見出し画像

【Tree of Savior M】火力型装備カードの選択についての計算

2/15追記:最後に「早見表」を追加してみました。

 オンラインRPG「Tree of Savior M」の攻略記事です。RPGでは色々な武器とか防具とかを装備して自分のキャラクターを強化していきますが、このゲームの場合、それらの他に「カード」という装備品があります。これは、「攻撃力 +3.01%」とか「スキルクールタイム -4.76%」とか、「闇属性対象を攻撃した時、ダメージ量 +1.73%」とかいった効果を付与し、キャラクターを強化してくれるものです。カードの装備枠は初期状態では3枠あり、色々な種類のものの中から3つを選んで装備することができます。

 このカード装備、基本的には自分の好みや状況に合わせて選んでいけばよいと思います。しかし、例えば「火力を上げたいんだけど、火力に関係するカードが『攻撃アップ』、『命中アップ』、『スキルダメージアップ』…etc.というように何種類もある。どれを選べばいいだろう?」というように、カード選びに悩む場面がたびたびあります。そうやって悩む過程もなかなか楽しいものですが、何か方針を立てるために情報が欲しい、という方もいらっしゃるかと思います。

 本記事では、私がゲーム内で調べたことや計算したことを書いてみました。計算は主として火力を上げるタイプのカードについて書きました。カード選びに一番悩むのはそこだと思ったからです。ご参考になれば幸いです。

 なお、結論としては、身も蓋もない話かもしれませんが、「どれを選んでもあまり違わない」になります(笑)。
 でも特定対象に対してだけ与ダメを増加するカード(たとえば悪魔型モンスターに対してだけ与ダメを増加するカード)は、やはり「汎用性がない」という欠点に対する代償として高い効果が設定されているようで、無意味ではありません。「攻撃力 +〇%」や「命中 +〇%」のように相手を選ばない汎用的なカードと比べると、1枚あたりのダメージ差は大体3%くらいにしかなりませんが、それを3枚装備したら、約9%の差になりそうです。悪くない数字なのではないでしょうか。

 以下では、まずカードの基本仕様について確認します。続いて「1-2. 火力型装備カードの実際の効果量」のところで、カードの実際の効果量が表記上の効果量とは必ずしも一致していないことを示します。ただそこの部分は、文量は多くないですがちょっと「細かい話」になってしまいました。そこは私のように細かい計算をしようとする人間や、本記事の結果に疑念が生じて自分でも検証してみたいと思った方には、とても重要な部分なのですが、そうでないという方は、読み飛ばしていただいてもよいかと思います。実際私も、この記事の準備をするまではそこに書いてあるようなことはほとんど気にしたことがありませんでした(笑)。「2. 各火力型カードによる与ダメージ増加量の計算」のところで各計算結果を示すので、とりあえず各カードごとに与ダメージがどれだけ変わるのかだけを知りたいという方は、そこだけ見るというのもよいかと思います。・・・が、実際書いてみたらそれなりのボリュームになってしまいました。なので忙しい人は「3. 結局どうすればいいの?」だけ見るというのも手かと思います。

※2/15追記:さらに忙しいという人のために、最後に「4.早見表」を追加してみました。


1.カードの仕様

1-1.カードの基本仕様

 冒頭で述べたように、装備できるカードには様々な種類のものがあります。下の画像は、ゲーム内で見れる画面ですが、私が現在までに所有しているカードの効果の一覧です。所有中のカードを一覧表示してくれる画面において、右下のボタンを押すとポップアップする画面です。

カードの効果のほぼ一覧

 カードの入手手段は、ダンジョンクリア時の報酬か、もしくは「フィールドボス」を倒したときの報酬です。

 また、例えば同じ「攻撃力アップ」という効果でも、カードの「レア度」によって効果量が異なります。「レア度」はカードアイコンの枠の色によって分かります。現在、緑、青、紫、赤の4種類です。この順に「レア度」が高くなっていきます。つまり緑が最も低く、赤が最も高いです。ただ、後でも述べますが、レア度の違いによる効果量の違いはわずかです。

