見出し画像

「現代俳句」2022年1月号

 昨年1年かけて毎月「現代俳句」を読んできましたが、やめるのも変なので今年も翌檜篇を中心に読んでいきたいと思います。読むようになって、青年部のコーナーがあるのはありがたいなぁとしみじみ思います。句歴は先輩ばかりかもしれないですが、同年代の方を見つけるとやっぱりうれしいもんです。
 年が明けて一か月近くになりますが、今年ものんびりゆるゆると好きな句の話をしていけたらいいなぁと思っています。そんな感じで、今年も適当によろしくお願いします。

「翌檜篇」(37)

埴輪  犬星星人

秋風や大きく丸く埴輪の目
 土色の胴体に秋風が吹いている。ただ風が吹くのではなく、まるで埴輪の目を吹き抜けていくよう。数ある埴輪の中でも「大きく丸く」と書いてある。ひょっとするととぼけたような顔なのかもしれない。語感のよさも秋風のさわやかさと相まって、愛嬌のある心地の良い句。

考ふるうちに眠りて烏瓜
 烏瓜の実は熟すと赤くなる。ゆっくりと時間をかけて色づいた実。なにかをふと考えて、気づけば眠っている――ということは、時々ある。さすがに実が熟すほどではないとは思うけれど、「考ふるうち」というゆったりとした時間の流れが「眠りて」で深く、静かに、濃くなっていく感覚が魅力的。


冬の猫  正山小種

初雪の空の匂ひを嗅ぎたがる
 窓の外に雪。ちらついているのか、薄っすらと積もっているのか。猫が窓に足を掛けて、少し伸びをしているような様子を思い浮かべた。「嗅ぎたがる」という無邪気な好奇心がかわいらしい。発想と視点がすてき。

猫ずらし炬燵の中を広くせり
 猫はこたつで丸くなるものらしい。うちに猫はいないので、実際どれくらいこたつを占領されるものなのかはわからない。ずらされるほど幅を利かせていたのだろう。貫禄のある大きな猫の体を想像した。追い出すのではなくずらすにとどめるところに飼い主の愛情を感じる。


足あとを踏む  高村七子

初詣恋はだいたいハイリスク
 最近、積極的に「恋」を含んだ句を読んでいる。いろんな恋があっていいな、と思う。この句を読んで、「だいたいハイリスク」とアバウトでいて切実な言葉につい笑ってしまった。せっかくの初詣。できれば成就を祈願したいところ。老若男女問わない説得力があっておもしろい句。

足あとの内に足あと深雪晴
 「深雪晴」という季語が晴れ晴れとしていていい気持ち。大きめの足跡の内側にちいさな足あとがある。大人と子ども。きょうだい。人間と小動物。どんないきものの、どんな足あとなのか想像するのが楽しい。

空  須藤結

数珠玉やこんがらがっている地球
「こんがらがっている地球」というパワーフレーズに数珠玉。実際にこの植物を見たことがないため、調べてみるとなかなかに渋い。イネ科の植物で、実が数珠みたいに丸く固い。取り合わせのアンバランスさがシュールでおもしろい句。

新人を未来と呼ぶ人天高し
「天高し」で良くも悪くも丸く収まっているのが秀逸。良くも悪くも、と言うと聞こえが悪いのだけれど、いい意味で「期待」、悪い意味で「嫌味」というブラックジョークとも取れるような――いや、これはわたしがひねくれているだけか。「新人」「未来」「天高し」の眩しさに圧倒された句。


 今年も変わらずこのnoteにわたしの「好き!」を残していきたいと思います。会誌には読み切れないほど句が載っているので、なかなかすべて読むことができなくてもどかしいですが、自分のペースで読むことも楽しみたいと思います。おすすめの読み方(や記事)があったらぜひ教えていただきたいです。

 それではここまでお付き合いいただきありがとうございました。また次回。

よろしければサポートお願いします! サポート代は句集購入費として使わせていただきます!