お客様インタビュー・園田圭吾さん(選曲家・録音エンジニア)
録音スタジオを経営し、CD制作やライブを企画する園田圭吾さんがご来店。
お皿を洗いながら耳を澄ましていると、お客様との楽しい会話が聞こえてきました。
「三代目だからできること」
園田
そうなんですよ、うちの録音スタジオがありまさの近くなんで…。
お隣
CDがどうやって出来るかなんて考えたことなかったけど、録音を専門にするお仕事があるんですね。
園田
録音のクオリティでCDは随分変わります。集音マイクをどこに立てるか1つで、印象はがらっと違ったり。
最近はCDを知らない人も増えてきましたけどね(笑)。
でもYouTubeの時代も、力の入れ所は違いますけど、録音は必要とされています。
お隣
こういうお仕事はなんと呼ばれているんですか。肩書は…?
園田
録音する時は「音楽エンジニア」、ダンスなどの舞台の音響オペレーションをする時は「音響オペレート」、テレビ番組の選曲をしていた時は「選曲家」。
何をするのか、現場やクライアントさんによって変わる感じです。
選曲は「楽しそうだね」と言われることが多いですけど、映像を見て、ディレクターさんの演出方針を聞いて、膨大な曲の中から選曲して編集して、持っていったら直しがあって、でも放映時間は決まっているから徹夜で作業して…。
必ず先に映像があって、音楽は後からなので、時間的にきつかったです。
センスと経験、あと体力も必要な過酷な作業ですね。
お隣
同じシーンでもBGMが違うと雰囲気が変わるでしょうし、すごく重要なお仕事ですね。
音響の仕事は学校で習われたんですか?
園田
音響について学んだのは…仕事の現場かな?
僕の場合は祖父の代からこの仕事をしていたので3代目ですが、祖父の仕事は直接見ていないし、父は家で仕事をしなかったので…。
専門学校などで勉強する人もいますけど、僕は高校は興味本位でロシア語学科に行って、3ヵ月ロシアに行って勉強したり、珍しい体験をしました。
そのあと普通に日本の大学に通い始めたけど、あまりにも面白くないので以前から行くと決めていたアメリカに行って、ボストンの語学学校から短大に。でもいろいろあってこの時は帰国して、それから一年間日本でアルバイトしてお金を貯めて、再度ニューヨークに行きました。今度は音楽の専門学校に。
お隣
すごい行動力ですね! ニューヨークで録音の勉強を?
園田
実は、当初はドラマーになりたかったんです。でもアメリカに行って自分の出来なさを痛感したというか…渡米してすぐに演奏家の道は諦めました(笑)。
自分はブラスバンドやバンド活動をしていたし、フォークロック部では部長、ドラムはかなり出来る方だと自負していたんですが、海外に行ったらもう上手い人だらけ。
有名なドラマーの先生の授業があるというので出てみたら、言われたことが全然できない。
その時の先生の残念そうな顔が忘れられないです。
プレイヤーとしては全然ダメだな、と。
あと、近所の大学のコンサートに行ったら、学生のレベルが違う。まだ若いのに、こんなに上手いのか…。
自分はまさに井の中の蛙、それを思い知ったのは収穫だったとは言えます。
それで専門学校を中退して、ニューヨーク市立大学の音楽科に入って、基礎的なことから勉強しはじめたところで帰国命令。事情があって、急遽父の会社で働かなくてはいけなくなったんです。
お隣
それは…残念でしたね。
園田
というわけで、僕の最終学歴は高卒(笑)。帰国すると会社の仕事を3ヵ月で叩き込まれて、その後はすぐに現場に放り出されました。
職人の多い、いわゆる「灰皿が飛んでくる」ような仕事場でしたけど、祖父や父の知り合いもいましたし、「園田さんの息子だから」と大目にみてもらったことも多かったです。
叱咤激励して育ててもらい、夢中で選曲やオペレーションの仕事をしていました。その頃はまだスタジオを持っていなかったのですが、20代後半に父と相談して今のスタジオがある場所に引っ越しました。
父が将来的には選曲だけにこだわらず、録音など音楽に関わる仕事全般できた方がいいと…。
お隣
それでこの近くに。
親子で働くのは大変ではないですか?
園田
いや、父がすごく頼りになるので(笑)。今は、父が辞めても仕事を貰えるように頑張っています。
あとは僕だからできること、祖父や父はやらなかったけど、例えば面白いシンガーソングライターの人を探してCDを作ったり、スタジオライブをしたり、これまでの蓄積を活かした3代目だから出来ることを模索しています。
自宅で何でもできる時代ですけど、あのスタジオは面白いね、行ってみたいねって言われるようなことをしたいですね。
おわり(収録 2020春)
園田圭吾さん プロフィール
1977年生。アメリカ留学を経て2006年にパストラルサウンド入社。企業PV、アニメーション効果、プラネタリウム番組選曲などを選曲家としてする傍ら、スタジオ部門ではレコーディングエンジニア、マネジメントも担当。
パストラルサウンドHP
スタジオ紹介YouTube
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