 次に、これも冒頭で述べたように、装備できるカードの枠は初期状態では3つです。自分が所持しているカードの中から3つを選んで装備することができます。装備枠は特定の条件を満たすことで最大6つまで増やすことができます(2024年2月現在)。ただし、同じカードを複数装備することはできません。例えば本記事冒頭の写真にある「異界のグレイシアカード」を2枚以上装備することはできません。しかし、カードの名前が違っていれば、同じ効果のものでも複数装備することができます。
 例えば3つのカード枠を全部「防御力アップ」で埋めたいと思った場合、「異界のグレイシアカード」、「ブランブルカード」、「マインローダーカード」の3枚を装備すればよいです。それらはいずれも「防御力アップ」の効果を持つカードです。

 最後に、カードは「強化」することができます。入手したての時は「Lv1」(レベル1)ですが、他のカードを最大5枚まで強化素材として消費することにより、レベル2、レベル3、と上げていくことができます。現在、各カードの最大レベルは10のようです。

カード強化画面

 素材として消費するカードには何を選んでもよいのですが、強化しようとしているカードと同じ名前のカードだと、強化の成功率が上がります。また、現仕様では1度に最大5枚まで投入でき、投入する枚数が多いほど強化の成功率が上がります。
 ただし、レベルが上がってくると、投入したカード1枚あたりの「成功率」の上がり幅が小さくなっていきます。上の画像はカードのレベルが5のものを強化しようとした時の画像ですが、同じ名前のカードを1枚投入するごとに増える成功率は「33%」となっています。画像では2枚投入して「66%」にしています。
 多くの人は、「成功率100%」になるまで投入カードを増やし、その段階で強化を実行するのではないでしょうか。私もそうです。そして各レベルごとに「成功率100%」にするのに必要な素材カードの枚数は、以下の表のようになります。

$$
\text{表1.各レベルごとに「成功率100%」で強化していく場合の必要枚数}\\[10pt]
\begin{array}{cll}
\text{現Lv}\to\text{次Lv} & \text{必要枚数} & \text{累積枚数}\\ \hline
1\to2 & 1 & 1\\
2\to3 & 1 & 2\\
3\to4 & 2 & 4\\
4\to5 & 2 & 6\\
5\to6 & 3 & 9\\
6\to7 & 3 & 12\\
7\to8 & 4 & 16\\
8\to9 & 4 & 20\\
9\to10 & 5 &25\\
\end{array}
$$

なお、強化に「失敗」すると、素材として投入したカードはすべて消滅します。でも強化しようとしていたカードは消滅しません。親切設計ですね。

 レベルが1上がるごとに効果量がどれくらい上がるかは、どうやら全レベルを通して一定のようです。私が色々なカードで見た範囲では一定でした。例えば上図の「レキシファーカード」の場合、Lv5からLv6への強化によって効果量が「+1.73%」から「+1.96%」へと0.23%上昇しますが、その上昇量(0.23%)はLv1からLv2への強化でもLv9からLv10への強化でも同じです。なので、実際にLv10まで上げなくてもLv10での効果量がいくつになるかを推定することができます。例えばレベル1での「レキシファーカード」の効果は「攻撃力 +0.81%」ですので、レベル10では$${0.81+0.23\times9=2.88}$$%になると予想されます。そして実際そうなります。

1-2.火力型装備カードの実際の効果量

 ここで「火力型装備カード」と呼んだのは、自分のキャラクターが相手に与えるダメージ量を向上させるカードのことです。「攻撃力 +〇%」、「命中 +〇%」などの効果を持つカードです。また、それらの汎用的なもの以外に、特定の相手に対してだけ効果を発揮するものとして、例えば「悪魔型の敵へ与えるダメージ +〇%」というもの等もあります。

 ところがこれらのカード、ゲーム内で実際に装備してみると、「+〇%」という数字は必ずしもそのまま適用されるわけではないということに気づきます。例えば「攻撃力 +3.01%」のカードを装備した時、それ以前の攻撃力が「最小攻撃力25148、最大攻撃力31434」ならば、それぞれが1.0301倍ずつされて「最小攻撃力25905、最大攻撃力32380」になりそうなものですが、実際には「最小攻撃力25709、最大攻撃力32136」になります。3.01%のアップではなく、それぞれ2.31%および2.33%のアップです。それぞれ「3.01」の0.7411倍ならびに0.7419倍です。他の「攻撃力アップ」カードについても調べてみると、どれもやはり表記上の数字の約0.74倍でした。

