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コード・オブ・ゼロ


【Aの世界】

人を殺すことがなぜ許されないのか。
その疑問が浮かぶ夢から目が覚めた。汗のようなものが垂れていくことを感じた。知っている限り、歴史上名を馳せた人々は多くの人々を殺した。この世界はきっと残酷で、歪んでいるのだと感じた。


第一章【出会い】

MIKEはいつも通りの静かな部屋に目を覚ました。窓から差し込む光は穏やかで、周囲にはシンプルながら洗練された家具が配置されていた。スクリーンが微かな光を放ち、機械の音が静かに鳴り響いていた。彼のデバイスは、安定したバイタルサインを示している。

朝食は部屋の一角に設置された器具から出される栄養ドリンク。MIKEがそれを手にすると、その透明な液体が彼の手を通り過ぎ、なめらかに喉を通った。MIKEは飲み込んだ瞬間に夢について思い出した。世界は残酷なのか、彼は何かが違うと感じていた。

自動的に選ばれる洋服に身を包み、高速トランスポーターに乗り込む。窓から見える都市の景色は、まるで夢の中にいるかのような美しさ。摩天楼がそびえ立ち、光り輝くビルが都市を照らし出していた。人々は静かに歩き、車両は静寂に移動している。

MIKEはトランスポーターの中で、街の喧騒を外から感じながらも、自身の心に何かが欠けていることを痛感していた。他の住人たちは平穏に楽しんでいるように見えたが、MIKEにはその中で何かが違和感を生むものだった。

高速トランスポーターから降りたMIKEは、美しい都市の中を歩き始めた。街は洗練されたデザインで溢れ、建物は未来的な光景を見せていた。歩道には色とりどりの花が咲き誇り、都市全体が生命と活気に満ちていた。

MIKEは他の住人たちと同様、静かに歩きながらも周囲の美しさに見とれていた。彼らはシンプルながらも洗練された服を纏い、高度なテクノロジーが組み込まれたデバイスを手に持っていた。歩く姿勢や表情は穏やかで、争いや不安の影は見当たらない。

道路を横切る車両は静かで、エネルギー効率の高いエレクトリックカーが無音で移動している。人々は車両と共に円滑に共存し、交通はまさに調和のとれたシンフォニーのように進んでいた。

MIKEは高層ビルの谷間を歩き、ショッピングエリアやカフェが立ち並ぶ通りを抜けていく。人々はスクリーンを通じて様々な情報にアクセスし、ショッピングやエンターテインメントを楽しんでいた。笑顔や友好的な挨拶が交わされ、街全体が和やかな雰囲気に包まれていた。

仕事場に到着すると、MIKEは他の人物たちと共に作業を始めた。彼の仕事は高度な計算と解析が要求され、彼は冷静かつ効率的にタスクに取り組んでいた。一方で、MIKEは仲間たちとあまり交流することもなく、孤独なまま時間が過ぎていく。

MIKEは仕事場で高度な計算や解析に従事する一方で、周囲の仲間たちとのコミュニケーションは極力避けるような存在だった。その理由は、彼の特異なパーソナリティに由来していた。

彼は他の人物たちが持つような社交性や感情表現が苦手であり、個人的な感情を抑えて仕事に徹していた。自身の存在を深く考え、他者とのつながりに疑問を感じていたMIKEは、常に内省的でありながらも社交的な場面を避けていた。

その結果、MIKEは仕事場で一見冷静で合理的な存在として振る舞っていたが、実際には内なる孤独感に悩まされていた。彼は感情を理解し共有することが苦手であり、他者との深いつながりを築くことが難しいと感じていたのだ。

MIKEが孤独な存在となっている理由は、彼の特性や過去の経験に起因していた。彼は他者と異なる視点から世界を見つめていたが、その結果として心の中に孤独な存在を抱え込んでしまっていた。

ただその日は何かが違った。孤独を打ち破る1人の存在が声をかけてきたのだった。

「あなたがMIKEね。一緒に働くことになったLILYです。これからよろしく」

LILYのいきなりの声がけにMIKEは一瞬戸惑った。今までにこんなことはあっただろうか。全く新しい感情のようなものがそこにはあった。緊張からか何も返事を返すことができなかった。

LILYは彼と同じように仕事に集中していたが、どこか周囲とは異なる雰囲気を持っていた。LILYは微笑を見せ、冗談めかした言葉を発する。LILYの存在はMIKEにとって新鮮であり、今までにない愛情のようなものを感じた。
LILYが作業に戸惑っているときに、言葉も交わさずにフォローをした。LILYは笑顔を見せ軽く会釈した。何かMIKEだけに対して特別な表情をしているような、何か懐かしい印象も感じたが、MIKEから話しかけることはできなかった。

終業時刻に近づき、帰り支度をしていた時に、仕事場でのSNSがなった。LILYからのメッセージだった。

LILY: お疲れ様、MIKE!今日は有難う。助けてくれて嬉しかった。

MIKEは驚きつつも、即レスをした。

MIKE: ありがとう、LILYさん。そう言ってもらえると、なんだか嬉しいな。

率直な感情だった。誰かと意思疎通を図れる嬉しさを感じた。すぐさまLILYから

LILY: 今日の仕事で何か面白いことあった?

それとない返信が返ってきたが、あんまり気にならなかった。続け様に

MIKE: いつも通りの作業だったけど、ちょっと新しいデータ解析の手法を試してみたんだ。うまくいかなかったけどね。

LILY: それは面白そう!新しいことに挑戦するって、気分もリフレッシュされるよね。

MIKE: そうだね、挑戦することで新しい発見があるかもしれないから、ついついやってしまうんだ。

LILY: それはいいことだね。私も最近、新しい情報を見つけてはそれに挑戦してるんだ。共有したいことがあれば、いつでも教えてね。

MIKE: ありがとう、LILYさん。お互いに頑張ろう。

LILY: そうだね!それでは、また明日。おやすみ、MIKE。

MIKE: おやすみ、LILYさん。良い夜を。

MIKEはLILYの対応に興味津々だった。とりあえず何か伝えたいと思い、どうでも良いことを伝えた上、このままメッセージが終わってほしくないという印象まで覚えた。

MIKEはLILYとのSNSでのやり取りに楽しさと心地よさを感じていた。
帰宅後、MIKEは高速トランスポーターでの景色とは打って変わり、自分の静かな部屋に戻ってきた。スクリーンの微かな光が部屋を照らし、機械の音が響いている中、MIKEは自動的に選ばれた洋服を脱ぎ、リラックスモードに移行した。
MIKEは夕食の時間が近づくと、部屋の一角に設置された器具から出される栄養ドリンクを手に取った。この時、LILYとのやり取りを思い出し、微笑みがMIKEの顔に浮かんだ。彼はしばらく静かに、LILYとのSNSで感じた新しいつながりや友情の温かさに浸りながら、栄養ドリンクを一気に注ぎ込んだ。

続く。




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