食料・農業・農村基本法が25年ぶりに改正されました
食料・農業・農村基本法が25年ぶりに改正されました(本文4,021文字)
食料・農業・農村基本法は、食料安全保障、環境問題、海外市場拡大などの情勢変化に対応するため、25年ぶりに改正されました。改正内容は、食料安全保障の確保、農業の多面的機能の発揮、持続的な発展、農村の振興の4つの理念を踏まえ、具体策を講じています。
<食料・農業・農村基本法の改正について>
■食料安全保障の確保を基本理念に追加
■農業の担い手育成、スマート技術導入、農産物輸出促進などを推進
■気候変動対策、生物多様性保全への取り組みを強化
■農村の活性化、地域住民の生活環境整備を支援
<改正の背景>
■世界的な食料情勢の変化、地球環境問題、海外市場拡大
■食料自給率向上、持続可能な農業の実現、農村の活力再生
<今後の課題>
■改正内容の具体化と実行
■関係者間の連携強化
■国民理解の促進と意識改革
<食料・農業・農村基本法の概要>
※ この概要は、食料・農業・農村基本法の内容を簡潔にまとめたものであり、法令の解釈等を保証するものではありません。詳細については、法令を参照ください。
■第1章 総則
(基本理念)
・ 食料安全保障の確保
・ 環境と調和のとれた食料システムの確立
・ 多面的機能の発揮
・ 農業の持続的な発展
・ 農村の振興
(国の責務)
・ 食料、農業及び農村に関する施策についての基本理念にのっとり、食料、農業及び農村に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
・ 食料、農業及び農村に関する情報の提供等を通じて、基本理念に関する国民の理解を深めるよう努めなければならない。
(地方公共団体の責務)
・ 基本理念にのっとり、食料、農業及び農村に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(農業者の努力)
・ 農業及びこれに関連する活動を行うに当たっては、基本理念の実現に主体的に取り組むよう努めるものとする。
(事業者の努力)
・ 食品産業の事業者は、その事業活動を行うに当たっては、基本理念の実現に主体的に取り組むよう努めるものとする。
(団体の努力)
・ 食料、農業及び農村に関する団体は、その行う農業者、食品産業の事業者、地域住民又は消費者のための活動が、基本理念の実現に重要な役割を果たすものであることに鑑み、これらの活動に積極的に取り組むよう努めるものとする。
(農業者等の努力の支援)
・ 国及び地方公共団体は、食料、農業及び農村に関する施策を講ずるに当たっては、農業者及び食品産業の事業者並びに食料、農業及び農村に関する団体がする自主的な努力を支援することを旨とするものとする。
(消費者の役割)
・ 消費者は、食料、農業及び農村に関する理解を深めるとともに、食料の消費に際し、環境への負荷の低減に資する物その他の食料の持続的な供給に資する物の選択に努めることによって、食料の持続的な供給に寄与しつつ、食料の消費生活の向上に積極的な役割を果たすものとする。
(法制上の措置等)
・ 政府は、食料、農業及び農村に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上及び金融上の措置を講じなければならない。
(年次報告)
・ 政府は、毎年、国会に、食料、農業及び農村の動向並びに政府が食料、農業及び農村に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。
■第2章 基本的施策
第1節 食料・農業・農村基本計画
・ 政府は、食料・農業・農村に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、食料・農業・農村基本計画(基本計画)を定める。
・ 基本計画は、食料安全保障の動向、食料自給率等の目標、食料・農業・農村に関する施策などを定める。
・ 政府は、基本計画を定める際、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない。
・ 政府は、基本計画を定めたときは、国会に報告し、公表する。
・ 政府は、基本計画に基づき、食料安全保障の確保のための施策を講ずる。
第2節 食料安全保障の確保に関する施策
(食料消費に関する施策の充実)
・ 食品の衛生管理及び品質管理の高度化、食品の表示の適正化等を図る。
・ 健全な食生活に関する指針の策定、食料の消費に関する知識の普及等を図る。
(食料の円滑な入手の確保)
・ 地方公共団体、食品産業の事業者等と連携し、食料の輸送手段の確保、食料の寄附の円滑化等を図る。
(食品産業の健全な発展)
・ 環境負荷の低減、資源の有効利用、事業基盤の強化、円滑な事業承継の促進等を図る。
・ 農業との連携の推進、流通の合理化、先端技術の活用、海外展開の促進等を図る。
(農産物等の輸入に関する措置)
・ 国と民間との連携による輸入相手国の多様化、輸入相手国への投資促進等を図る。
・ 農産物の輸入による国内生産への影響がある場合は、関税率の調整、輸入制限等を講ずる。
・ 肥料等の農業資材の安定的な輸入確保のため、国と民間との連携による輸入相手国の多様化、輸入相手国への投資促進等を図る。
(農産物の輸出の促進)
・ 輸出を行う産地の育成、輸出のための取組の促進等により農産物の競争力を強化する。
・ 市場調査、情報の提供、普及宣伝の強化等による輸出相手国における需要の開拓を支援する。