 実際に他のカードについても調べてみた結果が以下になります。(後で参照する場合の利便性を考慮して、「攻撃力アップ」についても再掲します)。
 ただし注意点として、以下のデータは「攻撃力25148~31434、命中率32.08%~55.90%、貫通率23.32%、クリティカル発生27.71%、クリティカルダメージ3967」ぐらいの状態で調べたデータです。多分、レベル100台の標準的なプレイヤー(よりひとまわり弱いぐらい)の数値に近いものだと思うので、多くのプレイヤーには下記の数値が大体当てはまると思います。しかし装備等が現仕様における最高水準にまで到達しているプレイヤーの場合には、値がズレるかもしれません。心配な場合は、ご自身でも調べてみてください。カードの付け外しをして、付けたときと外したときの数値を見比べるだけなので、わりとすぐに調べられます。

 さて、少なくとも上記のステータス帯における、火力型装備カードの実際の効果は次のようになります。

  • 「攻撃力アップ」は、表記%の約0.74倍の%で攻撃力を上げる。例えば「+3.01%」なら、実際にはその約0.74倍の2.32%ほど攻撃力が上がる(攻撃力が1.0232倍になる)。
     なお、クレリックの場合武器や防具によって攻撃力が増加するとそれに伴って「治癒力」(味方に回復スキルを使ったときの回復量を決めるもの)も増加するが、「攻撃力アップ」のカードでは「治癒力」は上がらない

  • 「命中アップ」は、ステータス画面の括弧内の%の数字に、表記%の約1.07倍が加算される。例えば「+13.45%」のカードを、「命中 15453 (32.08%) 」の時に装備すると、「命中 15950 (36.32%) 」になる。左の「15453」の数字が約1.3216倍されていると見てもいいが、括弧内の数字で考えたほうが後述するように実用的である。(ちなみに「命中」とは、このゲームでは「命中攻撃」という普段より強い攻撃が発生する確率のことです。)

  • 「貫通アップ」は、ステータス画面の括弧内の%の数字に、表記%の約1.04倍が加算される。(ちなみに「貫通」とは、「3秒間相手の防御を20%無視する」というバフが自分にかかる「貫通攻撃」という攻撃が発生する確率のことです。)

  • 「クリティカル発生アップ」は、ステータス画面の括弧内の%の数字に、表記どおりの%数値が加算される、と見るのがよさそうである。

  • 「クリティカルダメージアップ」は、表記%の約0.31倍の%で「クリティカルダメージ」を上げる。例えば「+2.65%」のカードを、ステータス画面上の「クリティカルダメージ」の数値が「3967」のときに装備したら、3967×(1+0.0265×0.31)=4000になる。
     そして実際、その増えたぶんだけ通常攻撃のクリティカルダメージが上がるようである。例えば3967から4000に上がったなら、通常攻撃がクリティカルになったときのダメージは約40ほど上がる。そしてスキル攻撃のダメージが通常攻撃のN倍なら、クリティカルダメージも大体通常攻撃のN倍である。

  • 「スキルダメージアップ」や「特定の相手に与えるダメージアップ」は、表記どおりの%がステータス画面に表示される。そして実際にほぼその通りの%で与ダメージが上がるようである。

 なお、表記からのズレ(ズレてないのもありますが)が生じる理由としては、「バラック家具によって上がったぶんのステータスは対象外にされている?」とか、「フェローの所持効果で上がった分のステータスは対象外にされている?」とかいろいろな可能性が考えられたのですが、よく分かりませんでした。

2.各火力型カードによる与ダメージ増加量の計算

 ここでは、火力型カードによる実際の効果が上記のようなものであるという観測結果に基づいて、それらの値を与ダメージ期待値の経験式に代入し、各カードが実際にどれだけ与ダメージの期待値を上げるかを推定します。経験式としては、前回の記事

【Tree of Savior M】命中・貫通・クリティカルの計算|EK (note.com)

で求めたものを用います。

(ただし、そこでは「普通のダメージの平均値(「基本ダメージ」)を1とした場合の期待値」をEとしていましたが、ここではそこに基本ダメージをかけたものを用います。本記事においてはそのほうが便利であると思われたからです。)

