一般会計と特別会計

毎年、3月下旬頃に、新年度の当初予算案が可決成立されるわけだが、表立って公表されたり報道されたりするのは「一般会計」の予算である。

だが、予算には一般会計の他に「特別会計」というものもある。

一般会計と特別会計のトータルこそが、真の国家財政規模(予算)を表しているという事は、意外と知られていないようだ。


そういうわけで今回は、以前のnoteで記した「財政規模」について、もう少し踏み込んでいきたい。



以降は、一年前の2022年3月22日に成立した「2022年度当初予算」をベースに考える。



■予算の歳入と歳出

(1-1)一般会計歳入
・歳入総額…107.6兆円
 ・歳入純計額…105.9兆円
 ・会計間相互の重複計上額等…1.7兆円

(1-2)一般会計歳出
・歳出総額…107.6兆円
 ・歳出純計額…51.2兆円
 ・会計間相互の重複計上額等…56.4兆円


(2-1)特別会計歳入
・歳入総額…470.5兆円
 ・歳入純計額…165.7兆円
 ・会計間相互の重複計上額等…304.8兆円

(2-2)特別会計歳出
・歳出総額…467.3兆円
 ・歳出純計額…218.5兆円
 ・会計間相互の重複計上額等…248.8兆円


■「総額」と「純計」の違い

◎総額
・個々の会計単位の収支を全て把握できる。
・一般会計と特別会計との間の入り繰り、特別会計間の入り繰りなどの重複額が計上される。

◎純計
・実質的な財政規模を把握できる。
・一般会計と特別会計との間の入り繰り、特別会計間の入り繰りなどの重複額を除く。


■総額ベースの合計と純計ベースの合計

◎総額ベース

・歳入総額の合計
107.6兆円(一般)+470.5兆円(特別)≒578.1兆円

・歳出総額の合計
107.6兆円(一般)+467.3兆円(特別)≒574.9兆円


◎純計ベース

・歳入純計額の合計
105.9兆円(一般)+165.7兆円(特別)≒271.5兆円

・歳出純計額の合計
51.2兆円(一般)+218.5兆円(特別)≒269.7兆円


この純計ベースの合計額こそが、真の国家財政規模(予算)を表している事を知るべきだ。

本来なら、国会審議を要する国家予算。
だが、特別会計は、国会審議をすることなく、省庁の官僚の裁量で動かす事ができる。



■石井紘基

かつて、民主党などで衆議院議員だった石井紘基という人物がいた。

・腐り切っていた官僚政治の追及
・"究極の裏帳簿"と表現した「特別会計」の徹底調査
・特殊法人や公益法人、それらの関連会社(ファミリー企業)の追及

…などなど、石井議員のライフワークは多岐に渡り、これらの問題に大きく切り込んだ。それらの内容は著書にもなっている。


当時、特別会計は総額ベースで約318.7兆円~330兆円とも言われており、
国民からは見えない不透明なカネの流れ先が特殊法人である事、
日本の構造的な問題が政界・官界・業界の持ちつ持たれつの癒着構造「鉄の三角形」である事に、石井議員は気付いていた。(著書にも書かれてある)

だが、特殊法人の仕事を独占する関連会社は民間企業。会計検査院の監視が及ばず、"補助金"という名の税金の流れ先がドコなのか、国民には知る由もなかった。

これこそが特殊法人問題の核心であり、会計検査院の限界である事に気が付いた石井議員は、特別会計や特殊法人の改革を訴え続けた。


しかし、その矢先の2002年10月25日、石井議員は自宅駐車場で暗殺された。
石井議員のカバンには、10月28日に予定されていた国会質問のために国会へ提出する書類が入っていたが、事件現場からはその書類が無くなっており、いまだに発見されていない。

今思えば、石井議員は、覚悟の上で身を挺して闘い続けていたのだろうと思う。

国会で審議された事のない特別会計の闇。
そして、闇に葬られた石井議員。
彼はどんな質問をする予定だったのだろうか。

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