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日本刀の国外発送(輸出)手続きと注意点についての解説。

 前提として、手元の刀剣に銃砲刀剣類登録証(以下:登録証)が交付されていること。

※登録証の名義変更がされていること。名義変更は登録証を交付した各都道府県教育委員会で行いますが、登録証自体の記載内容は特に変更ありませんので、お手元の登録証がそのまま有効なものとなります。

古美術品輸出鑑査証明書交付申請

 日本刀を輸出する際には、「古美術品輸出鑑査証明書(以下:鑑査証明)」の交付を受ける必要があります。

 鑑査証明は文化庁で交付を受けることになります。鑑査証明は以下の手順により申請します。

 必要書類・申請書、輸出する品物の写真、登録証のコピー。必要書類はそれぞれ2部準備します。

申請書

 申請書は刀剣用の様式の物がありますので、間違えないように注意してください。
 申請書には送り先の国や地域等を記載します、また、輸出の理由も記載する必要があります。売買や展示会出展など、輸出の理由を、記載例を参考に具体的に明記してください。輸出品目は登録証の記載内容を見ながら転記していきます。

輸出する品物の写真

 写真を撮影する際には、刀剣の外装や鍔、ハバキなど全ての部品を取り外した刀身だけの状態で行います。

 まずは、刀剣の全体の裏表両面を撮影します。この時、刀剣の長さがわかるように物差しなどを並べて撮影します。

 次に、ナカゴ部分の拡大写真を裏表両面撮影します。無銘の場合でもナカゴの拡大写真は必要になりますので、忘れないようにしてください。ナカゴは写真に代えて押形でも代用可能です。

 写真等は、キャビネサイズまたは、2Lサイズ以上の物を準備し、全てA4サイズの台紙に貼り付けた上で提出します。

 また、2部提出する必要がありますが、カラーコピー等は使用せずそれぞれに現像写真を使用してください。

 複数の品物がある場合には、申請書の品物欄につけた番号を写真脇にも記載し、どの品物の写真かわかるようにしておきます。

※撮影時の注意点として、刀身は大変デリケートで簡単に傷がついてしまいますので、物差しや撮影機材による傷に十分に注意してください。また、インターネットショッピングやインターネットオークションで購入した品物の商品写真等を無断使用すると著作権侵害にあたりますので、これらの無断使用はしないようにしてください。

登録証のコピー

 銃砲刀剣類登録証の表面のコピーを2部準備します。

以上で、必要書類の準備は完了です。

申請

 申請は、郵送でのみでの受け付けとなります。

 2部準備したうちの1部が証明書として返送されますので、必ず返送先を明記した返信用封筒を同封してください。

 また、重要書類になりますので、書類を折り曲げずに入るサイズの封筒を使用し、できる限り記録の残るレターパックや簡易書留等を利用してください。(レターパックが推奨されています。)

郵送申請先は以下の通りです。

 〒602-8959京都府京都市上京区下長者町通新町西入藪之内町85番地4

 文化庁文化財第一課輸出鑑査証明担当宛

リンク:文化庁 古美術品輸出鑑査証明

 古美術品輸出鑑査証明書の申請書に不備がなければ、原則10開庁日に証明書が交付されます。郵送の期間なども考慮し余裕を持ったスケジュールで申請をしてください。

国外への発送手続き

①発送→税関(先に郵便局から発送し、税関を経由する方法)

 証明書を受け取ったらいよいよ国外への発送手続きを行います。

 国内のほとんどの運送会社が規約上刀剣類の輸送を禁止していますので、基本的には日本郵便を利用することになるかと思います。

 刀剣類の場合、金額にかかわらず税関への申告が必要になりますので、発送の際にインボイスの申告書に「美術品(刀剣類)」である旨を記載するようにしてください。

 荷物には古美術品輸出鑑査証明書の原本と銃砲刀剣類登録証のコピーを添付します。(荷物と一緒に梱包せずに、外側の伝票等と一緒に張り付けるようにします。)

 地方郵便局など、手続きになれていない窓口だと刀剣類を「武器」に該当するとして、荷物の引き受けを断られることがよくありますが、この場合、あくまでも「美術品」としての登録を受けた刀剣類であり、「武器」には該当しない旨の説明をする必要があります。

(そもそも国内で武器を所持していたら違法行為になりますので、登録を受けている以上は美術品であり適法に所持していることになります。)

 無事発送されると、荷物は一度税関に向かうことになります。税関で古美術品輸出鑑査証明書と荷物の中身が照合され問題がなければ引き続き輸送ルートに戻されることになります。

②税関→発送(先に税関での手続きをしてから郵便局に持ち込む方法)

 先に税関の窓口に直接持込み方法もあります。荷物と証明書、登録証を持参し申告手続きを行います。照合が完了すると担当官により荷物が封印されますので、そのまま発送することができます。

 申告先の税関は、発送者の住所地を管轄する税関になります。

※発送手続きにおける注意点として、地域にもよりますが、刀剣類の国外発送自体が珍しい手続きであり、窓口担当者が不慣れな場合が多く、手続きに非常に時間がかかることがあります。そのため、郵便局や税関に行く際には、必ず事前に連絡をして、あらかじめ事情を説明しておくと比較的スムーズに手続きが進みます。事前連絡なしに行くと長時間待たされるか、断られて再度窓口に行く必要があるなどの無駄が生じる可能性がありませんので、必ず事前連絡をするようにしてください。

無事に発送手続きが完了しても、これで手続きが終わりではありません。

 海外への輸送の際、航空会社によっては刀剣類を危険物として搭載できない場合があります。その際には荷物がそのまま返送される可能性もあることには留意してください。

 無事、相手の国や地域に到着しても、相手国の税関で没収されたり、そもそも相手国での刀剣類の所持が違法行為となる可能性もありますので、この点は相手方へも事前に十分に説明し、必要な手続き等があればその手続きを行っておくように依頼しておく必要があります。

登録証の返納

 無事に荷物が相手方にわたったのが確認できたら、手元に残っている銃砲刀剣類登録証を返納します。

 返納は、登録証を発行した各都道府県教育委員会に返納届と一緒に提出します。

 以上で、刀剣類の国外への発送(輸出)手続きは一通り完了です。

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