・ 輸出する農産物に係る知的財産権の保護、輸出相手国との協議等を図る。
(食料の持続的な供給に要する費用の考慮)
・ 食料システムの関係者による食料の持続的な供給の必要性に対する理解の増進、合理的な費用の明確化等を図る。
(不測時における措置)
・ 凶作、輸入減少等による食料供給不足が発生するおそれがあると認めたときは、関係行政機関相互間の連携強化、備蓄食料の供給、食料輸入の拡大等を図る。
・ 国民が最低限度必要とする食料の供給確保が必要と認めるときは、食料増産、流通制限等を講ずる。
(国際協力の推進)
・ 開発途上地域における農業及び農村の振興に関する技術協力及び資金協力、食料援助等を推進する。
この要約は、食料・農業・農村基本法第2章の基本的な内容を簡潔にまとめたものです。詳細は、法令本文をご参照ください。
第3節 農業の持続的な発展に関する施策
(望ましい農業構造の確立)
・ 効率的で安定的な農業経営を育成し、農業生産の相当部分を担う構造を確立するための施策
(専ら農業を営む者等による農業経営の展開)
・ 創意工夫を生かした農業経営の展開、経営基盤強化、農業経営の法人化推進のための施策
(農地の確保及び有効利用)
・ 農地の確保、集積、集団化、適正かつ効率的な利用促進のための施策
(農業生産の基盤の整備及び保全)
・ 良好な営農条件の確保、先端技術を活用した生産方式の導入、農業生産基盤の整備・保全のための施策
(先端的な技術等を活用した生産性の向上)
・ 情報通信技術等を活用した生産・加工・流通方式の導入、新品種の育成・導入のための施策
(農産物の付加価値の向上等)
・ 高品質品種の導入、新たな事業創出、知的財産の保護・活用のための施策
(環境への負荷の低減の促進)
・ 農業の自然循環機能維持増進、農薬・肥料適正使用、環境負荷低減技術導入のための施策
(人材の育成及び確保)
・ 農業技術・経営管理能力向上、新規就農促進のための施策
(女性の参画の促進)
・ 女性の農業経営参画機会確保、環境整備のための施策
(高齢農業者の活動の促進)
生きがいのある農業活動環境整備、高齢農業者福祉向上のための施策
(農業生産組織の活動の促進)
・ 効率的な農業生産確保のための施策
(農業経営の支援を行う事業者の事業活動の促進)
・ 農業経営支援事業者の事業活動促進のための施策
(技術の開発及び普及)
・ 農業・食品加工流通技術の研究開発・普及推進のための施策
(農産物の価格の形成と経営の安定)
・ 需給事情・品質評価反映、価格変動緩和のための施策
(農業災害による損失の補塡)
・ 災害損失補填、農業経営安定のための施策
(伝染性疾病等の発生予防等)
・ 家畜伝染病・植物有害動植物発生予防・まん延防止のための施策
(農業資材の生産及び流通の確保と経営の安定)
・ 農業資材安定供給確保、代替物転換、備蓄支援、価格変動緩和のための施策
第4節 農村の振興に関する施策 要約
(農村の総合的な振興)
・ 農業振興と農村の総合的な振興を計画的に推進
・ 地域特性に応じた農業生産基盤の整備・保全、農村との関わりを持つ者の増加、生活環境整備等を推進
(農地の保全に資する共同活動の促進)
・ 農業者等による農地保全の共同活動を促進
(地域の資源を活用した事業活動の促進)
・ 農業と非農業の連携による地域資源活用事業を促進
(障害者等の農業に関する活動の環境整備)
・ 障害者等の就業機会増大を通じた地域農業振興を図る
(中山間地域等の振興)
・ 中山間地域等における新規作物導入、地域特産品生産・販売、生活環境整備、生活利便性確保等を推進
・ 農業生産条件の不利を補正し、多面的機能確保を図る
(鳥獣害の対策)
・ 鳥獣による被害防止、捕獲鳥獣の利用促進等を推進
(都市と農村の交流等)
・ 余暇活動による農村滞在機会提供、都市と農村の交流促進、都市と農村の双方居住環境整備、市民農園整備等を推進
・ 都市農業の振興を図る
■第3章 行政機関及び団体
(行政組織の整備等)
・ 国及び地方公共団体は、食料・農業・農村施策で連携し、行政組織の整備・効率化・透明性向上に努める。
(団体の相互連携及び再編整備)
・ 国は、食料・農業・農村団体の相互連携促進と効率的な再編整備を推進する。
■第4章 食料・農業・農村政策審議会
食料・農業・農村政策審議会は、農林水産大臣の諮問機関として、食料・農業・農村に関する重要事項を調査審議し、意見を述べる役割を担っています。主な権限は以下のとおりです。
・ 食料・農業・農村に関する重要事項の調査審議
・ 農林水産大臣又は関係各大臣への意見建言
・ 土地改良法等関係法令に基づく権限の処理
構成は、委員30人以内で、学識経験のある者が任命されます。
その他、資料提出等の協力を関係機関に求めることができ、組織、所掌事務及び運営の詳細については政令で定められます。
<一次情報>
食料・農業・農村基本法
https://www.maff.go.jp/j/basiclaw/index.html
食料・農業・農村基本法(食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律(令和六年法律第四十四号)を反映)
https://www.maff.go.jp/j/basiclaw/attach/pdf/index-12.pdf
<関連情報>
■農林水産大臣談話「食料・農業・農村基本法改正法の成立に当たって」
https://www.maff.go.jp/j/basiclaw/danwa.html