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明日もし、上手くいかなくたって立ち止まらない

「ハイキュー!!」のジャンプ連載が、7/20発売号で完結した。
よりによっても及川徹の誕生日とは。
寂しい気持ちもあるけど、それよりも8年半もお疲れ様でした、私にハイキュー!!というコンテンツを教えてくれて、与えてくれてありがとう、という気持ちが先立つ。

思えば、私が「オタク」と自覚し、グッズや薄い本に覚醒したのは、ハイキュー!!が初めてだった。
それまでにもアニメイトには行ったことがあったし(幽遊白書の妖狐蔵馬のグッズを買ったことがある)敬遠はしていなかったが、こんなに日参するほどになるとは。
気づけば痛バを作っていたり、キャラT(岩泉一/根性論)を着てイベントに出かけていた。
後にも先にも、ここまで執着したのはハイキュー!!くらいじゃないかな。
読み始めたのは何がきっかけだったのかまでは思いだせないのだけど、たぶんレンタルコミックをまとめて借りた後、どうしても反芻したくてメル〇リで15巻くらいまでまとめて売りに出している人を見つけて買った。ここから単行本を揃え始めた。
それから本誌も買い出し、ジャンプの連載マンガをひとしきり読むようになり、好きなカラー扉は作品問わず切り取って保管した。
ハイキュー!!は買いだしてからは全部あると思う。

キリがないのだけれど、自分の中で強くに残ったシーンを思い出しながら書く。

ハイキュー!!は、負けることにも意味があると強く教えてくれた作品だと思っている。
主役級でなくても必ずドラマがあって、作者の古舘先生はそこもきちんと描いてくれる。
日向は体格からすでに「負け」ている状況だったけれど、別の戦い方があって、小さいことは弱さではないと知る。星海に出会うことでそれをより強く感じるようになる。
影山が王様と呼ばれる独りよがりのプレーヤーから成長していく過程は、表立っては「負け」ではなくても、チームで戦うことの意味に気付けなかった頃が「負け」だとするなら、それはものすごく意味のあったことだ。
烏野高校も一度大きな「負け」を味わうからこそ、成長していく。
他校も同じ。負けはみじめな結末ではない。武田先生の「負けは弱さの象徴ですか?」と問いかけるシーンが思いだされる。
個人的には縁下の「根性なし」のところはグッと来たし、演劇ハイキュー!!でも最高のシーンだった。
そして木下。「勘違いしてたんだなぁ」とヒーローになれないことを実感するのだが、これ、一般人が、憧れた人になりたくて、でもなれなかった絶望感に似ている…と思ったら、泣かずにはいられなかった。その後西谷が試合中に木下を指して「お前がいたからこそ今がある」と言わんばかりのポーズをして、木下の存在意義を十分に認めるのだけれど、この流れが凡人に何よりも嬉しかった。
月島の成長も欠かすことはできないし、日向が強く「負け」を味わいながら成長する1年選抜合宿(特に百沢君とのシーン)も印象深い。

また、数ある「負け」の中でもやはり青葉城西高校(青城)との闘いを話さずにはいられない。烏野を下した及川徹率いる青城でも、最後まで勝ち抜くことができなかったこのチームを。
17巻を読み返しては泣くし、アニメでも泣くし、演劇ハイキュー!!を見ても泣いた。
青城の「負け」があるからこそ、岩泉一との最後の拳があったからこそ、及川徹はその先へ行けたのだと思う。
そして17巻の及川徹の「自分の力の上限をもう悟ったって言うのか?」が伏線になるとは思いもよらなかったし、これが計算されて描かれたのかと思うと鳥肌が立った。

