第6回:『ゲーム用語』 「RPGゲーム」という頭痛が痛そうな呼称

 先日、某ビジネスポッドキャストにおいて、パーソナリティが「RPGゲーム」と発言しているのを聞いてしまった。彼はゲームには詳しいタイプではないので、聞いた瞬間「やはり一般人には違和感のない単語なのか」と少々むなしい気分になった。定期的にこの単語を聞くことがあり、ゲームオタクで単語オタクな筆者はつい気になってしまうのだ。


1.そもそもRPGとは

 RPGとは「ロールプレイングゲーム」の略称なので、「RPGゲーム」と言うと「ロールプレイングゲームゲーム」となってしまう。頭痛が痛いと同じような、いわゆる重言と呼ばれるものだ。
 略さず表記すれば流石にゲームゲームはおかしいと感じるだろうが、現在ではRPGで定着しているので、一般人が元の言葉を知ることは少ないだろう。
 もしかすると、「RolePlaynG」の略称と勘違いしている人も極少数いるかもしれない。

2.今のRPGはRPGなのか

 元々はテーブルトークという、さまざまな役になりきって(ロールプレイして)物語を進めていくボードゲームがはしりである。そのゲームマスターとダイスの部分をコンピュータに任せて、1人でも遊べるようにしたものが現在のRPGのはじまりとなる。

 その点から考えると、現在のRPGは語源とは関係がなくなっている。現在でRPGと言えば「戦闘を繰り返して得たリソースでキャラを強化して、より強い戦闘に臨む」ものを指すし、役になりきって遊ぶジャンルと定義すると、主人公を操作する=演じるとなり、リリースされているほぼ全てのゲームがRPGということになってしまう。
 どう見てもSTGの「頭脳戦艦ガル」をRPGとするのは無理があると当時からツッコまれたように、もはや「RPG」というひと塊りでひとつの意味を持っている状態なのである。

※出典:げーむのせつめいしょ(仮) 


3.言葉は移りゆく

 こうなると、「RPGゲーム」という言葉が生まれるのも頷けるし、明確に間違っているとも言いきれなくなってくる。そもそも言葉は通じれば良いものなので、時代や使う人に合わせて変化してゆくものなのだ。
 ここ数年の言葉で例を挙げれば、よくないという意味の「ヤバい」がポジティブなニュアンスでも使われるようになったのが一番しっくりくるのではなかろうか。

 「HIVウイルス」や「BB弾」も、実は重言がそのまま単語として定着してしまった先輩達である。これらと同じように、前後の脈絡にゲームがない会話では「RPGゲーム」と表現した方が伝わりやすくなる時代が来るのかもしれない。

結びに

 RPGゲームという単語を聞いてむなしくなった筆者がどうするかというと、何もしない。
 先の「言葉は時代や使う人に合わせて変化してゆくもの」というのは、高校時代の国語教師の言だ。高校で日本語を教えている人がこのように言っているのだから、言葉の間違いを指摘するのは野暮であると、十代ながら思ったものだ。
 ただ、以前に「FPSシューター」という単語まで聞いてしまい、ジャンルの略称について少なからず思うところがあったので、このように記事として認めている。これでゲーム用語の語源を知る人が1人でも増えてくれれば嬉しいと思う。



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