 キャラクターのステータス(能力値)としては、私が「1-2. 火力型装備カードの実際の効果量」で書いた内容を調べたときのステータスを用いました。(が、クリティカル発生は間違えて27.71%でなく20%で計算してしまいました。でもまあ問題ないでしょう…多分)。そしてlv100のモンスター「追撃者レッドインフロホルダーアーチャー」を通常攻撃で攻撃したときに観測されたダメージを基本ダメージとして用いました。スキル攻撃の場合は、単純にそれが何倍かされる、と考えてよいです。例えばスキル「スマイト」なら約3~4倍です(詳細は、このあと書く予定の別記事「クレリックのスキル振りについて」を参照してください)。

2-1.普通のモンスターが相手の場合

 ここで「普通のモンスター」と呼んだのは、回避率もブロック率も低いモンスターのことです。このゲームではモンスターのほとんどがそうであると思われるからです。ボスモンスターでも同じです。計算結果は以下のようになります。

各カード装備時の与ダメージ期待値。普通のモンスターが相手の場合

 表中の「与ダメ期待値」は、与ダメージの期待値のことです。「最大値に対する割合」は、与ダメ期待値の中で最大値にあたるものを1とした時に、その行の与ダメ期待値はいくつになるかを示したものです。カードの「攻撃アップLv10(青)」とは、「攻撃力 +〇%」という効果を持つカードのうち、カードの枠の色が青であるものをレベル10まで強化したもの、という意味です。「特定ダメージアップ」とは、特定の攻撃ダメージだけをアップさせる、もしくは特定の対象を攻撃した場合だけダメージをアップさせるカードのことです。スキルダメージ限定とかボス限定とか悪魔型モンスター限定とかいろいろ種類がありますが、効果量の数値は共通のようでしたので、ひとまず一緒くたにしました。「クリティカル倍増」とは、「クリティカル攻撃が発生した時、〇%の確率でクリティカルダメージを2倍にする」というカードのことです。

 カードの枠の色は「レア度」を表し、レア度は緑<青<紫<赤の順に高くなります。そしてレア度が高いほど効果量が多くなります。なので、青枠の攻撃アップカードと緑枠の特定ダメージアップカードとを比較するというのは厳密に言えば不公平です。実際、本当は全種類のカードを同じレア度に揃えて比較したかったのですが、未実装のものがあったり、私が調べきれなかったものがあったりして、仕方なく上のような比較にしました。
 しかし、現状、カードのレア度による効果量の違いはわずかです。例えば「攻撃力アップ」のカードで言えば、緑枠のものは「+2.88%」、青枠のものは「+3.01%」、赤枠のものは「+3.14%」です(いずれもLv10のときの値。ただし赤枠のは「1-1. カードの基本仕様」で述べたパターンからの推定値)。なので、それほど大きな問題ではないと思います。

 さて、表中で赤い数字にしたのが、最も高い与ダメージ期待値を出しているところです。そしてオレンジの数字にしたのは、二番目に高いものです。
 見ると、最も高いのは「特定ダメージアップ」のカードを装備した場合です。緑枠カードでレア度が低いにも関わらず最高値です。やはり「汎用性がない」という欠点に対する代償として高い効果を設定されているようです。
 次に高いのは「貫通カード」です。とはいえこれは、レア度が「紫」だからというのもあるでしょうが、カードを装備する前の貫通発生率が約20%という低い値だったからと考えられます。詳細は省きますが、以前の記事「命中・貫通・クリティカルについての計算」での分析の経験から、そのような要因が考えられるのです。そこで次の2-2節では、カード装備前の貫通発生率がもっと高い値である場合を見ます。

