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大理石の洞窟の中で出会ったワイン カッラーラへ日帰り旅行

イタリアでは、日用品から家具、家の内装や建築、そして芸術作品まで大理石をよく見かけます。かのミケランジェロ作ダヴィデ像も大理石。ダヴィデ像の大理石はカッラーラ産で、ミケランジェロはカッラーラの白大理石を愛したといわれています。

そのカッラーラに行ってきました。

大理石の洞窟の中でワインとの出会いもありましたので、カッラーラに行ったときのことをご紹介します。


カッラーラとは

カッラーラとは、イタリア・トスカーナ州の北西部に位置し、世界最大の白大理石の産地です。
大理石の山が連なり、現在、約100の採石場があります。

ミケランジェロがダヴィデ像を作ったルネッサンス期どころか、古代ローマの神殿にもカッラーラ産の大理石が使われていました。

「そんな昔から大理石を掘り続けていて、なくならないのか?」と思っていましたが、大理石の山々を見て、そんなことは杞憂だったとわかりました。大理石の山々のスケールの大きさにびっくり。遠くから見ると雪が積もっているかのように白く、近くに行くと飲み込まれるかのように切り立つ大理石の山。自然ってすごい。

遠くに見える大理石の山(車内から)
目の前にそびえたつ大理石の山

途中、大理石のトンネルを通りました。神秘的だけど、すでに鉱山の中にいるようでちょっと恐怖心をおぼえました。

大理石の山のトンネル(車内からでボケていますが)

現在は、採石業だけでなく、大理石を求めて世界中からツーリストが訪れる観光名所にもなっています。

私も大理石を求めてカッラーラにやってきたツーリストのひとり。この地は大理石とともに発展してきたのだろうと、歴史に思いを巡らせながら、採石場の見学ツアーに参加しました。

カッラーラの大理石の採石場見学ツアー

カッラーラには、採石場見学ツアーが数多くあります。

採石場の中を歩いて見学するツアー、大理石の山をJeepで走ってくれるツアー、カッラーラ産の大理石で熟成させるラルド・ディ・コロンナータを食べるツアーなど、いろいろ。

私は採掘場の中を歩いて見学するツアーに参加したので、話はそれますが、ラルド・ディ・コロンナータとは、カッラーラから8キロほどのところにあるコロンナータ村で作られるラルドのことで、欧州連合が認めるIGP(地理表示保護)になっています。ラルドとは、豚の背脂に塩、胡椒、ローズマリーなどをつけ、大理石の桶の中で熟成させる生ハムの一種です。トスカーナの前菜の盛り合わせにはラルドが盛られていることがあり、生ハムやサラミのようにそのまま食べます。

前菜の盛り合わせ。中央奥の白いものがラルド(フィレンツェのレストランにて)

ラルドは、熱を加えると、とろ~っと溶け、塩気と脂分そして旨味をプラスしてくれるので、料理に使われることも多いです。

スフレの上のラルド。とろっと溶けておいしい(キャンティ地方のレストランにて)

ラルド・ディ・コロンナータは日本では見かけることがないので、興味深いツアーだと思います。


さて、採石場の見学ツアーは、採石場の入口からスタート。山の内部まで車で連れて行ってくれました。

外はシャツ1枚でいいくらいの陽気だったのに、車を降りると、ひんやり。地面には水たまりがあり、湿気がありました。
温度は、年中15度前後ということです。
寒いと予想していたので、羽織りものをもってきてよかった。

そこにあったのは、360度大理石!

リアルで作業をしている採石場

これこそまさに百聞は一見に如かず、です。

緑や黒の大理石もありますが、カッラーラで採れるのは白の大理石。白ければ白いほど高価になるそうです。
そんな高価な白大理石が一面に広がっているのですね。

大理石は高価なため、偽物も出回っているそうで、本物と偽物の見分けかたも教えてくれましたが、正直私には見分けがつきませんでした💦

大理石を切る機械の説明もありました。ワイヤーを回転させながら大理石を切っていくのですが、1時間で数センチしか切れないという恐ろしく時間のかかる作業だそうです。

寒くて湿気がある環境のなかでの重労働。過酷な労働条件だという説明もありました。

そんなに苦労して大理石を使おうというのだから、昔から人間の欲望というのは計り知れないなと、思ってしまいました。


ふと見ると、ワインのボトルがありました。

大理石の洞窟の中にあったスパークリングワイン

大理石とワインの組み合わせは考えたことがなかったので、びっくり。

たしかに、大理石の山の中は、ワインセラーにぴったりともいえる気温と湿度です。

ここでは、瓶内二次発酵のスパークリングワインを造っていて、ピュピートルに刺されて立ててあるボトルがありました。
ピュピートルとは、ボトルを毎日少しずつ回転させてボトル内の澱を瓶口に集める作業であるルミアージュ(動瓶)をおこなうための木製の台。

