【映画感想】『君たちはどう生きるか』

久しぶりに彼女と映画デート。
俺も彼女もジブリが大好きなので、何を観に行くかは決まっている。

観終わった感想。

面白かったけど、内容は難しい。

俺は彼女とあれこれ話しながら、映画を振り返った。

映画は全体を通して美しいイメージの連続で、ぼんやり観ているだけでジブリファンにはたまらない多幸感がある。

ジブリの世界が好きなら無条件で感覚的に楽しめる映画になっていて、余計なことをあれこれ考えながら観る必要はない気がする。(特に主人公のマヒトがトーストを食べるシーンは最高で、見た目にも音にも食欲をそそられた。)

時代設定は昭和前期で、『風立ちぬ』に近い雰囲気を感じた。

話自体、やはり俺には正直難しかったが、感想は他にもある。

まず塔について。

塔は御一新の前、突然現れたという。
天才の作る作品は、あたかも異世界からの漂流物の様に、地上の文脈を超越したところにいきなりやってくる。

塔の中は宮崎駿ワールドそのものではないだろうか。

石で作られる世界は緻密に設計された宮崎駿ワールドのこと。木は生きているから、やはりこのような世界を木で作ることはできない。世界観を完璧に作り込むほど、作品世界は生の不安定さ、曖昧さがなくなり、死のイメージに近づくのだ。(実際、死者の門も石造だった。)

大叔父さんは宮崎駿のことで、自ら創り上げてきた塔の中の世界と運命を共にした。
結局後継者は現れなかったが、大叔父さんはそのことに納得していたように思う。

俺達観客はマヒト達と共に時間を自由に行き来できる回廊に招かれる。

ここでは時間という判断形式をしばし取り去られて、普段異なる時代に分裂して認識できない縁に触れることができる。ある時点で生死を分つことになった者同士でも、ここでなら会える。

しかし結局、塔も回廊も無くなってしまった。
俺達観客は束の間塔の中を覗かせてもらったが、最後は現実世界に引き戻され、また劇場を離れれば個々の世界を生きて行く。

アオサギの言った通り、マヒトは塔の中の出来事を、次第に忘れて行くのかもしれない。
しかし、俺達が宮崎駿ワールドを忘れることはこれからもないだろう。

次にマヒトについて。

マヒトはこの塔の中の経験を通して、これからはあの死を乗り越えて力強く生きて行くのだろうと信じる。

しかし最後に思い出すのは、

ワラワラは白くて小さくて丸っこくて、可愛かった

ということ。

俺も彼女も、ワラワラがとても好きだ。

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