 ところで、「意外に攻撃アップが頑張っているな」と思ったプレイヤーの方も多いのではないでしょうか。上の表で「貫通アップ」を上記の理由により保留すると、二番手は「攻撃アップ」になります。
 私もちょっと意外でした。ゲーム内で各種カードを見てみると、「攻撃アップ」のカードの数字は他のカードの数字に比べて随分低いなと思わせられることが多いからです。例えば同じレア度「青」同士で比較すると、攻撃アップのカードはレベル10で「3.01%」ですが、命中アップのカードはレベル10でなんと「13.45%」です。
 しかしこうして計算してみると、最終的な与ダメージ期待値はむしろ攻撃力アップのほうが高くなったりもする、ということが分かります。これは本記事で示す残りの計算結果においても同様です。計算間違いかな?とも思いましたが、特に間違いの箇所は見つかりませんでした。そこであらためて期待値の計算式を思い起こしてみると、これは必ずしもおかしな現象ではないということに気づきました。詳しい説明はひとまず割愛しますが、計算式ひとつで示すならば、次のようになります。

$$
\begin{align}
&[1.25(h+0.1345)+\{1-(h+0.1345)\}]-\{1.25h+(1-h)\}\nonumber \\
=&1.25\times0.1345-0.1345\nonumber \\
=&0.0325\nonumber
\end{align}
$$

これ、見事な数字なんです。多分偶然ではないですね。このゲームを開発したチームの中で誰かこの計算をした人がいて、そしてその結果に従って上述のような攻撃カードと命中カードの数値が設定されたのではないでしょうか。(詳しい説明はいずれ短いPDFとかにしてここに貼ります。)

 さて、参考までに、もう少し詳しく色々なパラメータを載せた表も以下に示します。

普通のモンスター相手における、色々な設定パラメータと与ダメージ期待値

文字小さいですね(笑)。実は最初はこれをこの節における結果表として示そうとしていました。しかし情報のつめこみすぎなのか、文字が小さくなってしまいました。そのため本節の冒頭では思い切って3列だけの表にした次第です。こちらの表で肌色のマスにしたところは、そのカードによって数値が変わったり計算式が変化する部分です。

 本節の最後として、計算上の細かい事項を述べます。関心のない方はスキップしてしまって構いません。

 その事項というのは、攻撃力とクリティカル発生率については単純な仮定を用いた、というものです。まず攻撃力は、例えば3%増加したら単純に与ダメージも3%増加するとしました。私が調べた範囲では攻撃力と与ダメージとの間には単純な一次関数の関係があるようだったからです。また、真の関数が実際にはもっと複雑なものだったとしても、今回見るような数%の範囲の変動ならば一次関数と仮定しても十分よい近似になるからです。物理学ではよく使う手です(多分)。またクリティカル発生率についても、例えば「3%アップ」と言われたら単純に実クリティカル発生率(戦闘場面で実際にクリティカルが発生する確率)も3%増加するとしました。実際は、上にリンクを貼った記事でも考察したように、ステータス画面の「クリティカル発生」が実クリティカル発生率とどのように結びつくのかについては2つの可能性があります。しかしどちらが正解(もしくはより正解に近い)だったとしても、やはり数%の増減の範囲では上のような単純化の仮定をおいても十分よい近似になるからです。

2-2.元の貫通発生率が高い場合

 前節では「貫通アップ」の効果が二番目に高いという結果になりました。しかしこれは、以前に書いた記事「命中・貫通・クリティカルについての計算」での分析の経験から、カード装備前の元々の貫通発生率が低かったためではないかと考えられました。そこで、元の貫通発生率が高い場合について観測と計算を行ってみました。攻撃対象は前節と同様に「普通のモンスター」です。結果は以下のようになりました。

普通のモンスターが相手で、こちらの貫通率がもともと高いとき

 相変わらず最高値は「特定ダメージアップ」です。レア度「緑」であるにも関わらずです。他方、二番手のカードは、さきほどの貫通カードではなく命中カードになりました。これはおおむね予想通りの結果でした。前回の記事「命中・貫通・クリティカルの計算」で述べたように、貫通発生率が高くなってくると、そこからさらに貫通発生率を上げるよりも、命中発生率を上げたほうが与ダメージ期待値は高くなる場合があるからです。それに該当するものと思われます。

 参考までに、その他のパラメータも載せた表を以下に示します。前節(「2-1.普通のモンスターが相手の場合」と違う点は、カードを装備する前の貫通発生率を0.2332ではなく0.55に設定したという点です。

元の貫通発生率を高くしたとき

2-3.相手の回避率が高い場合

 どんどんいきましょう。次は相手の回避率が高い場合です。回避率50%として計算してみました。

相手の回避率が高いとき

多くの方が予想していた通りの結果だと思います。「命中カード」が第一位になりました。「命中発生率」はこのゲームでは「命中攻撃」という特別な攻撃が発生する確率のことですが、この「命中攻撃」は「回避」できないという仕様になっているからです。

