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鍛えられたっ💪パン屋さんでのハードワーク💧

続けられるだろうか・・・一抹の不安を抱きつつ始まったパン屋さんでの仕事。長いこと主婦や一人仕事が続いていたので組織に属するのは久しぶり、しかも未経験の肉体労働。やってみてそのハードさに驚き、いったい私に出来るんだろうかと、しばらくはドタバタ、パ二パ二し通しでした。

私がパン屋さんでの仕事に就いたのはもちろんパンを焼くことと食べることが好きだったということもあるのですが、業務用の機器に触れて使いたいと思ったのも大きい要因でした。やり出すと深掘りしてしまうタイプ。堅牢なステンレス製の調理台、冷蔵庫、面台、ホイロ、そして大きなオーブンには憧れました。一度に使う粉も生地も大量です。

実際に製造の現場に入ってみて、確かにプロ仕様の機器やキロ単位の小麦粉の中で働けるのは嬉しかったのですが、仕事とはやはり厳しいもの。そんな感慨に浸っている余裕は微塵もありませんでした。とにかくハードで。

まず、「家でパンを焼いてます」なんてのは求められていない。「パンの焼ける匂いって幸せ」なんてむしろ引かれる。中途半端な経験や知識はときとして足手まといにもなります。では未経験者がいいのかというと、確かに「未経験者歓迎!優しく丁寧に教えます」などという文言は見かけますが、現在の人手不足の最中で丁寧に手取り足取り仕事を教える時間も余裕もないというのが実情。私が見たところ未経験者であることは構わないが、覚えようとする姿勢やハードな環境でやって行かれる根性が備わっているのかどうかが重用。言うまでもなく経験者で即戦力になる人が一番。私は家で食べるパンを焼く程度。立派な<未経験者>なため、まずは戦力になることよりも皆の足手まといにならないようにという非常に低い目標設定で頑張りました。

最初にチーフから早く、かつ丁寧(綺麗)にやってほしいと言われました。雑であったり、店(会社)で決めた基準やレシピを無視した我流もNG。そして、もちろん一通りレクチャーを受けるのですが、基本的に「見て、盗んで、物にして」とも言われました。がしかし、とにかく既に忙しすぎる職場で見て、盗もうと手が止まると「あ、手は動かしたままで」となってしまうのです。でも、初めての頃はどうしても見れば手が止まる。ましてや盗んで学ぼうとすれば手は止まる。だってこの手はまだ何も覚えてないのですから。

次に厳しいと感じたのは限られた時間で一定の仕事をこなすということ。これは私にとって特にハードルが高かったです。すっかり忘れていた「私は生まれたときから何をするにも遅かった」という事実を久々に突き付けられました。だから早くやらなきゃ、と急ぐ、狭い職場内でつい小走りになる、と店長が大声で「危ないから走るなー!」と吠える。

そうなんです。窯やコンベクション、冷蔵庫などの扉をガーンと開けたり、他にも速やかな動きがここかしこに溢れていて、限られたスペースの中では事故が起こりかねないのです。火傷や転倒、出合頭の衝突など。<早く行うこと>と<急ぐこと>は違うのだ、と納得しました。が、体がついて行かず、それを補おうと手足が無駄に動く。こういうときの動きは仕事にはなっていません。年の功で一連のことは頭で理解できてしまう分、かなり苦しく辛い日々が続きました。

入社してひと月程経った頃。チーフから「〇日から一人だよ。頑張って!」と言われ、「出来ましぇん・・!」って心の中で訴えました。シフトが組まれるので、私がやるべきことを出来ないままだと次の人にも多大な迷惑を掛けてしまいます。こんなのろい私が、一人で、この時間内でこれだけの仕事を出来るとは到底思えない・・・。
実は仕事を教わっている間にも、「これ、この時間内で出来ます?」と度々聞いていました。ちょっと信じられなかった。食品の製造ということもあり職場内に持ち込めるものが限定されているのですが、ビデオかスマホでも持ち込んでいったいどうしたらこれだけの仕事を一人でこなせるのか定点撮影をしたかったくらいです。

それでも<その日>はやって来て、そこから数ヶ月、本当に「こなせる」までが実に長い道のりでした。ドタバタ、パニックの連続で、私という人格が一変したかも。近場のセクションに優しくも厳しいチーフが居てくれたおかげで私も残れたといえます。親子ほどの年齢差の女性でしたが(もちろん彼女が年下)、私は本当に頼っていたのです。

朝一の準備と焼き、生地の扱い、成型、コンベクションへの出し入れ、洗い場での片付け、接客、次への準備などなど、まるでお給料を貰ってジムに来ているようだ、というのが正直な感想です。実際、スクワットにも似た動きが多発。初めのうち腿のあたりがしっかり筋肉痛になりました。夏場はそれに加えて高温との闘い。皆2リットルは水を飲んでいたと思います。

何とか自身のポジションも確立できおよそ5年。全てが初めての体験で、正直こんなに苦戦したのも初めてでした。私が強く心に決めていたのは二つ。ある一定レベルまではやり切る、そして絶対にドタキャンはしないということ。特にドタキャンについては、シフトが組まれている以上必ず他の人にしわ寄せがいってしまう為、心底<決心>をしていました。病気になったら仕方ないと思いつつも、強く心に決めると風邪で発熱というのもこれがまた不思議と連休日のときにかかったりして、結果私は5年間、一度もドタキャンをせずに通せました。実はこれ自画自賛のポイントです。

ひーひー言いながらも、私はパン屋さんでの仕事が大好きでした。
現在では本来の私に戻り、ささやかな<起業>に向けて私なりのベスト・ペースで動いております。朝食で食べるパンもせいぜい一度に焼くのは2斤。あの大量の生地を扱った経験から何てことない家事の一つとなっています。







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