3.5次元(?

横須賀の大通りを歩いていた
ふと横にある細道に顔を向けると、そこからはただならぬ空気を感じた。
アニメの世界だったら間違いなく異世界への入り口だ。
思考を脱ぎ捨て、動物的直感に従い吸い込まれるようにその路地へ侵入していく。
進んでいくと、全てが木材で作られているかのような喫茶店があった。
外見はこじんまりとしているけれど、そこにはいくつもの歴史を肌で錯覚してしまうほどの深みのある「何か」を感じだ。
ドアを開け、店内に入る。
中は薄暗く、全て人間の手でつかられたみたいな椅子とテーブル。
正面には大きな黒板があり、白いチョークでお茶とお菓子の名称が淡々と記されていた。
スパイスの聴いたチャイをすすりながら、小説を読む動作をしているものの実際には読んでいなかった。
店員さんがお湯を沸かしながら呪文のように独り言っている。夫婦でもカップルでもなさそうな男女が語り合っている。
この場所にいると、自分の体から時折見え隠れする、楽しかった思い出や、普段は隠しているつもりでいる悔しかった出来事全てが浮き彫りになっている自分を明確に感じ取ることができた。
それは嫌な感じではなくてお風呂に浸かっている時や、少々いい値段のするコーヒーを飲んでいる時の感じに似ている。

テーブルでお会計を済ませた。
お店を出る際にドアを開けると、先ほどまで独り言をいっていた店員さんが、笑顔で
「いってらっしゃいませ」と言ってくれた。



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