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奇跡のインド14

ガンジス川の沐浴から帰ったその足で、オプショナルツアー参加者は、ハリドワールに向かった。
ハリドワールはインド4大聖地の一つで、地元のヒンズー教徒たちが巡礼に訪れる街であるらしい。ここでは毎晩、ガンジス川を讃える儀式であるアラーティが行われ、それを見物に来るインド人も連日30000人以上いるらしい。今回の旅の目的の一つがガンジス川である私としては、行かないわけにはいかない。

アシュラムから、ガンジス川沐浴に行った方向とは逆方向に1時間程度バスに揺られたのち、ハリドワールに到着する。午後5時半ごろだっただろうか。まだ周囲は明るい。
バスは初めに駐車場に到着したのだが(むろん舗装はされていない、土むきだしの駐車場だ)、その駐車場は、お祭りの時になると、キャンプ場に変わるそうだ。インド人たちが大挙して押し寄せて、テントを張って巡礼するのだという。熱心だ。
お祭りでないこの日も、駐車場で煮炊きしているインド人が大勢いた。ホテルに泊まらない者たちは、バスをホテルがわりにして寝泊まりして巡礼するのだという。
駐車場からアラーティが行われるところまで、河原沿いに露店が並んでいる。神様の像やシール、マラという数珠など、巡礼グッズが売られている。中には石油のポリタンクみたいな容器もある。何に使うのかというと、ガンジス川の水を持ち帰るのだそうだ。
川沿いであることもあり、なんとなく日本の田舎のほうの花火大会に来たような雰囲気があるな、と思いながら、アラーティが行われる会場に向かって歩く。

アラーティ会場に到着すると、現地の子供達が寄ってきて、額の真ん中に聖なるスタンプを押させてくれだとか、ガンジス川に流す花を買ってくれだとかいろいろ言ってくる。いちばん面白かったのは、スナック菓子のプラスチック袋を解体して貼り付けて作った、手作りのレジャーシートを、結構な人数の物売りが売っていたことである。インドの店には、やたらスナック菓子が売られているよなあ、と常日頃から思っていたのだが、それをレジャーシートに再利用するとは!
確かに川の前方の席を確保できれば、座って儀式を見学することができる。実際に敷物を敷いて座っている人も大勢いたし、たとえスナック菓子な袋で使ってあったとしても、敷物があるに越したことはない。しかしむろん、私は購入しない。

ガンジス川に祈りを捧げるアラーティの、火を使った儀式自体は、リシケシのアシュラムでも毎日参加している。しかしハリドワールでのアラーティは、まず見物客がとてつもなく多く、ゆえに熱気もあり、アシュラムでの小さな火を使ったささやかな儀式に比べるとずっと派手で、やっぱりお祭りみたいに見える。現地の人がほとんどで、観光客なんてほぼ来ていないんだろうな、と思った。まるでコンサート会場かなにかみたいに、広場には大きなビジョンが設置されていて、対岸の儀式をビジョンを通じて見ることもできる。
この雰囲気を体験せずに帰るのはもったいないので、ハリドワールまで足を伸ばした甲斐があった。そしておそらく昔のお伊勢参りも、こんな雰囲気だったんじゃないかな、と思った。お参りに来ているはずなのに、なんとなく楽しい。

アラーティが長引いたのか、帰路に着くのが予定より遅くなり、さらにこの日は夕食の前に、アシュラム内の儀式にヨガの団体自体が参加することになっていた。それが終わってから夕食だったので、9時半過ぎと遅くなった。しかし本来、現地の人はそれくらいの時間に夕食にする人も少なくないそうだ。
アシュラムでの食事時間帯は終わっていることもあり、この日は外のレストランで食事だった。食事代はオプショナルツアーに含まれていた。アシュラムから徒歩で行ける、夜景の綺麗なレストランに連れていってもらった。
アシュラムの食事と違って味が強く、スパイシーで辛い物好きの私としては、それはそれでとても美味しかった。しかし聖地なので、レストランであってもベジタリアンで、なおかつアルコールが出ない(アシュラム内は言うに及ばない)。私はアルコールがなくても問題ないが、アルコールが好きな人は果たしてどう思うのだろうかと、思わないでもない。




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