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恵みの島、奄美 7

滞在3日目。
朝起きて、恐る恐る遮光カーテンを開けてみると、なんと太陽が出ている。滞在中一度も拝めない可能性を覚悟していたので、存外に嬉しく思う。海の色が違う。この日は結局、一度もワイパーを使用することがなかった。

部屋でダラダラして、のんびりと朝食に出かけたあと部屋で休んでいると、あっという間にチェックアウトの時間が迫ってくる。小さいスーツケースしか持ってきていないのに、大量の土産を買ったものだから、荷造りに苦労する。なんとか荷造りして、10時過ぎにチェックアウトを完了する。

この日は南部のTHE SCENEというホテルに移動することになっている。単に移動するだけでも2時間弱くらいかかるが、移動距離を利用して、途中観光もすることにする。
夫が、西郷隆盛の居宅を見に行きたいというので、そのアイデアを採用する。
私は、天気もいいことだし、NHK大河の西郷どんのオープニングで使われていたロケ地、宮古崎に行きたいと思ったが、駐車場から片道20分歩かないと行けないという情報に躊躇した夫が、難色を示したので、代わりにマテリアの滝、という滝を見に行くことにする。

西郷隆盛が奄美大島で過ごしたのは3年弱。その中でも、西郷南洲流謫跡として現在残っている居宅に住んだのは、わずか2ヶ月のことだったという。その後、奄美妻の愛加那は、生涯ここに住まい、西郷さんとお子さんとの再会を願ったが、叶わなかったらしい。
そんな家を見学することで、西郷さんと愛加那さんの苦労を凌いだ。感慨深い気持ちになった。

この日は晴れた。外観
西郷南洲流謫跡内部

寄り道が終わると、来た道を引き返して国道に戻り、今度は前日に大浜海浜公園に向かったのと同じ道を辿って車を進める。大浜海浜公園を過ぎると、そこから先は未踏の地となる。
進めば進むほど車が少なくなるし、奄美は小山が多くてトンネルも多いが、途中までは基本海沿いを進むイメージだ。なかなか気持ちがいい。

しかしマテリアの滝に向かうためには、途中からは山道となる。その山道が問題だった。
舗装されていない箇所もあるし、道は細く、対抗車が来たら、私の運転技術では対応できない。良くも悪くも、マテリアの滝がある奄美フォレストポリスは、人気があるスポットではないらしく、道もあまり使われている気配もないし、対抗車も来ない。だから結果的には事なきを得たが、肝を冷やした。
鬱蒼とした、車も通らないような熱帯の森を通っていると、なんとも言えず不安な気持ちになる。なぜ車も通らないとわかってのかというと、道には中央部分に苔が生えていて、車道の真ん中に、突然木の蔓などがぶら下がっていたりして、どう考えても普段から通行に使われている道のようには見えなかったからだ。なんで誰も行かないようなところにわざわざ向かっているんだろう、と運転しながら思う。
そんな大変な思いをして行ったマテリアの滝は、確かに綺麗なところだったし、駐車場からもそれほど歩かずにアクセスできた。おまけに訪れていたカップルも一組いて驚いた。マイナスイオンもたくさん浴びることができた。
しかし、不必要にすごい冒険をしたみたいな気持ちになったのも事実だ。そういうところだからこそ、手付かずの自然そのものでもあるのだが、慎重なところのある夫は、もう当分滝には行きたくない、と言った。〈8に続く〉

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