「貯蓄ゼロ世帯」のデマには御用心!

■家計の金融行動に関する世論調査

日本銀行内に事務局を置く「金融広報中央委員会」が毎年発表するものに「家計の金融行動に関する世論調査」がある。


調査の目的は二つある。

(1)家計の資産・負債や生活設計などの状況を把握し、これらの公表を通じて金融に関する知識や判断力を身につけることの大切さを広報する。
(2)家計行動分析のための調査データを提供する。


調査の内容は、大きく分けて六つある。

(1)金融資産の状況等
⇒金融資産の有無、金融資産保有額、内訳等

(2)金融負債の状況等
⇒借入金の有無、借入金残高、借入の目的等

(3)実物資産・住居計画
⇒住居の状況、住宅取得必要資金、この1年以内の土地・住宅の取得、増改築、売却の有無等

(4)生活設計(老後、消費含む)
⇒家計全体のバランス、過去一年間の家計運営、老後の生活についての考え方等

(5)決済手段
⇒日常的な支払いの主な資金決済手段、月平均手持ち現金残高等

(6)金融制度等
⇒預金保険制度の認知度、金融機関の選択理由等


これを「単身世帯(全国2500世帯)」と「二人以上世帯(全国5000世帯)」に分けて、対象となったモニターに調査アンケート票に回答入力してもらう調査方法となっている。

調査対象年齢は「20歳以上80歳未満」と幅広い。(令和2年調査までは70歳未満まで)

この調査を見てみると、家計の金融行動や、個人の金融に対する理解や考え方が見て取れる。「金融リテラシー調査」と表現しても過言ではなかろう。



■「貯蓄ゼロ世帯」のデマには御用心

「家計の金融行動に関する世論調査」について、某界隈の間で頻繁に垂れ流されるのが、以下のツイートにある画像である。

この画像は、平成29年の単身世帯における「金融資産の有無」についての調査結果である。(※【出典】より)


では、この画像の何が問題か?
それは「貯蓄ゼロ世帯」という言葉。

「金融資産の有無」についてのアンケート調査に、「貯蓄ゼロ世帯」と表現されている箇所は一切無い。

この調査で「金融資産」の定義については、アンケート調査の冒頭にしっかり明記されている。

この調査で「金融資産」とは、預貯金などの金融商品を指します。お答えいただく際には、以下の点にご留意ください。
①「金融資産」には、土地・住宅・貴金属等の実物資産は含みません。また、現金も含みません。
② 商・工業や農・林・漁業等の事業のために保有している金融資産は除いてください。
③ 預貯金については、定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用の為または将来に備えて蓄えている部分を「金融資産」とし、日常的な出し入れ・引落しに備えている部分は除いてください。

[ 詳しくは問3(a)をご覧ください。]
*なお、この調査で「貯蓄する」とは金融資産取得に資金を振り向けることを言います。

金融広報中央委員会|家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]平成29年調査結果



平成29年の単身世帯調査にて、問2に「あなたは、現在、金融資産を保有していますか。」という設問がある。

金融資産を保有していないと答えた単身世帯は、46.4%である。年代別についても判明している。

・全体……46.4%
 ・20歳代……61.0%
 ・30歳代……40.4%
 ・40歳代……45.9%
 ・50歳代……43.0%
 ・60歳代……37.3%

…という事で、平成29年の単身世帯調査と、デマ画像の数値はピッタリ一致する。


更に、「金融資産」を保有していない単身世帯(46.4%)のうち、
銀行等の預貯金口座や証券会社等の口座を持っていて残高があると答えた単身世帯は73.3%であり、その残高の平均額は114万円である。

つまり、某界隈のいう「貯蓄ゼロ世帯」でも、預金残高はしっかり保有しているという事。


『金融資産を保有していない(金融資産非保有)』とあり、「金融資産」についての定義もしっかり明記されているのに、それを全て無きものにして「貯蓄ゼロ世帯」と表現する。
これが某界隈の意図的な手口であり、悪質なデマやウソ以外の何モノでもない。

2021年10月17日のツイートなのに、どういうわけか2020年ではなく2017年のデータを使っているのも怪しさ満点。

某界隈には御用心!

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