見出し画像

政府の国債発行は"帳簿上の"負債である

政府にとって、国債は"帳簿上の"負債である。


■「政府の国債発行」と「市中銀行の国債購入」

政府が国債発行をし、市中銀行が国債購入した時、、、

<政府の仕訳>(国債発行)
借方…政府預金(資産の増加)
貸方…国債(負債の増加)

<市中銀行の仕訳>(国債購入)
借方…国債(資産の増加)
貸方…日本銀行当座預金(資産の減少)


市中銀行の「日本銀行当座預金」から、政府の「政府預金」へと預金(データ)が振り替えられる。
実務としては「信用創造」と同じく、預金の数字を動かしているだけである。
この振替業務は日本銀行が行っている。

政府は、この過程で調達した資金「政府預金」を元手に、『財政政策』を行っている


なお、市中銀行の国債購入の財源は「日本銀行当座預金」であると言える。日本銀行の企画局長が国会でそのように答弁している。

2022年9月末時点で、日本銀行当座預金のトータルは493兆円であり、マネタリーベースのうちの約8割にあたる。
日本銀行の金融緩和政策により、潤沢すぎるほどの「日本銀行当座預金」が市中銀行へと供給されている事になる。
従って、「市中銀行の手元資金不足=短期金融市場で資金調達」の必要は全くないし、あり得ない。


巷では「市中銀行は我々国民の預金の一部を利用して国債購入している」などと思われているようだが、それは大間違いである。
こういう考えの人が、漏れなく「国債=国の借金」と誤解しているのだろう。


■日本銀行の買いオペレーション

日本銀行が、市中銀行から国債購入した時、、、

<日本銀行の仕訳>
借方…国債(資産の増加)
貸方…日本銀行当座預金(負債の増加)

<市中銀行の仕訳>
借方…日本銀行当座預金(資産の増加)
貸方…国債(資産の減少)

買いオペによって、市中銀行の日本銀行当座預金に預金が積み上がる。
 ⇒マネタリーベースの増加

そして、市中銀行は、潤沢すぎるほどの「日本銀行当座預金」を元手に、『信用創造』を行っている。
 ⇒マネーストック(預金通貨)の増加

預金の数字を動かしているだけであり、現金通貨(紙幣・硬貨)そのものが動いているわけではない。
※現金通貨は、預金通貨を実体化・可視化・具現化するための"道具"にすぎない。

注意点として、無謀な信用創造を繰り返してしまうと、
・市中銀行の負債が増加し、自己資本比率が下がる。
・不景気になった時に、借り手から返済されなくなる。
…といったリスクがあるので、注意は必要である。
バブル崩壊の二の舞はもう二度とゴメンです。


■国債発行が「借金」や「リスク」となる根拠はNANDA?

負債・借金などと聞くとマイナスなイメージを持ってしまう人はいまだに多いが、
誰かが負債を100抱えれば、他の誰かが資産を100抱える事になる。
そういった形で、世の中に通貨が流通し、そこで各々が経済活動をしている。

無論、注意点が全くないわけではない。国債も通貨も、信用・信認が第一である。無尽蔵に国債や通貨を発行していいなんて全く思っていないし、MMTerのような極端な机上の空論を言うつもりなんて全くない。

重大な副作用として考えられる事があるとすれば、「過度なインフレ」と「通貨の信用・信認の暴落」の二つが挙げられると思う。

で、第二次安倍内閣以降どうなったか。
政府が国債残高を増やし続けても、日銀が異次元の金融緩和でマネタリーベース(日本銀行当座預金)を大量に増やし続けたり国債を買い取り続けたりしても、通貨や国債の信用・信認は微動だにしなかった。
露宇情勢以前は、物価安定目標(前年比2%)にも届いていなかった。

シンプルに国債発行を「国の借金」などというデマを意図的に垂れ流し、不安を煽ってくるマスコミや財務省…そしてその向こう側にいる西側諸国の連中が害悪である事には疑いの余地がない。

・国の借金でクビが回らなくなる。
・ハイパーインフレになる。
・日銀が含み損で債務超過する。
・日銀は破綻する。
…などと言っている人たちは、信用・信認以外の根拠を明確に説明してもらいたいものだ。


■国債発行のまとめ

政府が国債発行をすればするほど「政府の負債」は増加していく事になるが、それはあくまでも"帳簿上"のお話。良くも悪くも"帳簿上の"お話。

国債も通貨も「国家の信用」で成り立っているため、信用が失われた時はどうなるかわからないのもまた事実であり、注意が必要だ。

・政府の国債発行によって、政府は負債を背負う代わりに、財政政策の資金となる政府預金が同時に増加。
・日銀の国債購入によって、マネタリーベース(日本銀行当座預金)が増加。
・市中銀行の信用創造によって、マネーストック(預金通貨)が増加。

「政府の負債は、民間の資産」と言われているのはそのため。

国債は、市中銀行を経由して、最終的には日銀が買い取る事が多い。(約5割前後)

日銀が買い取った国債については、満期日まで保有し、その後は何度借り換えてもよく、償還(債務の返済)をする必要はない。これは「財政法」第5条但書の規定に基づいている。

「特別会計に関する法律」第42条にある「60年償還ルール」なるものは、世界で日本にしかないおかしな謎ルールである。
外国は、財政赤字の間は償還はせずに借り換え、財政黒字になってはじめて償還するようになる。
無論、国債金利(利払費)は別途支払う必要がある事は言うまでもない。つまり、借り換えは元本のみという事。

従って、政府の国債発行は、"帳簿上の"負債にすぎないし、将来世代に対するツケでも十字架でもない。国債は未来に対する投資とも言える。

日本銀行では、金融調節の結果として保有している国債のうち、償還期限が到来したものについては、財政法第5条ただし書きの規定に基づいて、国会の議決を経た金額の範囲内に限って、国による借換えに応じています。

日本銀行|日本銀行が国債の引受けを行わないのはなぜですか?




<参考資料>

一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移


普通国債残高の累増


利払費と金利の推移

.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?