『現代俳句』2024年7月号
40度を超える地域がちらほら見受けられるようになりました。40度って何度だよ、というお約束のツッコミをしつつ、毎日「生き延びること」だけを考えています。この異常気象を異常気象と明言せずに、平然と「暑さ対策を」と言える世の中に怯える今日この頃です。
暑さに体も心も滅入ってしまう、そんな七月でした。気を取り直して現代俳句を読んでいきます。
列島春秋
内側に座つてみたき夜店かな 岡田由季/大阪
夜店ってお客さんとして外側から見ることはあっても、内側(お店側)に座ることってなかなかないですよね。そりゃあお店の人は座っていますけれども、そのお店の人になるっていうことが珍しいわけで。お店屋さんになりたいな、みたいなことじゃなくて飽くまで「内側に座つてみたき」なので、一回でいいから座ってみたいな、気軽な感じ。とてもよくわかります。
有岡の城ふたまたの尾の蜥蜴 杉浦圭祐/兵庫
今はなき有岡城。わが街伊丹です。「ふたまたの尾の」というのが、有岡城主だった荒木村重の人生をふっと思い起こさせる気がします。べつに二枚舌でも二股の尾でもなかったとは思いますが、着地点の「蜥蜴」も不気味でよいです。有岡城址は石垣を残すのみとなりましたが、今でも蜥蜴がどこかにいそうな気配があります。
「翌檜篇」(63) 青年部編
明るき 水越晴子
春障子明るきこゑがずつとする
明るい声がずっと「するような気がする」という景なのかな、と思いました。春障子の明るさは、きらりと眩しいわけではなくどこか淡いあたたかさを感じるので、春障子を見るたびに声が聞こえてくるようなやさしい情景を想像しました。
センチミリミリ 遠藤寛子
わたくしを値踏みする猫春ひなた
じっとこちらを見ている様子が目に浮かびます。なんだか値踏みされているような視線。「ふーん、あんたってその程度なのね」という嫌味な態度を想像します。「春ひなた」という季語がどこか皮肉めいた猫の態度をかわいらしく演出してくれます。
打つ 藤雪陽
スコールにラムネの海となりぬべし
「ラムネの海」というのがかわいくて好きです。夢があるというか。かわいいんだけど「なりぬべし」という言い切る感じがスコールの力強さと呼応していておもしろいと思いました。
サ終まだ 土井探花
サ終まだ蟬は壊れてゆくけれど
サ終とはサービス終了のことだと思うのですが、サービス終了はしていないけれども、蟬は壊れてゆく。というか、最近のこの酷暑。蟬が全然鳴かないのを思いました。かと思えば、夕方にはバチバチと音を立てている。確かに「壊れてゆく」としか言いようがないかもしれませんね。
地区協だより 福井地区篇 中内亮玄
中内さんが地区会長になってからの歩みが記されていて、とても興味深い記事でした。春秋俳句大会の副賞がディズニーランドペアチケットとはなんというバブル! 現代俳句全国大会招待もいいし、普通にボールペンでもなんでもいいから欲しい。いつも思っているのですが、参加費をそこそこ払って参加賞が冊子だけってちょっとケチじゃn(自主規制)
アイドルのファンクラブのように、ライブチケットのために入らざるを得ないという場合はべつとしても(本来そのためだけのファンクラブではないのですが、おおむねそういう傾向にあるのが現実)、現代俳句協会は入ることで必ずこういうメリットがありますよ、というのは今のところないと思います。それは逆に言えば、ひとりひとりの会員がどこに価値を見出すかでもあるし、そこここに価値があるとも言えます。わたしのように「関現俳の居心地がいいから」という人も地区協会員の中にはいるはずです。
このnoteで地区協だよりの感想を書くときに、ほぼ毎回言っている気がしますが、結局は「会員の求めていることを知り、還元する」ということが大事なのではないかと思います。元々いる会員が満足して継続できるような、人に薦めたくなるような、そういう組織であればおのずと新規会員も増えると思います。というか、会員が増えなくても文句を言わずに会費を払ってくれる人がいるうちは、それでいいんじゃないかとも思うのですが。
今月の新入会員記念作品は54名分ありました。増えとるやんけ~~~~! とずっこけたのは言うまでもありません。よいことよいこと。
気が付いたら七月が終わろうとしていて慌てて書いています。中旬にうっかり夏風邪をひいてしまい、救急車で運ばれました。はじめて救急車に乗りましたが、普通に酔いました。あわや髄液検査か、というところまで迫られましたがどうにか回避できてよかったです。いや、ただの風邪かいって話ですけど、ただの風邪でここまで悪化することがわかったので、油断せず過ごしたいと思います……いやはや、ほんとに。
それでは今月はこの辺で。最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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