救急事案においての破壊活動の法的根拠
さて前回に引き続き同じような内容ですが。
https://note.com/fireinvestor/n/ne9a143d4374d
注意
今回の記事ですが私が研修に行った際に弁護士の先生が仰った内容を基に作成しています。解釈の違いにより人によっては意見が異なる可能性がありますのでご了承ください。
ではさっそく
1.救急事案においての破壊活動の法的根拠
みなさんも救急隊員として出動していればトイレ内での閉じ込めなど1度や2度はあると思います。
その際、要救助者に接触するためにドアや窓の開錠に破壊行為を行うこともあったと思います。
こんな時何を根拠に破壊していますか?
消防法第29条第1項ですか?
火災ではないので適用はできません。
では何を根拠にしているかと言いますと
実は救急事案における破壊活動の法的根拠はないのです。
2.法的根拠がない?
正確に言いますと、消防法上での法的根拠がないということです。
では救急事案での破壊活動は違法なのかと言われればそうではありません。
消防法上での根拠がなくとも破壊活動が正当業務行為または被害者の承諾があれば、違法行為ではありません。
たとえばトイレ内で脱力してしまい、鍵を開けられず閉じ込められてしまった傷病者が通報してあなたの隊が出場。鍵を開けられないため窓を破壊し屋内進入した場合、
刑事罰上、窓の破壊は器物損壊、家屋への進入は住居侵入に当たります。
ですが正当な業務行為であり、器物損壊罪にはなり得ません。
そのため刑事責任は問われることはないでしょう。
でもそれだけでは心許ないと感じるでしょう。
では我々を守ってくれる源の国家賠償法で考えてみましょう。
3.国家賠償法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000125
第一条 「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」
このような記載があります。ただ読んだだけだと結局どういうことかわかりかねると思います。
つまり、刑事責任を問うかどうかの要点は民法709条も抑えて話しますと、
1.故意または過失
2.違法な行為
3.損害の発生
4.因果関係
となります。
これらのどれかがかければ損害賠償責任は無くなります。
先ほどの例で考えますと
・自分で救急車を呼んでいる→傷病者の同意が推定できることもある。→過失がなくなる。
・傷病者の現在の危難を避けるために緊急やむを得ない行為である場合は緊急避難にあたる。→このような理由から1.2の要件を満たさず、損害賠償義務を生じない。
ということになります。
これらを総合して考えれば救急事案での破壊行為において刑事責任に問われる可能性は低いでしょう。
4.救助活動であれば?
各消防本部、局によっては先ほどの例では救助事案扱いとする所属も多くあると思います。
実際、私の所属であれば救助事案として処理されてます。
では何を根拠に破壊活動を行っているかというと、
消防法第36条第8項に
⑧ 「第十八条第二項、第二十二条及び第二十四条から第二十九条まで並びに第三十条の二において準用する第二十五条第三項、第二十八条第一項及び第二項並びに第二十九条第一項及び第五項の規定は、水災を除く他の災害について準用する。」
と記載があります。ちなみに消防法第29条第1項は
「消防吏員又は消防団員は、消火若しくは延焼の防止又は人命の救助のために必要があるときは、火災が発生せんとし、又は発生した消防対象物及びこれらのものの在る土地を使用し、処分し又はその使用を制限することができる。」
とされています。
つまり、水災を除く他の災害について準用する。とされているので、救助活動には消防法第29条第1項が適用され、これを根拠に活動することが出来ます。
まとめ
前回に引き続き救助活動、救助活動における破壊活動の法的根拠に重点に置いて説明させていただきました。どの事案の破壊活動に置いても我々消防士が法で守られていることが分かっていただけたと思います。
最後に、もし被害者の方に訴えられ、また問題提起された場合、これらの法が守ってくれるか否かはあなた方公務員の書類が最重要となります。
また次回には記録の重要性、内容について記事を作成しようと思いますので是非お待ちください。