満漢全席完全再現への道 〜青龍の章〜
爆発的大開始
こんにちは、特大華椒魚(とくだいかしょううお)です。
唐突ですが、みなさまは「満漢全席(まんかんぜんせき)」なるものをご存知でしょうか。
一言でまとめるとすると「なんか知らんけど中国の幻の宮廷コース料理」です。
かっけ〜〜〜、さいこ〜〜〜
食ってみてぇ〜〜〜〜〜
筆者は子供のころ十年ほど中国で暮らしたことがありましたが、ハイパー庶民の身分では当然食べたことも見たこともありません。
「なんだか凄そうだし食べてみたいな」という気持ちはずっとあったので、今回叶えていきたいと思います。
ちゃんとした本場の資料とかも調べた上で、な…!!
十年の経験とバイリンガルの能力と、ついでに『中華一番』と『鉄鍋のジャン!』と『らんま1/2』を読み込んだ知識がようやく役に立ちそうです。
今回は現役漫画編集者である友人のQ君に協力してもらうことになりました。
彼の部屋と厨房と慧眼を借りさせていただいております、ありがとう。
魚「美味くなかったら打ち切りですか?」
Q「はい」
こうして何人もの少年少女の心をへし折ってきたことでしょう、嫌ですね〜
憎き編集者(Q)「なんで自宅でやらんの?」
魚「出汁とか取ることになりそうだし、汚れたり匂いが染み付いたりしたら嫌じゃん?」
Q「うち賃貸だぞ」
さて、出だしで協力人の機嫌を損ねたところで、調べ物の方をやっていこうと思います。
(出汁だけに、出だしってねっ!)
Q「とりあえずフカヒレとかは使うんじゃない?」
魚「それはもう用意してあります」
Q「?!」
魚「家に置いてありました」
Q「これが帰国子女って…コト?!」
お土産とかでよく貰うので、家にどっさりあります、盗品のように。
(家庭の事情でね……)
Q「このくり抜いたぽこちんみたいなやつは何?」
魚「くり抜かれたぽこちんです」(たぶん「魚膠」と呼ばれる干物の一種です)
Q「病犬の糞もしくは攻撃力バフが付与されたかりんとうみたいなのは?」
魚「かりんとうの進化系です」(乾燥ナマコです)
Q「世紀末チンピラの剥ぎ取り素材みたいなのは?」
魚「乾燥フカヒレ」
Q「なんでコイツだけ返答に捻りがないんだ、可哀想だろ」
魚「ってい!一応高級食材たちなんだから、あんまり変なこというと罰当たりだぞ。鎮まりたまえ……」(ガサゴソ)
Q「? 何してんの?」
魚「中華のヒーロー、満漢全席マン」
Q「遊ぶな、お前の方が罰当たりだい」
「魚膠」で遊ぶQ君のことは一旦無視して、とりあえずはこのオールスターで挑んで行きたいと思います。
伝統的大調査
ハイパー語学力を駆使して色々と調べてきました。
少し長くなるかもしれませんので、だるかったら飛ばしてください。
かつて清王朝宮廷で出てくる、品目が全て決まっている最上級のコース料理、というのが一般的な満漢全席への認識なのですが……
魚「そういった意味での「満漢全席」というものは実在していなかったらしい」
Q「いきなり全てを否定してきたな」
魚「ざっくりいうと、清王朝の王族たちが権力を失った後に、「昔はこんないいもん食ってたな〜」って振り返った宴席のことが伝説化して、「満漢全席」と呼ばれるようになったみたい」
Q「へ〜〜〜」
魚「って言ってました、宮廷料理人の末裔が」
Q「受け売りかい」
魚「『揚州画舫録』に「満漢全席」が記載されている、っていう説があるらしいんだけど、これもどうも違っていて、『揚州画舫録』はただ当時見た宮廷料理を記載していただけで、これらが「満漢全席」である、とは書かれていないんだ」
Q「明確に「満漢全席」と定義された宮廷コース料理は実在していなかったと?」
魚「うん」
Q「じゃあ解散ということで」
魚「打ち切りってこと?」
Q「はい」
そういうわけにもいきませんので、根性で続行したいと思います。
魚「当時の宮廷料理を作れば、実質満漢全席の一部を作っているということになるよね、なるさ」
革新的大制作
というわけで実際に作ってみましょう。
今回は宮廷料理の一つである「葱烧海参」(ナマコの大ネギ焼き)を作っていこうと思います。
魚「恐らく後世の創作である「満漢全席」のメニューでもナマコは出てくるよ、海の八つの珍味、「海八珍」(うみはっちん)の一つだとかなんとか」
Q「「陸八珍」とかもありそうだね、そっちは作らないの?」
魚「……「陸八珍」(りくはっちん)はラクダの峰とかゴリラの唇とか、マジモンの珍食材がいるんだ。このブログがバズったら、作ろうね」
(贅沢をしたがる子を諭す親が如く)
Q「妥協、したんだね……」
魚「今から動物園で一狩りしてくるか、誰かの唇を奪いに行くか?(物理的な意味で)」
魚「この場で貴様の唇を切り落としてやってもいいんだぞ!!!」
Q「人間痛いところを突かれるとこうなるんだね……」
……冷めた目により冷静さを取りもどしたところで、調理を始めようと思います。
まずは乾燥なまこを水でふやかします。
Q「どんぐらいふやかすの?」
魚「三日」
Q「え?」
魚「三日」
というわけで、三日後にまた会いましょう。
貴様の家でな!
