国家公務員や国会議員の給与は高いのか?(II)


新型Coronaが蔓延し始めた頃の2020年4月7日に、緊急事態宣言が発出され、指定された7都府県は法的根拠に基づく外出自粛要請がなされた。

それによって、多くの企業・店舗が休業し、多くの国民も休業やテレワークといった流れになったり、不要不急の外出自粛だったりで、生活不安に陥っているという指摘もあった。

そんな最中に飛び出した安倍総理のこのツイートを覚えている人はいるだろうか?


このツイートを見て、例の如く、アベガーさんたちが発狂したわけです。

そして、こういう事態になると、必ずといっていいほど言われるのが、
「オレたち国民は、今、こういう生活をしている。
 オレたちの税金でメシ食ってる国会議員は、給与をカットしろ!」
などといった論調が巻き起こる。


■実は給与カットしていた安倍内閣

給与カットについて、2020年4月13日午前の官房長官記者会見で、西日本新聞社の記者から実際に質問されたようだ。


西日本新聞社の記者
「このような投稿が批判される背景には、外出自粛要請で多くの国民が生活不安に陥っているからだ、との指摘が出ています。首相が国民に寄り添う姿勢が求められると思いますが、その具体策として、例えば、首相や閣僚が自身の給与の一部を減額または返納するといった対応をお考えではないでしょうか?

この質問に対して、菅義偉内閣官房長官は以下のように回答した。
「閣僚の給与返納でありますけども、既に総理は月額給与及び期末手当の30%、国務大臣は20%に相当する額を国庫に返納致しております。

安倍内閣は、給与返納をずっと行っていた。
 ※厳密に言えば「歳費と期末手当の減額」。

おそらく、この回答を聞いて、その事実を初めて知った人も多いのではないか。

では、安倍内閣による給与返納は、いつから行われていたのか?

それは、「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律」が施行されてからであろう。

※無論、国会議員においても「国会議員の歳費及び期末手当の臨時特例に関する法律」により特例期間において歳費と期末手当を減額している。


■国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律

この法律は、野田内閣の2012年2月29日に可決・成立されたもの。(閣法180-1)



同法第一条に、法律制定の理由が書かれてある。

この法律は、人事院の国会及び内閣に対する平成二十三年九月三十日付けの職員の給与の改定に関する勧告に鑑み、一般職の職員、内閣総理大臣等の特別職の職員及び防衛省の職員の給与の改定について定めるとともに、我が国の厳しい財政状況及び東日本大震災に対処する必要性に鑑み、一層の歳出の削減が不可欠であることから、国家公務員の人件費を削減するため、一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)等の特例を定めるものとする。

e-Gov法令検索|国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律


同法第九条により、施行日(2012年4月1日)から2014年3月31日まで。(時限法)
同法第十七条により、内閣総理大臣などの特別職の支給減額率は以下のように定められた。

・内閣総理大臣……30%減
・国務大臣、副大臣など……20%減
・大臣政務官など……10%減

2014年4月1日付けで支給の減額は廃止される事となった。(時限法の期限切れによる)

そんなある時、橋下徹大阪市長から発せられたものだと記憶しているが「国会議員の給料が2割増された」などと言っていたが、全くのデマである。
「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律」や「国会議員の歳費及び期末手当の臨時特例に関する法律」が終わり、元に戻っただけの話である。

だが、当時の第二次安倍内閣は、内閣として行財政改革を引き続き着実に推進する観点から、2014年4月1日以降も、閣僚は「臨時特例法」に基づく給与減額分に相当する額を国庫に返納する事を決定した。



■寧ろ安すぎる国家公務員や国会議員の給与

第二次安倍内閣以降、「国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律」による措置が終わってからもずーっと自主的に給与返納を行っていたという事実。
つまり、安倍総理は、総理大臣に返り咲いて以降、退任するまでの間、給与(歳費・期末手当)を満額で受け取った事がない。

あれだけの激務をこなし、あれだけの非難を浴び、あれだけマスコミに嗅ぎ回られ、常にSPが張り付き、一秒たりとも気の休まる時間など無いに等しいにも関わらず。
無論、これは後の菅内閣・岸田内閣も同様である。

そう考えたら、大臣も国会議員も、もっと給与を貰っていいと思う。
高いどころか、ハッキリ言って安すぎでしょ!!


■安易な給与カットは汚職事件が増える可能性も

国会議員の給料が減らされると、賄賂に釣られやすくなり、汚職事件が起こる可能性が高くなる。

・自分の取り分が減る
・事務所スタッフ・私設秘書らに給料を支払えなくなってしまう
・公設秘書3人だけでは仕事が回せず、私設秘書もマトモに雇えなくなってしまう

ゆえに、事務所運営そのものが成り立たなくなってしまい、賄賂に釣られやすくなってしまうという事だ。

汚職事件を庇うつもりは毛頭無いが、議員の給料をカットするという事は、それ相応のリスクが伴う。


■身を切る改革は、"国民の"身を切る改革

報酬カットで思い出されるの政党がある。
関西圏にある大阪維新の会・日本維新の会である。

彼らは、事ある毎に、
「我々はずっと前から給与カットしている! 歳費も期末手当も退職金もだ!」

などと自慢気にアピールしている。

「退職金もカットしている」と聞くと、素晴らしい事のように映ってしまいがちであるが、これにはワナがある。

大阪市や大阪府のホームページを見てみると、以下の事が書かれてある。

退職手当を廃止する代わりに、
 大阪府知事は、現行退職手当の一任期分(4年分)の全額を、
 大阪市長は、現行退職手当の一任期分(4年分)の半額を
それぞれ、1ヵ月相当に割戻し、毎月の給料の額に復元していた。
つまり、退職金はしっかり受け取っていた。
自分は一切身は切らずに、納税者である大阪府民や大阪市民の身を切らせていた。

https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/4840/00236071/04%20sannkoushiryou1.pdf


そんなに身を切る改革が大好きなら、政党助成金を返上しろ!
…という話である。

誰も聞いていないのに、ウザいくらい給与カットをアピールしているかと思いきや、思いきり大ウソをついていた維新とかいう政党。

片や、臨時特例法の措置が終わってからも継続して給与をカットし続け、その事は自ら発信しない自民党政権の閣僚の人たち。

どちらがカッコイイかは火を見るよりも明らかだ。


「議員の給与をカットします」などという、聞き心地が良いどころか奥歯がガタガタ浮き出るほどの稚拙なパフォーマンスには騙されないようにしたい。

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