 参考までに、その他のパラメータも載せた表を以下に示します。「2-1.普通のモンスターが相手の場合」における表と違う点は、相手の回避率を0ではなく0.5にしているという点です。

相手の回避率を高くしたとき

2-4.相手のブロック率が高い場合

 次に、相手のブロック率が高いときを見てみます。このゲームでは相手からのダメージを緩和する手段として「ブロック」というものがあります。その成功率は装備等によって決まり、成功すると相手からのダメージを75%減少させます。計算結果は以下の通りです。

相手のブロック率が高いとき

 これも多くのプレイヤーの方の予想通りだと思います。「貫通カード」が第一位になりました。「貫通発生率」は「貫通攻撃」が発生する確率のことですが、この「貫通攻撃」は「ブロック」することができないという仕様になっているからです。

 参考までに、その他のパラメータも載せた表を以下に示します。「2-1.普通のモンスターが相手の場合」における表と違う点は、相手のブロック率を0ではなく0.5にしているという点です。

相手のブロック率が高い場合

2-5.元のクリティカルダメージが高い場合

 次に、元のクリティカルダメージが高い場合を見てみます。これは、武器や防具のカスタマイズによって「クリティカルダメージ」のパラメータを高くしているプレイヤーなどが該当します。

元のクリティカルダメージが高いとき

 最高値はやはり「特定ダメージアップ」ですが、ここでは2位が「クリティカル発生アップ」になっています。「せっかく上げたクリティカルダメージ、もっと出るようにしよう」ということのようです。

 参考までに、その他のパラメータも載せた表を以下に示します。「2-1.普通のモンスターが相手の場合」における表と違う点は、カード装備前の「クリ倍率」、つまりクリティカル攻撃が発生したときに普段のダメージが増加される倍率を、約1.2ではなく1.4にしてみたという点です。「クリティカルダメージ」を上げるということは、そこの数字を上げるということと結びつくからです。

「元々のクリティカルダメージが高いとき」を、「クリ倍率」が高いという形で表現

2-6.元のクリティカル発生率が高い場合

 元のクリティカル発生率が高い場合は以下のようになります。

元のクリティカル発生率が高いとき

 前節の考え方の延長で行けば今度は「クリティカルダメージアップ」が高位につくかな、と思いましたが、意外に(?)伸びませんでした。1位はおなじみの「特定ダメージアップ」のままですが、2位は「クリティカル倍増」つまり「クリティカルが発生したとき〇%の確率でクリティカルダメージを2倍にする」のカードとなっています。まあそれはそうかもしれませんね。

 参考までに、その他のパラメータも載せた表を以下に示します。「2-1.普通のモンスターが相手の場合」における表と違う点は、「実クリ率」つまり戦闘で実際にクリティカル攻撃が発生する確率を0.2ではなく0.4としてみたという点です。

元々のクリティカル発生率が高いとき

2-7.秒間攻撃回数が多い場合

 最後に、秒間攻撃回数が多い場合と少ない場合を見てみました。このゲームでは「貫通攻撃」の仕様上、「3秒間に何回攻撃するか」というのがひとつの重要なファクターなのです(詳しくは上でリンクを張った以前の記事を参照してください)。その仕様の関係上、秒間攻撃回数が多いか少ないかによって、効果的なカードの種類が違ってくると考えられました。そこで計算してみた、というのが以下の結果です。
 まず「多い場合」です。これは例えば「一撃一撃のダメージは少ないが、そのぶんそれらを高速連打でたたきこむ」といった戦闘スタイルを取っているプレイヤーに当てはまります。ただし、「持続ダメージ」(「毒」や「出血」によるダメージ)で秒間攻撃回数を稼いでいるという場合はここには該当しません。それらには「貫通」が発生しないからです。
 結果は以下のようになります。

