ガソリン税の特例税率の改正の歴史

ここ1~2年で価格が高騰している「ガソリン」という商品にかかる税金について。

今回は、『租税特別措置法』にあるガソリン税に関する「税率の特例」の改正の歴史について調べてみた。

※特記なき限り、ガソリンの価格や税額は"1リットルあたり"とする。


[1]第72回国会(第二次田中角栄内閣)

1974年3月30日
「租税特別措置法の一部を改正する法律」が成立。(閣法72-39)


◎第89条(新設)
・暫定期間…1974年4月1日~1976年3月31日
・揮発油税…29.2円
・地方道路税…5.3円

「税率の特例」が導入されたのはココから。
※期間を区切られた"暫定措置"の時限立法だった事から、わかりやすく「暫定税率」と表現され、以後も2010年までそのように呼ばれた。


[2]第77回国会(三木武夫内閣)

1976年3月31日
「租税特別措置法の一部を改正する法律」が成立。(閣法77-2)


◎第89条(期間延長)
・暫定期間…1974年4月1日~1976年6月30日
・揮発油税…29.2円
・地方道路税…5.3円

◎第89条2項(追加)
・暫定期間…1976年7月1日~1978年3月31日
・揮発油税…36.5円
・地方道路税…6.6円
(※「特例税率」の増税)


[3]第84回国会(福田赳夫内閣)

1978年3月31日
「租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律」が成立。(閣法84-7)


◎第89条2項(期間延長)
・暫定期間…1976年7月1日~1980年3月31日
・揮発油税…36.5円
・地方道路税…6.6円


[4]第87回国会(第一次大平正芳内閣)

1979年3月30日
「租税特別措置法の一部を改正する法律」が成立。(閣法87-5)


◎第89条2項(期間延長)
・暫定期間…1976年7月1日~1979年5月31日
・揮発油税…36.5円
・地方道路税…6.6円

◎第89条3項(追加)
・暫定期間…1979年6月1日~1983年3月31日
・揮発油税…45.6円
・地方道路税…8.2円
(※「特例税率」の増税)


[5]第98回国会(第一次中曽根康弘内閣)

1983年3月31日
「租税特別措置法の一部を改正する法律」が成立。(閣法98-12)


◎第89条3項(期間延長)
・暫定期間…1979年6月1日~1985年3月31日
・揮発油税…45.6円
・地方道路税…8.2円


[6]第102回国会(第二次中曽根康弘内閣)

1985年3月29日
「租税特別措置法及び所得税法の一部を改正する法律」が成立。(閣法102-16)


◎第89条3項(期間延長)
・暫定期間…1979年6月1日~1988年3月31日
・揮発油税…45.6円
・地方道路税…8.2円


[7]第112回国会(竹下登内閣)

1988年3月31日
「租税特別措置法の一部を改正する法律」が成立。(閣法112-5)


◎第89条3項(期間延長)
・暫定期間…1979年6月1日~1993年3月31日
・揮発油税…45.6円
・地方道路税…8.2円


[8]第126回国会(宮澤喜一内閣)

1993年3月29日
「租税特別措置法の一部を改正する法律」が成立。(閣法126-4)


◎第89条1項(旧1項を削り3項から移動)(期間延長)
・暫定期間…1979年6月1日~1993年11月30日
・揮発油税…45.6円
・地方道路税…8.2円

◎第89条2項(旧2項を削って追加)
・暫定期間…1993年12月1日~1998年3月31日
・揮発油税…48.6円
・地方道路税…5.2円
※合計額は以前と同じだが、各税額を変更。
この税額が今日まで至っている。


[9]第142回国会(第二次橋本龍太郎内閣)

1998年3月31日
「租税特別措置法等の一部を改正する法律」が成立。(閣法142-9)


◎第89条2項(期間延長)
・暫定期間…1993年12月1日~2003年3月31日
・揮発油税…48.6円
・地方道路税…5.2円


[10]第156回国会(第一次小泉純一郎内閣)

2003年3月28日
「所得税法等の一部を改正する法律」が成立。(閣法156-9)


◎第89条2項(期間延長)
・暫定期間…1993年12月1日~2008年3月31日
・揮発油税…48.6円
・地方道路税…5.2円


[11]第169回国会(福田康夫内閣)

通称「ガソリン国会」。

「所得税法等の一部を改正する法律」(閣法169-3)について、
2008年3月31日までに成立せず、失効が確定。
2008年4月1日、第89条2項が期限切れで失効。
2008年4月29日、60日ルールにより参議院で「みなし否決」。
 ※憲法第59条4項による。
2008年4月30日、衆議院で可決成立。
 ※憲法第59条2項による。


◎第89条2項(期間延長)
・暫定期間…1993年12月1日~2018年3月31日
・揮発油税…48.6円
・地方道路税…5.2円
※失効期間中(2008年4月)は、本則税率を適用。


2008年5月13日
「道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律」が衆議院にて再可決・成立・即日公布。

※「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」に改題。
※道路特定財源制度を2008年度から10年間に延長。


[12]第171回国会(麻生太郎内閣)

2009年3月27日
「所得税法等の一部を改正する法律」が成立。(閣法171-6)
 ※憲法第59条2項による。


◎第89条1項(旧1項を削り2項から移動)
・暫定期間…1993年12月1日~2018年3月31日
・揮発油税…48.6円
地方揮発油税…5.2円
※2009年4月1日より、地方道路税が「地方揮発油税」に改められた。


2009年4月22日
「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律等の一部を改正する法律」が成立。(閣法171-8)

※「道路特定財源制度」が廃止され、一般財源化された。(2009年4月分より)



[13]第174回国会(鳩山由紀夫内閣)

2010年3月24日
「所得税法等の一部を改正する法律」成立。(閣法174-14)


第88条の8(第89条1項から移動)
特例期間…2010年4月1日~当分の間
・揮発油税…48.6円
・地方揮発油税…5.2円

※期間が「当分の間」となった事で時限立法ではなくなり、"暫定措置"の「暫定税率」とは表現できなくなり、「当分の間税率」と呼ばれるようになった。

※2023年7月26日時点で現行のもの。


◎第89条(新設)
「トリガー条項」を新設。
→2011年4月27日に停止(凍結)



と、このようにして、

オイルショック危機を脱するため、道路整備五ヵ年計画の財源確保のため、"暫定措置"の時限立法として定められたはずのガソリン税の「税率の特例」は、数年毎に期限を延長更新されてきた。

道路特定財源だったはずのガソリン税などは、2009年4月分より一般財源化され、道路整備事業以外にも使えるようになった。

2010年4月以降は"暫定措置"という仕組みが廃止され、当分の間「税率の特例」は継続される事となり、今日に至っている。

そんな現実に理解を示す国民は、果たしてどれくらいいるのだろうか?

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