるために8歳年下であることも記してある。
その丸山に追いつこうとしている存在がプロ一年目の白川である。
丸山は一年目12試合に出場しているので、成績の量の部分では勝るが、初年度から適応を見せた存在が一年下に出てきたのは刺激になる。
守備位置は微妙に違うが、セカンドは被っているし中村奨吾の後を狙う存在が増えたと言っていい。高卒は五年目でやっと大卒一年目と同じ年齢になるわけで、まだ焦るタイミングではないけれども球団を運営する側としては面白くなったと見れそうだ。
草野のコンバート
一塁手として30試合とシーズン後半三塁ベースを離れた草野孝典。コンバートは、彼の長打力を活かすためにも負担の少ない一塁に移すという理由もあるし、これはサードを空ける口実にもなりそう。シーズン120三振は草野の通常運転とも言えようが、どこか変えたい気もする。
物理的にポジションを空けて競争を促すのは、プロスポーツでは常套手段であるし少しやってみようかという気になっている。
球団内プロスペクトランキング1位、12球団プロスペクトランキング17位である丸山のためにポジションを空けるのである。
ショート適正もある白川には中村奨吾の不調時だけでなく、川崎宗則の不調時に起用するという選択肢があるが、丸山の場合そこも競争となっている。
コンバートはその選手のためであることは勿論の事、チーム全体の底上げに繋がる作業でもあり慎重に考えながら、決断する際には大胆さが求められる。
どこでレギュラーを取るのか
野球は野手のポジションが8つしかない。指名打者という立ち位置はあるものの、最初から指名打者を狙うやつはいないわけで、そもそもの守備位置は誰にだってある。
特に外野が飽和ぎみな本チームでは、内野手に与えられる指名打者の権利は少なくなる。
FAの吉村獲得、川崎のショート固定、中村奨吾の成長などを理由に、私は鈴木大地のライトコンバートを行っているが結果鈴木大地は器用貧乏となり、試合出場数も伸びていない。
その反省も込めて選手一人一人の適正を見ながら、どこで勝負するのが最適化を考える作業が、ゲームでも重要になると知った。(現実世界では当然の事)
レギュラーの決まっていない一塁手と三塁手だが、横浜ベイスターズの佐野恵太のようなケースもあって外野手からのコンバートも可能性は除けない。
しかし今回は三塁手に絞っていく。
一塁手にコンバートする予定(予定とまで書いてしまった)の草野を省いて、試合数順に並べてみると、島井の71試合が際立つ。
私は期待も込めて1試合のみの丸山に来年サードを任せようとしているわけだ、一軍レベルの守備力はあるもののこうして考えると少しやりすぎではなかろうか・・・。
三塁が競争だと言われ一番やる気になるのは島井である。リーグトップレベルの守備を持つ彼も、守備固めのポジションのみならずスタメンで出場したいはず。まだ来年25歳と若くこれから狙える年齢だ。
田中広輔もバッティングでは常に結果を残しており、丸山の抜擢以外にも楽しみな面は多そう。トレードやドラフトで新戦力を獲得するのは楽しいし、ついついなびいてしまう部分だがチーム内から競争が起きるのが一番良い結果。他方誰も出てこなかった際に悲惨な事になり、今の中日ドラゴンズみたいになるわけだが、やってみる価値はあると言えよう。
左右のプラトン起用
今期レギュラー野手は三人既に決まっており、競争する場所は少なかった。ゆえに、左右別打率を出したところで采配に大きく関係するわけではなかった。
概ね能力通りの打率にはなったが、今江の対左打率が大きく低下した点と、島井が走力を活かして打率を上げている点が確認された。
インプレー打率の概念が騒がれるようになった昨今、島井のように苦手な左投手に対して三塁方向に転がし安打を狙う手法は、数字上評価されにくい。しかし見かけ上シーズンで.280を記録した点は見逃せず、来年以降への指針にもなる。BABIPは基本的に収束するわけで、島井が来年この打率を残せるかは不透明だが期待感はある。
中村奨吾が対左で結果を残せなかった点は一年通して打撃に波が出来た大きな要因だったと考えられる。41本の二塁打を打ちながら四球は前年の半分になる15個、三振も114個と粗い打撃となった。対左をポイントに今オフから来年へと取り組みたい。
内野手のOPS+
200打席以上の条件をもとにOPS+を算出。球場補正は出来ていない。
2020福浦ロッテ・外野手シーズンデータ
横田 慎太郎(25)
141試合 .312(558-174)37本103点13盗
.332 .606 .938(出塁率、長打率、OPS)
張 志豪(31)
129試合 .394(480-189)17本47点32盗
.412 .633 ,1.04
水沢 直輝(26)
94試合 .308(347-107)29本71点0盗
.333 .620 .953
淺間 大基(24)
84試合 .220(245-54)5本22点9盗
.234 .371 .605
長内 信介(24)
67試合 .198(202-40)2本15点0盗
.212 .322 .534
ルルデス・グリエルJR(28)
42試合 .261(138-36)6本16点1盗
.261 .428 .689
【ソフトバンク時代の1試合.000(4-0)を含む。】
デスパイネ(34)
39試合 .235(102-24)5本10点0盗
.264 .422 .686
梶谷 隆幸(32)
44試合 .279(61-17)0本2点6盗
.286 .410 .696
【横浜時代の23試合.000(17-0)0本0点3盗を含む】
藤原 昭光(27)
