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バーゼル合意(BIS規制)と自己資本比率

■バーゼル合意(BIS規制)

国際的に活動する銀行の『自己資本比率』に関する国際統一基準の事。
銀行等の経営の健全性を示す指標になっており、健全性を維持するために自己資本比率を規制する概念と言っていい。

バーゼルとはスイスにある都市であり、バーゼル銀行監督委員会の常設事務局は国際決済銀行(Bank for International Settlements)にある。
※国際決済銀行(BIS)とバーゼル銀行監督委員会は別組織。

・1988年…策定(バーゼルI)
・2004年…改定(バーゼルII)
・2017年…合意(バーゼルIII)


■銀行の自己資本比率

基本的には、「総資産=負債+純資産」に対する自己資本(純資産)の比率を指すが、
銀行の場合は、一般企業のそれとは概念が異なっている。

国内基準と国際統一基準があるが、両者は算出方法が異なっている。ゆえに、単純比較する事はできない。


◎国内基準
海外に営業拠点を持たない預金取扱金融機関
自己資本比率=(コア資本÷リスクアセット)×100
 ⇒4%以上

◎国際統一基準(バーゼル合意に基づく基準)
海外に営業拠点を持つ預金取扱金融機関
総自己資本比率=(総自己資本額÷リスクアセット)×100
 ⇒8%以上

 ・Tier1資本比率=(Tier1÷リスクアセット)×100
  ⇒6%以上

 ・普通株式等Tier1資本比率=(普通株式等Tier1÷リスクアセット)×100
  ⇒4.5%以上

※用語の意味
・総自己資本額
「Tier1+Tier2」で構成。

・Tier1
自己資本の基本的項目。
「普通株式等Tier1+その他Tier1」で構成。
主に、資本金、資本剰余金、法定準備金、優先株式などがある。

・普通株式等Tier1(Common Equity Tier 1=CET1)
バーゼルIIIにおいて、質量の向上を求める新たな自己資本比率の規制として導入された指標。
普通株式、利益剰余金が該当する。

・リスクアセット(Risk Assets)
その名の通り"リスクのある資産"を指す。
主に、有価証券・外国為替・融資・デリバティブなどがある。


■日本の四大銀行のバランスシート

2022年第3四半期における、日本の四大銀行の決算短信等にて公開されている。

(1)三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)

☆貸借対照表(連結)
 ◎借方(資産391兆8005億円)
  ・貸出金……119兆7711億円
  ・有価証券……84兆4515億円
 ◎貸方(負債373兆9495億円+純資産17兆8509億円)
  ・預金……222兆0626億円(個人89兆7632億円、法人等77兆9363億円)
  ・譲渡性預金……13兆8196億円

☆自己資本(国際統一基準)
 ◎総自己資本……17兆2342億円(13.04%)
  ◎Tier1資本……14兆7434億円(11.15%)
   ◎普通株式等Tier1資本……12兆9842億円(9.82%)
   ◎その他Tier1資本……1兆7592億円
  ◎Tier2資本……2兆4908億円
 ◎リスクアセット……132兆1593億円

 ◎総エクスポージャー……327兆9184億円
 ◎レバレッジ比率……4.49%
  (※「Tier1資本÷総エクスポージャー」)


(2)三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)

☆貸借対照表(連結)
 ◎借方(資産271兆7487億円)
  ・貸出金……100兆8734億円
  ・有価証券……32兆5503億円
 ◎貸方(負債258兆9879億円+純資産12兆7608億円)
  ・預金……157兆0824億円(個人57兆1000億円、法人等62兆2000億円)
  ・譲渡性預金……14兆5130億円

☆自己資本(国際統一基準)
 ◎総自己資本……12兆1935億円(15.63%)
  ◎Tier1資本……11兆4154億円(14.64%)
   ◎普通株式等Tier1資本……10兆6818億円(13.69%)
   ◎その他Tier1資本……7336億円
  ◎Tier2資本……7781億円
 ◎リスクアセット……77兆9714億円

 ◎総エクスポージャー……236兆2374億円
 ◎レバレッジ比率……4.83%
  (※「Tier1資本÷総エクスポージャー」)


(3)みずほフィナンシャルグループ

☆貸借対照表(連結)
 ◎借方(資産256兆1274億円)
  ・貸出金……92兆1194億円
  ・有価証券……38兆4120億円
 ◎貸方(負債247兆1313億円+純資産8兆9960億円)
  ・預金……142兆4477億円
  ・譲渡性預金……21兆8230億円

☆自己資本(国際統一基準)
 ◎総自己資本……11兆2165億円(15.72%)
  ◎Tier1資本……9兆7331億円(13.64%)
   ◎普通株式等Tier1資本……8兆0977億円(11.35%)
   ◎その他Tier1資本……1兆6354億円
  ◎Tier2資本……1兆4834億円
 ◎リスクアセット……71兆3368億円

 ◎総エクスポージャー……230兆8564億円
 ◎レバレッジ比率……4.21%
  (※「Tier1資本÷総エクスポージャー」)


(4)りそなホールディングス

☆貸借対照表(連結)
 ◎借方(資産72兆1823億円)
  ・貸出金……40兆4373億円
  ・有価証券……8兆0724億円
 ◎貸方(負債69兆7381億円+純資産2兆4442億円)
  ・預金……60兆2656億円
  ・譲渡性預金……9168億円

☆自己資本(国際統一基準)
 ◎総自己資本……2兆3818億円(13.99%)
  ◎Tier1資本……2兆3328億円(13.70%)
   ◎普通株式等Tier1資本……2兆3301億円(13.68%)
   ◎その他Tier1資本……27億円
  ◎Tier2資本……489億円
 ◎リスクアセット……17兆0215億円
※りそなHDは「国内基準行」であり、国際統一基準は参考値です。



今のところ、自己資本比率は保たれているようだ。
しかし、かつてのバブル経済時代のように、なりふり構わぬ無謀な融資(信用創造)を繰り返せば、預金通貨という銀行にとっての負債は膨らむばかりであり、それだけ自己資本比率を下げる要因にもなるので、そこんところは注意が必要である。

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