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新しい詩「桜の花をつくる人たち」


『桜の花をつくる人たち』

春の夜
死んだ人たちは待っている
桜の木の下で
雨の雫がぽたぽた
私のかわりに泣いてくれている
お葬式のとき
泣かなかったから
泣けなかったから

春の夜
昔の夢が雨の雫になって
降る
ぽったり ぽったり
夢が桜の薄桃色になる
きっと
夢は夢のまま
蕾のなかに
眠っている

父と母の
小さな家が
あの蕾のなかに
眠っている
雨に濡れて
雨に濡れて
小さな家は
雨の日も楽しかった
小さな家は
まだ貧乏だった
父と母の夢で
いっぱいだった
母が焼いたクッキーは
ハート型だった
五つあつめれば
桜の花
父と母とまだ小さかった私が
今もつくっている






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