〜三日後〜
Q「大きく育ちました」
魚「三日三晩一緒にいたし、なんか感情芽生えたりしてない?」
Q「コイツらが動かし出しそうという恐怖感」
魚「キョンシー映画?」
腸を出してから、お湯で煮込んでいきます。
腸……あったんだね……(キョンシー映画並感)
とてもグロかったので腸抜きのシーンはカットだ!
次に大ねぎを切って多めの油でじっくり焼きます。
「葱油」というやつですね。これと醤油とかで麺とか和えても美味しそう。
オイスターソース、醤油、花椒、生姜、大ネギの白い部分、白胡椒粉、鶏がらスープを煮込みます。最後に水溶き片栗粉でとろみをつけて……ソースの出来上がりです。
Q「香りめっちゃいいじゃん、ナマコ入れない方がうまそう」
魚「……」
ちなみに白胡椒粉を入れると大抵の臭みが消える上に、中華っぽい味になります。とてもおすすめ。
ナマコを入れます。
しばらく煮込んでから先程の葱油を回しかけると…!!
Q「意外と美味そうじゃん!!それっぽい!!」
魚「へへっ」
出オチかと思ったら、意外と見てくれがいいものが出来上がってしまったようだ…!
宴会的大実食
では早速、食べていきましょうか!!
Q「箸で摘んだ感じは、完全にあれだね」
魚「ゴムって感じ」
Q「言わないでおいたのに……」
魚「まぁとにかく、食べてみよう!!」(パクリ)
モニュモニュ……
こ、この味は……!!!
ままままま、まさに………!!!!!!
魚「溺れた直後のルフィの小指!!」
Q「「あつ森」とかで釣れるタイヤ!!」
嘘です。もちろん冗談です。
Q「まぁ珍味って味がする、磯の香りがするゼラチン質の何か……」
魚「想像通りの味だね」
Q「ソースはめっちゃうまい、多分このソースで魚とか煮込んだら美味い」
魚「中国でちゃんとしたレストランで食べたナマコはもうちょっと磯臭さが少なくて、もっとデカかったな。多分ふやかすの失敗したかも」
Q「食べたことあるんかい」
魚「ハレの日でめっちゃ出てくるよ、ナマコ」
Q「……」(ガチャンッッ)
魚「えっっっっ」
Q「つまりなんですか」
「満漢全席を完全再現するとか言っておきながら」
「百八種類あるのに一種類しか作ってない上に」
「それすら失敗した、ってことか〜〜〜〜!?!?!?」
魚「ヒ、ヒィ〜〜〜〜〜!!!」
「ゆ、許してくれ〜〜〜〜〜〜!!!」
???「不……」
「不要怕……」
Q「な、なんだ?!」
魚「そ、その声は……!!!!!!」
???「不要害怕……没有关系的……」
(特別意訳:恐るな……大丈夫さ……)
???「挑战与实践的勇气,才是真正可贵的事物」
(挑戦と実行する心と勇気、それこそが真に尊いものではないか)
魚、Q「「ま、まさか!!!!」」
「「満漢全席マン!?!?!?!」」
満漢全席マン「没错,就是我!!满汉全席超人!!」
(そう、この私…!満漢全席マンだ!!)
魚、Q「ま、満漢全席マン〜〜〜〜〜〜!!!」
满汉全席超人「你们那份的气魄,才是真正的“满汉全席”!!」
(君たちの心意気こそが、真の「満漢全席」だ!!)
魚、Q「ま、満漢全席マン〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
これぞまさに、中国四千年の歴史の神秘。
我々はその一端を、氷山の一角を、垣間見ることができたのだ。
それでは次回の「満漢全席完全再現への道〜朱雀篇〜」、もしくは「中国で一生を過ごした曽祖父が残した自伝を解読してみた」でお会いしましょう。
また、いつの日か。
再见!!
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