短編小説「俺のおごり街」後編

クレープはパティシエとの出会いにより、絵描きとしての自信を取り戻した。

だが、「俺のおごり街」での生活は厳しく、
中心街から離れた小さな小屋で絵を描き、毎日夕方から夜に掛けて、中心街で絵を売る生活を繰り返していた。

そんな寒い日の夜、仕事帰りのパティシエと偶然にも再会する。「この絵、好きです」微笑ましくつぶやくパティシエにクレープは涙を浮かべた。

その絵は、月と水面に立っている1人の少女の絵だった。

「この絵、差し上げます」急いでその場を去ろうとするクレープにパティシエは少し悲しそうにクレープに話かけた。

「待ってください、クレープさん。この素晴らしい絵をただで手に入れるわけにはいきません。」パティシエは、クレープの手を優しく取り、少し照れながら言った。「あなたの絵は、あなたの心を表現している。それは、無償で手に入れるものではありません。」

クレープは驚いた。彼の絵を誰もが欲しがるとは思ってもみなかった。しかし、パティシエの言葉に心を打たれ、涙が溢れ出した。

「でも、僕にはお金を受け取る資格がない。」クレープは頭を下げ、言った。「だって、僕の絵は売れないんだから。」

パティシエはクレープの頭を優しく撫でながら、「だからこそ、あなたの絵は価値があるんです。あなたの絵は、あなた自身です。あなたを評価する人がいる、それが私です。」と言った。

この夜から、クレープの生活は大きく変わった。パティシエの店で働き始め、その代わりに絵を描く時間を確保することができた。そして、パティシエの店の客たちは、クレープの絵を見て、彼の才能を認めるようになった。

クレープはパティシエとの出会いにより、絵描きとしての自信を取り戻しただけでなく、自分自身の価値を見つけることができたのだ。

クレープはケーキ屋での働き始めをきっかけに、自身の才能である絵画に再び情熱を注ぐようになった。ケーキ屋の仕事を通じて得たアイデアやインスピレーションを絵に表現し、個展を開くことを夢見ている。

彼は「俺のおごり街」というテーマでの個展を計画しており、街の風景や人々の生活を描くことで、自身のアイデンティティやメッセージを表現したいと考えている。クレープは、独自のスタイルと技術を駆使して、観客に感動と驚きを与える作品を生み出すことを目指している。

一方、パティシエはケーキ屋での働き始めを通じて、お菓子作りの技術を磨きながら、美味しいケーキをたくさん作り続けています。しかし、彼女には特殊な病気である「恋焦がれ病」と言う、恋をすると、彼女の寿命が縮むという厄介な病気だ。

この病気のため、彼女は恋愛に対して慎重になり、自分を守るために距離を置くことが多くなってしまいました。しかし、時折、誰かに心を惹かれる瞬間が訪れると、彼女は葛藤しながらもクレープの魅力に引かれていく。

月日が流れ、クレープの個展開催日が決まった。タイトルは「俺のおごり街」。
長年夢見ていた個展開催に喜びを隠せない2人。

だが、開催を知らされたのは病棟の床の上だった。

「恋焦がれ病」が悪化し入院していたパティシエ。

医師に宣告されたのは、「想いを告げること」。自分の本当の想いを告げることによって寿命を取り戻すことができる病だと診断された。

個展の開催日と同時に、ある2人の挙式も上げられた。

それは繊細で頼もしいウェディングケーキと未熟だが丁寧な線で描かれた絵画達が話題となった。

終わり

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