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本当のしあわせ

 トライアルが決まった保護猫Aちゃん、Bちゃん。早速、私とNPO法人の方と彼女たちを連れてお宅へ伺った。広いリビングには床暖が入っていてほっとする温かさだ。AちゃんもBちゃんは、いつもと違う雰囲気にキャリーケースの中で固まっている。大丈夫、大丈夫、呪文のように話しかけ、リビングに用意してあった大きなケージに注意深く彼女らを入れる。

 新しいケージに移された彼女たちは、明らかにパニックを起こして上下にに動き続ける。しばらくして落ち着いたのは、ケージの隅の狭いスペース。2匹で身を寄せこちらを警戒している。

 里親さん候補のご家族は女性3人暮らしだ。親子2世帯のようである。家長である奥様は普段からご近所の猫を保護して、自費でTNRを施しては地域猫としてリリースしているらしい。随分前に猫を飼っていらしたがペットロスがつらくて、飼うのを躊躇していたそうだ。

 だが、急にやはり猫を飼いたいと強く思って、譲渡会に電話をくれたらしい。良かった。普段から保護猫活動をしている方々なら安心して里子に出せる。

 トライアルから約束の1週間がたち、ついに里親さんと正式譲渡契約書を交わす事になった。仔猫たちはどうしているだろうか。

 お宅のリビングへ通されると「ほら、元の飼い主さんですよー」と奥様がいうが、なんとAちゃん、Bちゃん激しく逃げ回る!冷蔵庫の上や、出窓など
明らかに私におびえている。

あーーーーっ、私が迎えに来たと思っているのだ。戻りたくないと体いっぱい反抗している。めちゃくちゃへこむ。そりゃ、たくさん保護しているから
愛情は足りなかったろう。だからって、餌をねだって甘えていたではないか。

里親さんへの正式譲渡の書類の交わしも終わり、帰路に就く。「こんなもんなんですね。保護しても」と私が言うと「こんなもんよ、幸せを感じているから、私達が拒否される。いい事よ」

本当の幸せ、Aちゃん、Bちゃん掴んだんだ。
泣きそうな自分に言い聞かせる。さっ、つぎの本当の幸せ、見つけるんだ!


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