【レポート】食品産業動向調査(令和6年7月調査)が公表されました
【レポート】食品産業動向調査(令和6年7月調査)が公表されました(本文2,399文字)
株式会社日本政策金融公庫は、令和6年10月3日付にて「食品産業動向調査(令和6年7月調査)」を公表しました。関連する報告をあわせて、食品産業動向を簡単にご展望します。
<概要>
本調査は、全国の食品関係企業を対象に、食品産業の景況や経営状況を把握することを目的として、食品製造業、卸売業、小売業、飲食業など、全国の幅広い食品関係事業者を対象に実施されました。
調査結果によれば、令和6年7月時点での食品産業の景況は、食品製造業では生産量が増加し、売上高も上昇していることなどから、前年同期比で改善傾向にあるとされています。一方、原材料費の高騰や人手不足などの課題も浮き彫りになっています。
また、経営者による今後の見通しとしては、景況の改善を期待していると回答しており、輸出の拡大や新商品の開発など、積極的な経営戦略を採用する企業が増えているとしています。
<DIについて>
本調査の結果は業況判断指数(DI、Diffusion Index)で示されています。
業況判断指数とは、「日銀短観(日本銀行の全国企業短期経済観測調査)」で発表される景気の判断指数のことです。「景気が良い」と感じている企業の割合から、「景気が悪い」と感じている企業の割合を差し引いたものです。
景気変動に関係する複数の指数を合成して算出され、0%から100%の間で変動します。DIの値が継続的に50%を超えると「景気が上向き」、50%を下回ると「景気が下向き」と判断されます。
<報告内容>
Ⅰ 食品産業の景況について
景況DI・・・ 令和6年上半期の景況DIは3.2で、前回(令和5年下半期)から10.0ポイント低下しました。令和6年下半期の見通しは-3.6で、さらに低下する見込みです。これは、全体的な景況感が悪化していることを示しています。
業種別景況DI・・・ すべての業種で前回から低下し、特に卸売業と飲食業での低下が顕著でした。製造業は8.7、卸売業は4.5、飲食業は35.7と、すべての業種でプラス値を維持していますが、前回からの低下が見られます。
景況DI業種別詳細・・・ 業種別の詳細な景況DIは、製造業が8.7、卸売業が4.5、飲食業が35.7と、すべての業種でプラス値を維持していますが、前回からの低下が見られます。特に飲食業での低下が顕著です。
仕入価格DI・・・ 79.7でわずかに低下。仕入価格の上昇が続いています。
販売価格DI・・・ 55.7で前回から低下。販売価格の上昇ペースが鈍化しています。
販売数量DI・・・ -9.1で、令和3年下半期以来のマイナス値となりました。販売数量の減少が続いています。
雇用判断DI・・・ 雇用状況に関する指標で、全体的に低下傾向にあります。特に飲食業での雇用状況が悪化しています。
設備投資DI・・・ 17.8でプラス値を維持するも、前年より1.4ポイント低下しました。設備投資意欲はあるものの、前年より減少しています。
設備投資の内容・・・ 設備投資の具体的な内容や目的については、主に生産効率の向上や新製品開発に向けた投資が行われています。
Ⅱ 今後の経営発展に向け取り組みたい課題等について
経営発展に向け取り組みたい課題・・・ 「人材確保」、「人材育成」、「商品・生産物の見直し、開発」が高い割合で回答されました。特に人材確保と育成が重要な課題とされています。
雇用が不足していることへの対応策・・・ 「業務の効率化・省人化」(57.7%)、「賃金の引き上げ」(55.0%)、「外国人材の活用」(25.2%)が主な対応策として挙げられました。特に業務の効率化と賃金の引き上げが重要な対応策とされています。
Ⅲ 海外展開の取組状況について
海外展開(輸出・輸出以外)の取組状況・・・ 「取り組んでいる」と回答した割合が26.1%、「今後、取り組みたい」と回答した割合が16.8%でした。海外展開に積極的な企業が増加しています。
輸出の取組状況(経年比較)・・・ 輸出に関する取り組みの年次比較では、全体的に増加傾向にあります。特にアジア地域への輸出が増加しています。
海外展開に関連する売上高の割合・・・ 海外展開が売上高に占める割合は、全体の10%程度とされています。特に大企業での割合が高いです。
売上規模別の海外展開(輸出・輸出以外)の取組状況・・・ 売上規模別の詳細な取組状況では、大企業が積極的に海外展開を行っており、中小企業も徐々に取り組みを進めています。
輸出している輸出品目・・・ 輸出している、または輸出したい品目としては、加工食品、飲料、調味料などが挙げられています。
輸出している(したい)先の対象国(地域)・・・ 輸出先の国や地域としては、アジア、北米、ヨーロッパが主な対象となっています。
輸出以外(現地生産、現地店舗など)に取り組んでいる(したい)先の対象国(地域)・・・ 輸出以外の取り組み先の国や地域としては、アジア、北米、ヨーロッパが主な対象となっています。
海外展開を行うメリット・・・ 海外展開のメリットとしては、「新たな市場の開拓」、「売上の増加」、「ブランド力の向上」が挙げられています。
海外展開における課題・・・ 製造業では「現地の法律や商習慣情報の不足」(32.7%)と「販路の確保」(32.7%)、卸売業では「現地の法律や商習慣情報の不足」(40.9%)と「海外展開を任せられる人材の育成・確保」(40.9%)が主な課題として挙げられました。
<まとめと展望>
日本政策金融公庫の「食品産業動向調査(令和6年7月調査)」によると、食品産業の景況感は全体的に悪化しています。特に卸売業と飲食業での低下が顕著であり、仕入価格と販売価格は上昇傾向にある一方、販売数量は減少しています。人材確保と育成が重要視され、雇用不足への対応策として業務の効率化や賃金の引き上げが挙げられ、海外展開においてはアジア地域への輸出が増加しています。今後新たな市場の開拓が期待されますが、現地の法律や商習慣情報の不足が課題であると展望しています。
報告の詳細は<一次情報>からご確認ください。
<一次情報>
【日本政策金融公庫】食品産業動向調査(令和6年7月調査)
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/topics241003a.pdf
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