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宿り木1


少年は宙に浮かぶ球体を
憧れのまなざしで見上げていた
緑色を帯びた球は風にそよぐ
ふわふわふわふわ

冬の月夜に
少年はその木の下にやってきた
大樹の枝々に包まれた球のシルエットが
宇宙に浮かぶ天体のように見えた
すると
球の1つが木から離れて移動していく
ぷわぷわぷわぷわ
やっぱり と少年は思った
この夜のことは少年だけの秘密になった

あれはヤドリギと言うんだよ
木から養分を奪って育つんだ
大人たちはそう教えた

木の下で少年は膝をかかえて丸くなり
目をつむった
しばらくすると
体じゅうに力が漲ってくるようで
大宇宙の中の
ちっぽけなちっぽけな宇宙が
この自分だ と気づき始めた
でも
ぷわぷわ とは
まだ浮かび上がらなかった




        撮影地  愛知県豊橋市 豊橋公園

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