ワインについての詳しい説明はありませんでしたが、カッラーラの周辺ではカンディア・デイ・コッリ・アプアーニというDOCワインがあります。
カンディア・デイ・コッリ・アプアーニDOCは、白、ロゼ、赤、ヴィンサント(陰干しして造られる甘口ワイン)があり、白は主にヴェルメンティーノ種から造られます。
カッラーラは海に近く、トスカーナの海岸沿いの白といえばヴェルメンティーノ。
大理石の洞窟の中で造られているこのワインもきっとヴェルメンティーノ主体なのでしょう。

大理石の洞窟の中のワインは、オーナーのパッションで造っているとのことで、市販はされていないそうです。

大理石の洞窟の中で眠るワインのおかげで、採石場見学ツアーがますます心に残るものとなりました。

カッラーラの大理石のお土産

見学ツアーが終わり、お土産を買うことに。

「私がすべて手作りしている」と言う大理石職人のお店には、ネックレスなどのアクセサリーから、カッティングボードなどのキッチン用品、ランプなどのインテリアまでさまざまな大理石グッズがおいてありました。

私がほしかったのは、モルタイオ。モルタイオとは、ジェノヴェーゼペーストを作るときに使う大理石乳鉢です。

ジェノヴェーゼペーストなんて、ミキサーでガーっと混ぜればいいじゃん、と思いがちですが(私もそうです)、ジェノヴェーゼペースト発祥のジェノヴァの人にいわせるとミキサーは邪道なのだそう。
ジェノヴァ出身の友人宅におじゃましたときにモルタイオを使って作ったジェノヴェーゼペーストをごちそうになりましたが、そのおいしさが忘れられません。

モルタイオは、小さいものから大きいものまで売られていましたが、そんなに大量に作るわけでもないので、小さいものを購入。大理石の乳棒がセットになっています。

購入したモルタイオ

ジェノヴェーゼペーストを作るのが楽しみです。

カッラーラの採石場へ行くには

カッラーラの採石場へのアクセスは、車のみです。カッラーラ駅からタクシーかレンタカー、もしくは運転手付専用車となります。

カッラーラは海から約7キロと近いため、カッラーラに行くついでに、海岸沿いの町に立ち寄ることもできます。セレブのリゾート地として有名なフォルテ・デイ・マルミや、ポピュラーなビーチのあるヴィアレッジョなどと組み合わせると山も海も見ることができる充実した1日になります。

カッラーラは、トスカーナ州とリグーリア州の州境ですので、フランスから続くリヴィエラもすぐそこ。リグーリア州の海辺の町にも立ち寄ることができます。

私は、リヴィエラの風を感じに、リグーリア州のレリチに立ち寄りました。

海の向こうには、世界遺産でもあるポルトヴェーネレが見えます。

レリチの海辺。海の向こうに見えるポルトヴェーネレ

レリチでは、フィレンツェでは普段食べることができない魚料理も目的のひとつだったのですが、カッラーラでのんびりしていたせいで、レリチに着いたのは午後3時過ぎ。レストランはすでにすべて閉まっていたので、魚のお惣菜を買って、海辺でピクニック。

メカジキのオーブン焼き(手前)と魚介のサラダ(左奥)

「目的のひとつだった魚料理をレストランで食べることができなかったのは残念」「でもレストランで食べるよりだいぶ安くあがったから、よかったのかな」と自問自答しなから食べたお惣菜は予想以上においしく、キラキラ輝く海を見ていたら、すべて満足しました。


フィレンツェ・イン・タスカでは、運転手付専用車を手配しています。時間もルートも自由自在にカスタマイズできるので、カッラーラなど公共交通機関では行くことが難しい場所へ行きたいかたはぜひお問い合わせください。

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