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【アポカリプティックサウンド】

ラッパの音が聞こえてきた

他の誰の耳にも届かず

この耳にだけ鳴り響いた

吹き出した汗に塗れる額

高鳴る鼓動 揺れる心臓

コンクリを蹴って命を刻む

リビドーが悪戯に囁き出す

こんな時にも関わらず

最期の時にも関わらず

揺れる脳内 白濁の光景

乳房に吸い付く幼き子

母を求めれば涙する 父を思っても涙する

夕暮れの風に揺れるブランコ

静かに寂しく揺れている

ブランコが辺りを歪曲し

歪な空に僕を吸い込んだ

体が渦に飲み込まれた その次の瞬間に目に映る

青く広がる凛々しい空

はみ出し者を燃やす空

足から胴へ 胴から顔へ

清廉な業火に焼かれてく

僕は決して巻き込むまいと

声を殺して身を委ねる

誰も僕には気づかない 

誰も痛みは感じない

ラッパの音が鳴り響く

僕だけが聴ける天使の音色

僕だけ気づいた天使の音色

僕の声には誰が気づく?


重力が運命を決めた

60秒後には消えている意識

地球と口付けを交わして 

肉体は四方へと飛び散る

アポカリプティックサウンドが僕の耳にだけ鳴り渡る

僕は誰も巻き込まずに 天使の音色に酔いしれる

あと10秒もないだろう 1年後には上の空

最期に僕を褒めてくれ 1人でも僕を褒めてくれ

天使の音色をただ独り 無言で聴いてたこの僕を

あぁやだ いやだ どうしてだ

どうしてぼくはこどくなんだ

おねがい まって まちがえた 

まちがえたんだ すうふんまえ

だれか あたまをなでてくれ

だいじょうぶだよといってくれ

意識が光を超えたころ 

地球が僕を抱きしめた

呼吸の音と合奏して

終末の音が轟いた。

世界の顔色は変わらず 呑気にくるくる回ってた


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