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雨雲のニッチをついて梅を干す

 本日の空は、まさに梅雨のニッチ晴れでした。
 この季節は、「梅」雨とありますように、ちょうど梅干しや梅酒を仕込むシーズンでございます。
 昔々、梅干しや梅酒を自宅で仕込むのがブームになったことがあった。母もさっそくブームにのっかって、いそいそと梅干しと梅酒作りをはじめる。最初は「みんな流行にのっかって、梅干し、梅酒って……」と馬鹿にしていた彼女ですが、口とは裏腹に自分ものっかる。羨ましいとまず馬鹿にする。そして自分も真似る。しれっと、つるっとやる。

 梅干しは、「三日三晩の土用干し」と言われてるように、梅雨明けを見計らってつけ込んだ梅を途中で干さなきゃならない。ところが空模様というのは人の思惑通りにはなってくれない。梅雨が明けたと思っても、また戻りがあったり、なかなか明けなかったり……。
  母が梅ブームにのっかった年もいつまでもぐずぐずと梅雨が明けなかった。しびれを切らせた彼女は、ある曇り空の日、とうとう強引に梅干し未満どもを干した。ブツブツと文句をいいながら、敵にでも対峙しているかのような表情で、梅干し未満を庭先で広げていく。まるで梅雨空に向かって「やあやあ、目にもの見せてくれんぞ」と挑んでいるような様子だった。なんとなく、気持ちはわかる。いつまでもだらだら居座る梅雨前線を追っ払いたいのは、皆同じであった。
 母の梅干し&梅酒造りは、その後何回か続いた。だが、その梅干しを食べた記憶が私にはないのだ。なぜだろう。その件については、あまりり追求してはいけない気がする。梅酒の方は、うろおぼえなのだが、飲んだ飲まないと母と父がケンカしていたような覚えがある。でも、父は甘い酒は好きじゃなかったから、犯人じゃないような気がするのだが。この件もあまり追求しない方がいいような気がする。
 触らぬ神には祟りなしである。

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