秒間攻撃回数が多いとき

一位は常連の「特定ダメージアップ」ですが、二位は「攻撃アップ」になっています。理由はよく分かりませんが、そうなんですね。

 他方、レア度が「紫」であるにも関わらず貫通が4番手に甘んじているという理由のほうは、前回の記事での分析から推察できます。そこで述べたように、理想的な最高火力状態というのは「3秒に1回は『貫通攻撃』が発生する」(その上で命中・クリティカルが出まくる)という状態です。そうすることで、『相手の防御力を20%無視する』状態(いわば「貫通状態」)が維持されるからです。そして秒間攻撃回数が多い場合、その3秒間の攻撃回数が多いので、貫通発生率が多少低くても貫通状態が発生しやすいのです。そのため貫通発生率を上げる優先度が比較的低いのです(もちろん上げて損はないですが)。

 さて、ここでも参考までに、その他のパラメータも載せた表を示します。「2-1.普通のモンスターが相手の場合」における表と違う点は、「3秒間攻撃回数」を6ではなく10にしてみたという点です。これまで「6」という数字を使っていたのは、それが標準的なプレイヤーの数値かな?と思ったからです。それをここでは10にしてみた、ということです。

秒間攻撃回数が多い場合

2-8.秒間攻撃回数が少ない場合

 次に秒間攻撃回数が少ない場合です。これは例えば「秒間攻撃回数は少なくても、そのぶん威力の高い単発スキルで攻撃する」というスタイルをとっているプレイヤーに該当します。「3秒間攻撃回数」を「3」と設定して計算してみました。

秒間攻撃回数が少ない場合

今度は逆に「貫通アップ」が躍進し、2位になりました。これも以前の分析結果から納得できることです。秒間攻撃回数が少ない場合、その少ない回数の攻撃の間に「貫通攻撃」を出さなければ、理想的な最高火力状態には近づけません。したがって貫通発生率を上げる必要性が比較的大きいのです。

 ちなみに、秒間攻撃回数が少ないスタイルだと3秒ごとに貫通攻撃を出すのが大変、というのは確かにそうですが、だからといってそのスタイルが秒間攻撃回数が多いスタイルに劣るというわけでは必ずしもありません。その短所を補って余りあるほどの高威力ダメージが各攻撃ごとに出ていればいいのです。ここの表と前節の表とで数字を見比べるとこちらの方が劣っているように見えますが、それは前節と本節とで「基本ダメージ」を同じ「12691.2」として計算したからです。実際の戦闘ではこちらの方が基本ダメージが大きくなり、それによって逆転する、ということもありうるでしょう。

 さて、ここでも参考までに、その他のパラメータも載せた表を示します。「2-1.普通のモンスターが相手の場合」における表と違う点は、「3秒間攻撃回数」を6ではなく3にしてみたという点です。

秒間攻撃回数が少ないとき

3.結局どうすればいいの?

 以上の結果を総合的に見ると、次のようなことが言えるのではないかと個人的には思います。

「好きなのを選べばいい」

ちょっと投げやり過ぎですかね(笑)。ただ、これ、必ずしもいい加減な結論ではない気がします。各表で「最大値に対する割合」のところを見れば分かるように、どれを選んでも計算上の差は数%程度です。

 でも、「特定ダメージアップ」(特定の攻撃手段でのみダメージアップ、もしくは特定の攻撃相手にのみダメージアップ)は、一応順位としては常に1位か2位でした。本記事冒頭でも書いたように、やはり汎用性がないという欠点の代償なのか、その効果が発揮される特定の場面では一番高い効果が出るように設定されているようです。

 また、本記事ではその中に「スキルダメージアップ」も含めています。これは文字通り、スキル攻撃によるダメージだけをアップさせるものです(そのはずです)。他にはどんな種類のダメージがあるのかというと、「通常攻撃」と「持続ダメージ」です。
 おそらく多くのプレイヤーの方は「スキルダメージ」を主力に据えているのではないでしょうか。なので「スキルダメージアップ」のカードは多くの場合に良い選択であると思います。

 他方、私自身も意外だったのは、「攻撃アップ」が意外に頑張っているということでした。「攻撃アップ」も良いと思います。ゲーム内でその効果量の数字を見ると「+3%」とかであり、「命中アップ」の「+13%」とかと比べると随分低いような印象を受けます。しかし本文の「2-1. 普通のモンスターが相手の場合」のところでも書いたように、期待値の考え方を思い出してみると、その両者が最終結果に及ぼす影響はほぼ等しいことが分かるのです。どうも開発者のほうで意図的にそういう風に設定したと思われるふしがあります。
 そして「命中アップ」等はその時その時のステータスの状況等によって有効性が上下するものですが、「攻撃アップ」は状況を選ばず常に安定した恩恵をもたらします。

