住宅着工統計と住宅ローン

■建築着工統計調査報告

「建築着工統計調査報告」は、毎月、国土交通省から公表される資料である。
国土交通省の数ある統計の中で、『住宅着工統計』は最も重要な統計であり、GDPの一要素「民間住宅投資」に影響する。


令和4年分の調査は、2023年1月31日14時に公表された。

◇住宅着工統計
持家は減少。貸家及び分譲住宅は増加。
 ⇒全体で増加。

◇建築物着工統計(民間非居住建築物)
工場及び倉庫は増加。事務所及び店舗は減少。
 ⇒全体で減少。


■住宅着工件数と出生数は、相関関係にある??

両者のグラフを見比べてみると、いずれも1973年をピークに減少傾向にあるという共通した特徴がある。

もしかして、『住宅着工件数』と「出生数」は、相関関係があるのではないか?

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00600120



ただし、「出生数」とは違い、『住宅着工件数』には増減の波がある。
1955~1973年に関しては、出生数や人口の増加というよりも、高度経済成長期と丁度重なって急増した印象だ。

1973年以降を見てみると、
二度のオイルショックで急減し(金利上昇)、バブル全盛期に急増し(不動産の価値が急騰)、バブル崩壊後の氷河期に銀行が倒産した頃に急減し(貸し渋り)、リーマンショックで急減した印象を受ける。
東日本大震災やCoronaショックの影響は受けていないようだ。

もし、『住宅着工件数』が「出生数」と相関関係にあるとすれば、
「総人口」との関係性は??
「生産年齢人口」との関係性は???

こうして考えると、『住宅着工件数』に着目するのもなかなか奥深くていい。
人口動態や金融経済の状況をダイレクトに反映していると言えるだろう。


■住宅投資とGDP

住宅の購入が決まり、着工(工事開始)となった住宅は、GDPの「民間住宅投資」(I)として計上される事になる。

住宅が完成した後は、耐久消費財(家電製品や家具など)を一通り買い揃える人が多いため、「民間住宅投資」と「耐久消費財の消費支出」は密接な関係にあると言える。
そのため、『住宅着工件数』や「民間住宅投資」の増減は、「民間最終消費支出」(C)の増減に繋がる。それは即ち、GDPの増減にも繋がる話。

住宅着工件数は、全体的に見れば近年はずっと減少傾向にあると言っていい。
そして、少子高齢人口減少と共に、更に減少していくものと予想されるので、その分、GDPも減少する可能性が高まる。


■住宅ローンの金利

(1)固定金利
 ・「長期金利」を基準に決定。
 (A)全期間固定型
  ・返済開始から終了まで借入期間中の金利を固定。
  ・毎月の返済額や総返済額を借り入れた時点で確定する。
  ・住宅ローンの中で最も金利が高い。
 (B)固定金利期間選択型
  ・返済開始時から一定期間中の金利を固定。
  ・固定期間の終了後は、自動的に変動金利へ移行。

(2)変動金利
 ・「短期金利」を基準に決定。
 ・半年毎に金利を見直しされる。

◎変動金利のルール
・5年ルール
 ⇒最初の5年間は、金利の増減に関わらず毎月返済額は変わらない。
・125%ルール
 ⇒6年目以降の「見直し後の毎月返済額」は、「見直し前の毎月返済額」の1.25倍までしか上がらない。
※但し、当初に決めた返済期間までに完済しなければならない事に変わりはないところに注意。


なお、2022年4月調査の「住宅ローン利用者の実態調査」によると、
全期間固定型は8.9%、固定期間選択型は17.3%、変動型は73.9%のようだ。また、固定期間選択型の当初固定期間は、10年超の45.9%が最も多いようだ。


■日本銀行の金融政策に左右される住宅ローン

日銀が行う金融政策が今後どうなっていくかで、住宅ローンの動向も変わってくる。

「政策金利」と「住宅ローン金利」は密接な関係にあり、日銀が「短期金利-0.1%、10年物国債金利0%程度」という基本的枠組みを続けている理由の一つに、「不動産の動向(着工件数や価格の変動)」も挙げられる。物価安定目標のためだけに金融緩和をやっているわけではないという事。

従って、黒田総裁が勇退した後の新総裁がどのような金融政策を行っていくのか、非常に注目が集まるところだ。

もしも、このまま低金利が継続されるのなら変動金利で住宅ローンを組んだ方が有利になる。

今後、住宅を購入する人は、特に注視する必要があるだろう。

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