14試合 .139(36-5)0本1点0盗
.200 .194 .394
岡田 幸文(36)
23試合 .063(16-1)0本1点0盗
.063 .063 .126
谷口 雄也(28)
5試合 .200(5-1)0本1点0盗
.200 .200 .400
俊介(33)
6試合1得点
一軍の試合に出場していない選手は、外野手では伊志嶺翔太(32)ただ一人だった。
各ポジションのレギュラー事情
レフト
開幕当初レフトは横田慎太郎だった。理由は後述するが、横田の守備位置を本職のレフトにすることを決意。守備練習も行い能力に改善も見られた。
一方で成績を見ればわかるように張志豪がとんでもない打率を叩き出している。春先調子が上がらずベンチスタートだった張志豪も持ち前の守備力を活かす形でスタメンへ。最終的にはセンターで出場していたが、横田と代わってレフトに入る例も多かった。
センター
センターは前年ブレイクした淺間が開幕スタメン。だがなかなか調子が上がらず夏頃からは張志豪がセンターについた。淺間は後半盛り返したものの、ライトでの出場となっている。
ライト
プロ一年目にして結果を残した長内が継続してライトのレギュラーだった。ただ状態が上がらず大不振。三度の二軍落ちを経験するなど綺麗なほどの二年目のジンクス。
中盤以降はTDLで獲得したグリエルJRや同じくトレードで移籍した梶谷、センターから押し出された淺間、守備に定評のある藤原というように複数名で回すことになった。
去年一年で長内が掴んだと思われたポジションも、また競争となっている。
二年間続けることの難しさ
二年目のジンクスという表現がある。若い選手が一年通して活躍した翌年、成績を落とすことだ。新人王を獲った選手なんかは、翌年どうなるか注目される印象。「ジンクス」という単語を良い意味で使う輩が最近いるとたまに話題になるが、野球ファンとあってはありえない話。
2020ロッテでは外野手で二人、このジンクスに当てはまる選手が出てきてしまった。
淺間、長内共にレギュラー二年目となる今期は寧ろ飛躍が期待されていた選手だ。長内は.200を大きく下回る打率で前半戦を終えており、これでも後半戦戻してきた計算である。
淺間はセンター、長内はライトの守備能力に長けそれだけでもレギュラー筆頭だっただけにここまで打撃不振にならなければ一年通せただろう。
複数年単位で活躍することの難しさを知る結果になった。チームを管理する立場になった際「レギュラーは白紙」と発言する人をよく目にするが、こういった成績が予測できない事情がありそうだ。 ファンが既にいると思っているポジションでもフロントが補強するのはやはりこれまでの経験から来る心配のせいだろう。
それだけに毎年結果を出す張志豪と今年も結果を出した横田慎太郎が外野に欠かせない存在なのは間違いない。2021シーズンも彼らはレギュラーと扱うだろう。こういった成績の安定性は、複数年契約へと繋がっていく。
反対にチャンスを掴む選手
元のレギュラーが不振となり、守備位置が白紙となった際、チームを救うのは選手層の厚さであって、つまりは新しくレギュラーになる選手がいるということ。それが2020ロッテでは水沢直輝だった。
2019シーズンの終盤一軍に出てきた長距離砲。今期は両翼を担いながら指名打者の位置を確保し、新人王に輝いた。デスパイネを凌ぐパワーが魅力で、確実性は出来すぎの感があるが十分通用する所を見せた。
守備に難がある水沢はレフトか指名打者が狙い目だった。そんな中、ライトの長内と指名打者のデスパイネが不振に。オーダーに余裕が出来たことで、未知数の戦力に指名打者枠を利用する事が出来た。
横田も一定の守備力を今年は持ち合わせていたことも好影響で、水沢の大躍進へとつながる。やはり守備力を改善することはチーム力向上に欠かせない。
勿論、開幕をベンチで迎えた張志豪もチャンスを掴んだという言い方が出来るかもしれない。
AS明けからとんでもない勢いで安打を量産。
5打数5安打や6打数6安打も記録していたと記憶している。とにかく素晴らしいリードオフ振りを見せた。これまで二番で起用していたのが悪かった可能性もあり、彼は一番が本職だったのかもしれない。本塁打数、盗塁数共にキャリアハイで二塁打記録は日本記録を更新するペースで量産した。
結果二塁打は58本、22試合連続安打も記録した。走塁面でも盗塁成功率は八割を記録。これまでも安定していたが、これだけの結果を残したのは首脳陣としても収穫。
守備固めの有無
2019シーズンで守備固めの起用が少なかったと振り返っているが、2020ではよりその傾向が顕著になった。内野手では島井をはじめ守備を固めるシーンも多くみられたが、外野の守備固めは減っている。
岡田23試合、藤原14試合、俊介6試合と守備を持ち味にするタイプの選手は出場試合数を大きく減らしている。
交流戦でセリーグと試合をする際は、デスパイネや水沢といった守備に課題の残る選手に対して、二人一組のような形をとり、岡田を一軍に昇格させた事があった。
リーグ平均レベルで守れる野手陣が形成できれば守備固めの機会は減るのだろう。外野手の中で一番守備範囲が狭いのは横田だが、これから守備がより改善することが見込まれ、守備要員は減っていくと感じている。
外野手のOPS+
それぞれのポジションで分けた際、レギュラーに留まらず複数名の候補がいると確認できた。
OPS+で見れば控えに不安があるようでも、それなりの層の厚さだと私は感じている。今期優勝した要因として固い内野守備と爆発的な外野陣の打力が上げられるが、来期以降も崩れる心配は無さそうで常勝チームとしてあり続けられるだろう。