見出し画像

92歳 三石巌のどうぞお先に 28

三石巌が1994年から産経新聞に掲載していた「92歳 三石巌のどうぞお先に」の記事を掲載させたいただきます。(全49回)


がん予防隊

若いうちは自前で間に合うが

 がんといえば、逸見(政孝)さんの名前がでてくる。かれは教訓を二つ残してくれた。
 ひとつは、がんのおそるべき手ごわさだ。もうひとつは、医者先生がなかまの事件をすっぱぬいてくれたことだ。
 近藤誠氏というレッキとしたがん専門医の本によると、がんか、がんでないかの見わけがいいかげんだから、がんでないものを切っちゃうことがめずらしくない。日本ほど手術の好きな国はない。がんの検診にはほとんど意味がない。ないないづくしってことだな。
 最近、肺がんの検診がはじまったが、これは肺結核専門医の救済策だともある。
 ボクは医者じゃないからがんの治療のことなど考えちゃいない。予防一点張りだ。その立場からすると、がん発見にいたる十九年前に何が起きたかを、とりあげなければならないことになるだろう。
 実は十九年前どころか、毎日毎日、がん細胞は何千個もうまれているって話がある。
 活性酸素がエネルギーづくりでも発生、ストレスでも発生、喜怒哀楽でも発生、農薬や添加物の解毒でも発生、細菌やウィルスの感染でも発生、中性洗剤でも発生、紫外線やX線・放射線でも発生ってことを知っていれば、この話がホラじゃないことがわかるんじゃないかな。
 そのひっきりなしに出てくる活性酸素はいろいろな悪さをする。そしてDNAを痛められる細胞が一日に数千個ということだ。スカベンジャー(活性酸素をしまつしてくれる物質の総称)をあたまにおかずにいたら、こりゃあぶない。
 もともと若いうちは自前のスカベンジャーでだいたいまにあう。四十の坂をすぎたら気をつけなけりゃダメだ。
 血中にはNK細胞という名のものがパトロールしている。これの本名はナチュラルキラー細胞だ。がん細胞やウイルス感染細胞をみつけると、どてっぱらにトンネルをあけて殺してしまうのが役目だ。こいつががん予防隊を結成しているんだ。
 NK細胞についてだいじな情報は二つある。ひとつはインターフェロンやキトサンなどがそれを活性化すること、もうひとつはストレスがあると、これが死んでしまうことだ。
 インターフェロンはビタミンCとタンパク質があれば自前でできる。キトサンはカニの甲羅やキノコやカビにあるんだな。

三石理論研究所


三石巌
1901年 東京都出身
東京大学理学部物理学科、同工学部大学院卒。
日大、慶大、武蔵大、津田塾大、清泉女子大の教授を歴任。
理科全般にわたる教科書や子供の科学読み物から専門書にいたる著作は300冊余。
1982年 81歳の時、自身の栄養学を実践するために起業を決意し、株式会社メグビーを設立。
1997年 95歳で亡くなるまで講演・執筆活動による啓発につとめ、
生涯現役を全うした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?