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豆腐メンタルが初めてカウンセリングを受けるはなし(その4)

前回の記事では、カウンセリングの冒頭の様子と何でも好きなように話していいと言われて話し始めたら涙が出た、というところまで書いた。
今回はカウンセラーさんからのアドバイスの内容について書いていきたい。

ひと通り、私の話を整理し終わったのか、カウンセラーのAさんはメモをとっていたバインダーを抱えるようにして話始めた。

「お話を伺って、さちさんがその上司の方と今以上に物理的に距離を取るのは難しいのかなと感じました。なので、心理的な距離を取ることを意識してみると良いかもしれません。
業務が終わった後や休日も考えて憂鬱という状態は、さちさんにとってその方が心理的にぐっと近づいてしまっている状態です。
正しく怖がる、というとおかしいかもしれませんが、今の状態は実際の怖さが10だとしたら、さちさんの心の中では怖さのイメージが100に膨らんでしまっている状態です。これを、正しく10怖がるだけに出来れば、少し楽になりませんか?」

なるほど。確かに私はネガティブですぐに悪い方向に考えてしまう。起きてもいないことを不安に思う性格だ。心理的な距離をとって必要な分だけ怖がる、もしそんなことが出来れば少し楽になるかもしれない。

「『自動思考』というものがあります。それまでの経験をもとに、起きた出来事に対して瞬間的に浮かぶイメージのことです。人によって思い浮かびやすい思考パターンは異なります。ポジティブなイメージをしやすい方もいれば、反対にネガティブなイメージをしやすい方もいます。
この自動思考を止めることはできませんが、悪いイメージが浮かんできたことに気がつくことはできるんです。
気がつくことができれば、その悪いイメージと距離を取ったり、考えることをやめる、ということを選択することができます。
悪いイメージに飲み込まれてしまう前に、自分からそのイメージを剥がしてしまうんです。
例えば、浮かんできたモヤモヤした気持ちに「モヤモヤくん」と名前をつけて、部屋に置いてある人形とかぬいぐるみに持ってもらいます。
ちょっと今手が離せないから代わりにこのモヤモヤくん持っててねーという感じで渡します。
そうやって外在化させることで、自分から切り離す方法です。」

モヤモヤくんを、ぬいぐるみに渡す??
今まで考えたこともなかった方法で、一瞬戸惑ったのだが、想像してみたら少し楽しそうだった。
うちにはぬいぐるみがいくつかあるけれど、どの子に預かってもらおうか、そんなことを考えた。

「もう一つは、『心配タイム』を作って、いつ心配するかをコントロールする方法です。寝る前の15分とか時間を決めて、日中に何か不安なことや心配事が浮かんでも、心配タイムまで考えるのをやめます。心配タイムになったら、紙に箇条書きで書き出したり、解決策もあれば一緒に書いてしまっても大丈夫です。その紙も取っておいてもいいですし、ぐちゃぐちゃに丸めて捨てても大丈夫です。紙に書く時間がなければスマホのメモでも良いですよ。」

いつ心配するかをコントロールする。そんな方法も考えたことがなかった。自分の中に浮かんできた感情といつも真正面から四つに組み合ってしまう私には目から鱗だった。そうか、そんなに全力で向き合って自分を辛くしなくていいのだ。

「私の方からいっぺんにお話してしまいましたけど、この方法も合う方と合わない方がいらっしゃいます。合わなければやめて構いませんし、プラスになるならやってみる、そういう軽い気持ちで大丈夫です。もっと他に合う方法も見つかるかもしれないですし、まずは試してみてください。」

自分の中の気持ちを吐き出して、自分では思いつかなかった考え方や対処法を教えてもらい、1時間弱の短い時間だったが、だいぶ心が軽くなった気がしていた。
問題が解決したわけではない。苦手な部長との関わりも苦手な仕事も続いていく。
でも、自分の感情の取り扱いを工夫すれば、もう少し楽に生きられるのかもしれない。

最後に、Aさんから次回のカウンセリングを続けるかどうか尋ねられた。1回で解決したと終わる方もいれば、カウンセラーの方と合わないとか期待していたものと違うと感じてやめてしまう方もいるそうだ。
私は、次もまたお願いしたいと伝えた。
会社の契約では、年間最大5回までカウンセリングを受けることができる。5回全部受けるかどうかはわからないが、今日教えてもらった方法を試した結果を、またAさんに聞いてほしいと思った。

次回も業務時間中の夕方の時間を予約した。
私はまた早退してカウンセリングに向かうのだ。

Aさんが入口まで見送ってくれた。お礼を伝えてエレベーターに乗り込んだ。
ビルを出ると、すっかり夜になった外の空気が少し冷たくて心地良かった。

それから家に着いた私は、いくつかあるぬいぐるみの中から一つを選んで両手に抱えた。
「ダイジン、明日から私のモヤモヤくんを君に預けます。よろしくお願いします。」

おわり

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