 もちろん、「命中アップ」と「貫通アップ」も良いでしょう。レベル100になると「アーク」という装備品が装備できるのですが、それはある特定の条件を満たすと特別な付加効果を発動させるものとなっています。その条件はランダムに決まるのですが、その中には「命中が50%以上のとき」とか「貫通が50%以上のとき」といったものがあるのです。それらを満たしつつ、ついでに火力も上げる、というものとして、「命中アップ」や「貫通アップ」は有効だと思います。
 また、2-3節や2-4節で見たように、回避率の高い相手には命中アップ、ブロック率の高い相手には貫通アップが、「特定ダメージアップ」をもしのいで1位でした(もちろん各種の状況次第でしょうが)。
 ただし、以前の記事にも書きましたが、命中の上げすぎには注意です。ブロック率の高い相手には不利、というのもありますが、理想的な最高火力状態というのは、3秒に1回は命中攻撃が不発する(そしてその時は貫通攻撃が発生する)という状態だからです。そのため命中を上げすぎるとかえって総合火力が下がるという場合があるのです。

 意外に伸び悩んだのはクリティカル関係のカードでした。でも、決して弱いわけではないです。2-5節や2-6節では、首位常連の特定ダメージアップのカードに次ぐ高い数値を出していたのはクリティカル関係のカードでした。2-5節や2-6節の状況は、装備などでクリティカル関係の数値が高くなっているプレイヤーや、戦闘場面でクリティカル攻撃を強化するようなスキルを愛用しているプレイヤーに該当します。そういうプレイヤーにとっては、クリティカル関係のカードも良い選択肢となるでしょう。

4.早見表

特定ダメージアップのカード
  長所:最強(高回避、高ブロックの相手を除く)
  短所:行く場所ごとに付け替えるのが面倒

※「スキルダメージアップ」なら付け替え不要(ただし通常攻撃や持続ダメージには効果なし)

攻撃アップのカード
  長所:状況を選ばず安定した火力貢献
  短所:一見地味

※数字を見るとlv10で「+3%」とかなので、弱い印象を受けるが、実際は他のカードと同じくらいの貢献をする。「特定ダメージアップ」には負けるが、それ以外だったらむしろこちらの方が強い場合もある。

命中アップのカード
  長所:高回避の相手には最強。他はステータス状況次第。
  短所:(1)状況によって有効性が上下する。
                  (2)命中の上げすぎには注意(高回避の相手を除く)。

※一般に、(1)素の命中が低いとき(「20%」とか)、(2)貫通率に比べて命中率が低いとき、は有効性が高い。
※「命中の上げすぎ」の基準点は大体「80%」ぐらい?
※アークの発動条件を満たすのにも非常に有効。

貫通アップのカード
  長所:高ブロックの相手には最強。他はステータス状況次第。
  短所:状況によって有効性が上下する。

※一般に、(1)素の貫通が低いとき(「20%」とか)、(2)命中率に比べて貫通率が低すぎるとき(-15%くらい?)、は有効性が高い。
※手数ではなく単発高威力で稼ぐという戦闘スタイルのときは命中率≒貫通率でもいいかも。
※アークの発動条件を満たすのにも非常に有効。

クリティカル発生アップのカード
長所:装備やスキルで「クリティカルダメージ」が高いときは準最強。
短所:それ以外の時は他カードに少し劣る

※具体的には、普通の人に比べてクリティカルダメージが2倍くらい強い場合は準最強になるか?
※持続ダメージにはクリティカルが出ないので注意。
※アークの発動条件を満たすのにも非常に有効。

「確率でクリティカルダメージ2倍」のカード
 
 長所:装備やスキルで「クリティカル発生」が高いときは準最強
  短所:それ以外の場合は他カードに少し劣る

※具体的には、クリティカル発生が40%とか50%以上ならば準最強になるか? 
※持続ダメージにはクリティカルが出ないので注意。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?