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人間を捨てた宮野真守

私は、宮野真守のファンになってもうすぐ9年が経とうとしている。
たった9年、されど9年。宮野真守の変遷をこれでもかと見てきた。声優としての宮野真守は好きだが、それ以上に舞台俳優としての宮野真守が大好きだ。

2017年、王家の紋章(再演)、髑髏城の七人
2019年、ウエストサイドストーリー
2020年、カチカチ山
2021年、ウェイトレス
2022年、神州無頼街

これだけの舞台で輝く真守を観てきた。舞台で輝く宮野真守については随分と知っている気がしていた。声優、アーティストともまた違った姿。生身で生きていることを、熱を、そばで感じられるおもしろさ。ワクワク感。

ジョジョのミュージカルに真守が出ると聞いたとき、実はそんなにワクワクしなかった。ジョジョを見たことがなかったからだ。「ディオ」と言われても、「第1部」
と言われても、あまりピンとこなかった。ただ、有名な作品であることは知っていたし、また「帝国劇場に立ってくれるということ」が、とても嬉しかった。

ジョジョを知らなくても、きっと真守なら楽しませてくれると信じていたから、いつもの通り3公演応募して、2〜3公演行こうと決めた。結果的に初日、半ば、千秋楽と3公演チケットがとれた。

年末、真守の悲しいニュースがスクープされて、ブログで定型文が投稿されて、それきりブログが更新されずにいた。きっと、稽古が大変なのだろうと思いつつも、最後のブログがアレだったもので、少し不安も抱えていた。そんな中で飛び込んできたニュース。「初日延期」。帝劇でやるようなミュージカルでそんなことがあるのかと、戸惑った。初めて初日公演に行ける!とわくわくしていたのに、寂しくなり、批判の言葉で溢れるSNSを見て心を痛め、どうかカンパニーのみなさんが元気であることを祈るしかなかった。
初日にきっと更新されると思ったブログは、ひっそりと静まり返っていた。そんな画面をぼんやりと眺めていることしかできなかった。

さらなる延期。ようやく幕が開く。なんとか私の2公演目は守られそうだった。
公演終了後、ようやく真守はブログを更新してくれた。

約2ヶ月ぶりくらいの更新だった。淡々と、固い言葉ではありながらも、真守の言葉だと思った。真守の想いが強く感じられた。

そして、2/14(水)。私にとっての1公演目。本来ならば、2公演目になるはずだった日。
ジョジョに関する知識は一切入れずにいった。仕事が押して、2分ほど遅刻してしまったので、最初の歌は1番後ろの入り口のところで見た。引きの絵で見たからこそ余計に感じたのかもしれないが、舞台装置がすごい。バンドが上にいる。生贄が捧げられているし、迫力がすごい。席についたあたりではじまる、ダリオとジョースターの出会い。なんだこの回る装置は。開始5分でわかる、こりゃ小屋入りしてから大変だっただろうなあ…………(遠い目)

1幕。ジョジョとディオの出会い。
あまりにもジョジョの知識を入れなさすぎたため、「ジョナサン・ジョースター」で「ジョジョ」なことすら知らなかった。それでも、ジョジョとディオがどんな育ち方をして、どんな風に交わり、衝突しているのか、手に取るようにわかった。
ディオが馬車から降りるところが「ディオすぎる」とツイートされていたのは知っていたけど、ディオを知らない私でも一瞬にして空気が変わったことを感じた。観客の目をグッと惹きつけるその姿に、さすが私の推し!と誇らざるを得なかった。
真守の足が長いことは十二分に知っていたつもりだったのに、改めて感じるその長さ。ジョジョ役の松下さんもだいぶ長かったけれど。
原作未読勢にとっては衝撃的なエリナとのキスシーン。角度も勢いも最高。目と口をまんまると開けて固まってしまった。

悪に染まっていくディオと、その葛藤。苦しんで苦しんで、もがく様子が強く印象に残った。たったの少ししか見ていないのに、ディオに感情移入してしまう。幼少期の家庭環境って本当に大事…………!!!(そこ)

そして、人間をやめたディオ。壮絶な演出。
からの第2幕。

時間をあけて登場したディオは、まさに『妖艶』だった。どこからどう見ても闇堕ちしていて、ゾクゾクした。「ああ、もう昔のディオは戻ってこない。死んでしまったんだ。」と思わずにはいられなかったし、「この物語が終わるためには、ディオが死ぬしかないんだ」と必然的に思わされた。原作を読んでいなくてもわかった。でも、まさかの結末だった。ジョジョと相討ちになるなんて。

相反する生き方で、相反する考えをもって育ってきたジョジョとディオは、最後まで拮抗し、2人仲良く地獄行き。きっと違う形で出会えていたら、心の底から仲の良いライバルでいられたんだろうなあと思わずにはいられない。

カーテンコールにはいつもの"まもちゃん"がいた。ニコニコとし、松下さんを可愛がり、他の役者さんに可愛がられ、抱きつく。ギャップでどうにかなりそうだった。あんな真守の姿、ずっと見てきたのに。みんな、どうにかならないの?あんなギャップ見せつけられて!!と思って仕方がなかった。

初日から無事に開幕していたら、と思わずにはいられない。でも残念ながらそれも含めて、"伝説"となってしまった。幕が開いてからSNSに溢れる感想は「宮野真守すごい」ばかりだった。「宮野真守がすごいなんてね、当たり前なんだから!!!」と思いながらドヤ顔で観劇していたけど、恐れ入りました。すごすぎるこれは。

そして、誰もが口を揃えて言う「シングルキャストはすごすぎて心配になるが、宮野真守以外が演じられるとは思えない。」まさにその通り。本当に宮野真守は唯一無二のエンターテイナーなんだなと思った。

千秋楽の昼公演もなんとかみにいった。
なんだか違かった。セリフ?雰囲気?キスも長くなかった?人間やめるところ、さらに人間味が増してて苦しかった。千秋楽までの間にアニメもマンガも少し触れたけど、生ってすごい。ますますディオの虜になってしまった……

真守は、舞台のたびに命を削って、覚悟を決めて演じる。その人を全身全霊で演じる。人間すらやめられるんだから。何にだってなれるね。だから大好き。改めて好きだと思った。誇らしく思った。
4/14千秋楽。本当におめでとう。お疲れ様です。再演待っています。

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