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92歳 三石巌のどうぞお先に 35

三石巌が1994年から産経新聞に掲載していた「92歳 三石巌のどうぞお先に」の記事を掲載させたいただきます。(全49回)


NK細胞とストレス

40代になったら活性酸素対策を

 前にも書いたが、逸見政孝さんは身をもって、がんの悪役ぶりをわれわれの心にたたきこんでくれた。専門医の近藤誠先生は本をかいて、がんの前での医者先生の力ぶそくをあばいてくれた。
 がんは現代の悪魔である。いったんこいつにつかまったら、まず半分はだめだ。あわてて病院にかけこんだところで、助けてもらえる確率は二分の一ぐらいのものだろう。
 じゃあ、キミはどうするか。がん患者ないとしてだよ。いっておくが、キミが、がん候補者だってことはまちがいないんだよ。
 なによりもまず、キミはストレスをさけなければならん。過労はダメだ。
 しまつのわるいのは精神的なやつだ。脳みはさらりとすごすんだな。のんきにやるのが一番だよ。ストレスにつよい人間っていうのがいる。キミにもそう願いたいもんだ。そうでないと活性酸素はやたらにでるし、NK(ナチュラルキラー)細胞はへる。ダブルパンチなんだな。たまったもんじゃないだろう。
 ストレスというやつは予告なしにやってくるのがふつうだ。そのとき、さっと対策をたてる人間もいる。へたばってなにも手をうたない人間もいる。ここで手をうつとは、活性酸素対策をたてることだ。つまり、スカベンジャー(老化などの元凶とされる活性酸素をしまつする物質の総称)に手をだすことだ。
 三十代ならストレスがすごくないかぎり、まず大丈夫だ。体育のクラブでシゴキをうけても、学生ならまず大丈夫だ。うけあえ、といわれたらことわるがね。
 四十代のオヤジともなれば、ストレスにはよわくなる。十九年か二十年がたったあと「があん」とくる確率は小さくないだろう。救いの手はスカベンジャーだ。いまさら何をとったらいいかなんてきくなよ。さんざん書いてきたんだから。
 活性酸素がでてきたとき、どこの細胞のDNAがやられるのかは、やぶのなかだろう。がん細胞がよっぽどつごうのいいところにできなけりゃ、NK細胞の出番はないはずだ。だから、活性酸素のことをあたまにおくだけでたくさんなんだ。
 ことわっておくが、がん細胞の卵が一人前になるまでにかかる時間は平均十九年だってことになっているが、ヒロシマのばあい、二十年以上もあとに白血病になった人がいるようなわけで、この数字はあまりあてにならない。
一方、NK細胞のほうはがん細胞がうまれてからの話で、がんの発生をふせぐなんてしごとに片棒をかつげるものじゃない。

三石理論研究所


三石巌
1901年 東京都出身
東京大学理学部物理学科、同工学部大学院卒。
日大、慶大、武蔵大、津田塾大、清泉女子大の教授を歴任。
理科全般にわたる教科書や子供の科学読み物から専門書にいたる著作は300冊余。
1982年 81歳の時、自身の栄養学を実践するために起業を決意し、株式会社メグビーを設立。
1997年 95歳で亡くなるまで講演・執筆活動による啓発につとめ、
生涯現役を全うした。


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