何より最大の「負け」は、日向が最後までコートにいることができなかった春高なのだけど。

ハイキュー!!について書こうと思えばまだまだいくらでも出るのだが、原作とは違った感動をくれたアニメと演劇。どちらも違う良さがあった。
アニメは何よりも原画の動きや演出、そして音楽で最高に震えた。
OP曲はいつまでも心に残ったし、アイム・ア・ビリーバーやイマジネーションを生で聞いた時(でんぱ組.incとの対バンでした)めちゃくちゃ感動した。
本編の動きはもちろんだけど、個人的にはOPEDの映像が短い中にもストーリーを詰め込んでいて大好きだった。
特にtacicaの「発熱」が使われたED、モノクロアニメの中にチームカラーだけくっきりと色付けられる。美しい。
このCDジャケット、及川が青城の横断幕を翼のように広げながら、その横断幕が散っていくという絵。17巻そのものだった。泣いた。
この特典のクリアファイルが欲しいためだけにアニメイトに行った。

元々色は青が好きだったのだが、青城が好きになってからチームカラーのミントグリーンが異常に好きになったし、推しアイドルも同様のイメージカラーだったりもしたので(でんぱ組.inc/夢眠ねむ、ミントグリーンが個人カラーだった。それより前はももクロの有安杏果が緑)青緑系のものを見るとつい買いそうになる習性が身に着いたのは言うまでもない。

ハイキュー!!のアニメは劇中の音楽も良くて、音楽担当の林ゆうきさんの楽曲への信頼度の強さたるや。
オケコンも行ったが、生演奏で聞く音だけで絵が想像できるという贅沢が素晴らしかった。
音楽と言えば演劇ハイキュー!!の楽曲も、流れるだけで鳥肌が立つ。
テーマソングってこういうものだ、というのを改めて気づかされる。

演劇ハイキュー!!は、私が若手俳優沼に足を踏み入れたきっかけになった作品でもある。
何よりも遊馬晃祐の及川徹が、ビジュアルが及川徹すぎて震えた。初作の再演から見たのだが、手を振って客席に降りてくる遊馬、黄色い声に囲まれる遊馬…あれリアル及川じゃん…としか言えなかったし、バレー経験者ということもあって、ジャンプサーブがとんでもなく美しかった。

演技は、最初はこの作品が初めての仕事というだけあってなかなかのもの()だったけれど、「最強の場所」の頃には、泣く顔すらも及川徹で、文句のつけようがなかった。
私の中で実写版・及川徹は遊馬晃祐以外には考えられない。
通常2.5次元作品と言われるものは、演者がウィッグをつけることが多いのだが、遊馬はずっと地毛でやっていたそうだ。そして、この及川徹というキャラクターの大きさに押しつぶされそうになったこともあったと吐露していた(いずれも20200720のインスタライブでの発言)けれど、彼の成長も含めて及川徹がそこにいた、というある種の錯覚を楽しませてくれた。

…とまぁ、話の風呂敷を広げてしまうと収拾がつかなくなりそうなのでこの辺でやめておくけれど、私にとってのハイキュー!!は、自分の世界を広げてくれた作品だったし、キャラクターの生き様や言葉に救われたこともあった。
今まで「負け」てきた人生もまんざらではなく、その経験があるからこそ今強く生きていけるのだと教えてくれたものだった。
原画展に仙台まで行ったことも、モデル地である岩手県・軽米町に行ったこともいい思い出。

もうあれから2年経ったのか。
古舘先生のご実家「古館製麺所」に行けたのが嬉しかったし、町中が「ハイキュー!!」で溢れていて、人も優しくて、とても幸せだった。

この秋再び原画展が開催される(無事行ければいいのだが…)が、色々な思いを馳せるだろうな。
Twitterで「ハイキューは人生」と言う人が多かった(洩れずに私も)が、そのくらい、キャラクターが生きたことをリアルに、美しく描いてくれた。
時系列も見事すぎたし、ラストも文句なしに素晴らしかった。
自分の人生において欠かすことのできない作品になった。

古舘先生、長い間、お疲れ様でした。
そして、こんなに素晴らしい作品をリアルタイムで感じることができたことに多大なる感謝を。

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